「コリックー!どこだー!?」
ここに辿り着くのにかなり時間を費やしてしまった。あの時、コリックが連れ去られた後、俺とシャローナは一旦船に戻り、仲間たちにコリックの探索を頼み、再びコリックを探しに行った。
墓場のゾンビたちに尋ねたところ、この館に向かって飛んで行ったらしい。まさか、森の中にこんな大きい館があるなんて思ってもいなかった。
だが、問題はこれからだ。この館には1年前からヴァンパイアが住み着いていると聞いた。ヴァンパイアと言えば、高い魔力と驚異的な力を持つ実力のある魔物だ。どんな目的でコリックを連れ去ったかは知らないが、敵となると苦戦を強いられる事は必然となる。
それなのに、こんなに広いエントランスホールの中心で大声を出すなんて強敵を自ら誘う様なものだ。それも、俺一人で。
だが、俺だって考えも無しにこんな事をしている訳じゃない。一緒に来た楓とシャローナが、裏から侵入してコリックを助ける為には、俺がここで囮にならなければならない。
頼んだぞ、楓、シャローナ……俺が囮になっている間に、コリックを助け出してくれよ……!
「……!」
突然、殺気が向けられているのを感じた。俺は辺りを見回すが誰もいない。
いや、確かにいる……そいつは…………上!?
「死ねぇ!」
細身の剣が頭上から突き刺さる直前に、俺は後方に飛んで致命傷を避けた。
「……今のを避けるか……それなりにできるようだな……」
頭上から襲ってきた張本人は華麗に着地すると、鋭い目で俺を睨んできた。そいつは高貴な服装で、黒いマントを羽織り、エルフの様な長い耳を持っていた。
……そうか……こいつが館のヴァンパイアか!
「……お前が、この館に住んでるヴァンパイアか?」
「……そうだと言ったら?」
俺の質問に対し、ヴァンパイアは素っ気無く答えた。
完全に敵対してるな……迂闊に怒らせない方がいいな。
「ここに、コリックって言う俺の仲間がいるって聞いたんだ。急に邪魔して悪いが、そいつを引き取りに来たんで、会わせ……」
「邪魔だと自覚しているなら帰れ!」
俺が言い終える前に、ヴァンパイアは剣の切っ先を俺に向けて怒鳴り散らした。
……聞く耳持たないって事か……面倒だな……。
「悪いが、このまま帰る訳にはいかない。コリックは俺の大事な仲間なんでね、ここで置き去りにする様な真似だけはできない」
「仲間だと?……奇麗事を抜かすな!コリックの事など、ただの捨て駒としか思っていないだろう!?貴様に連れて行かれるくらいなら、私と共に生きた方がよっぽど良い!」
捨て駒だと?言ってくれるじゃねぇか!捻くれてるとは思ってたが、まさかここまでとはな!
カッとなった俺は、声を荒げて反論した。
「あいつは捨て駒なんかじゃない!俺の大事な仲間だ!お前が何故コリックを攫ったかなんて知らないが、コリックは返してもらうぞ!」
「……ならば……貴様には死んでもらう!」
ヴァンパイアは剣を構えて戦闘態勢に入った。
よく見ると、あの剣はレイピアか……と言う事は、牽制技が得意の様だな。素早く突き刺されない様、十分に注意しないと……!
俺は徐に長剣とショットガンを抜き取り、首に掛けているペンダントに念を送った。
サフィア……俺に力を貸してくれ!
アレスの力が込められたペンダントは光り輝き、俺に力を与えてくれた。
初っ端からペンダントの力を借りるなんて我ながらどうかしてる。だが、今回ばかりは最初から本気を出さないと勝てない。相手がヴァンパイアと言う強敵なら尚更だ。
「殺すつもりはないが……本気で行くぞ!」
「下等生物が……図に乗るでない!消え失せろ!」
ヴァンパイアの努号を合図に、俺たちは互いに駆け寄り、武器をぶつけ合って鍔迫り合いの状態に入った。
「お前から望んだ決闘だ!怪我しても知らないからな!」
「黙れ、海賊風情が!その心臓に風穴を開けてやる!」
ヴァンパイアは一歩後方に下がり、目にも留まらぬ速さで突きの連撃を繰り出してきた。普通では一つ一つの突きを見切るなんて真似はできない。だが、サフィアがくれたペンダントの力のお蔭で、俺は素早い突き攻撃を見切る事ができた。
「ふっ!はっ!あらよっとぉ!」
俺は身体を捻らせ、時には長剣で受け流す事により一つ一つの突きを避けた。
「馬鹿な!全て防いでる!?」
突きの連撃の手を休めずに、ヴァンパイアは酷く驚愕した。俺は、その戸惑いによって生じた隙を見逃さなかった。
「おんらぁ!」
俺は長剣を力いっぱい振り上げ、ヴァンパイアのレイピアを高く弾き飛ばした。レイピアが宙で回っている隙に、俺はヴァンパイアの足を狙い撃った。
「甘い!」
「なっ!」
突然の出来事に、俺は驚いてしまった。ヴァンパイアの背中に巨大な翼が生え、その場で高く飛び上がり、ショ
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