謁見の間かと思ってしまう程の広さを持った来賓質に着いてからの数時間、正に悪夢だった……。
ルーンさんとクスィーさんの2人は僕との決着が着かなかった事が余程悔しかったのか、先程迄の威厳はドコへやらと思える程消沈してしまい、ルーンさんに至っては齢を重ねた独特の喋り方が無くなり、、見た目通りの童女としか思えぬ位に幼児退行してしまい、駄々を捏ね出したので、同僚のクスィーさんに宥められてしまっていた程だ。
僕は僕で、あの【ヴァンパイア】――便宜上【ローズ】っと名乗っていたっけ――によって霧散させられた氣が余りにも多過ぎたせいで、指先を動かす事すら出来ず、暫くの間【ヴァンパイア】に食べさせられたりして、本当に恥ずかしい思いをした……。
しかも、肝心のあの2人の主であり、【ブリュンヒルデ】国の女王でもあるマリエルさんは優雅にお茶を飲んでいるまま我関せずを貫き通すしで、思い出すと頭が痛くなる。
もう後先考えず、無理矢理抜け出して自分に宛がわれているが、未だに一度も使用していない、城の敷地内に存在する選手専用の宿泊施設に向かった。
タダ、1つだけ良い点があるとすれば、空間転移で【コロッセオ】から連れて来られた先が結界空間内で、それの強制顕現先が城内であったため、ここ数日の寝ずの連戦と能力の複合開放でズタズタな身体をそれ程動かさなくても寝床に移動出来るのは助かった。
日が傾き、茜色に染まる庭園を、通り過ぎる城内の使用人に挨拶しながら施設に向かって歩いていたが、後十数メートルで外壁同様石造りの選手専用の宿泊施設に着くという所で、僕は足を止めた。
「――漸く姿を現す気になりましたか……」
数メートル離れた背後に何かが現れる気配を感じたが、振り向かずに声だけを掛ける。
「当初こそ、【危険な存在】として排除すべきと考えていたが、ここ数日のキミの行動を監視していて、少々思う所ができたからな」
想像していた通り、自らの発する言葉全てに責任を持ち、重く識者独特の中庸であるが、決してブレる事のない一本の意思が通っている響きが返って来た。
ゆっくり振り返ると、僕の制空権外ギリギリの所に、長身のその身に黒を纏い、シルクハットが良く似合う単眼鏡の髭を蓄えた壮年の男性が悠然と立っていた。
杖を突いてはいるが、立ち姿勢からして、あれは足が悪いからではないだろう。
大陸の上流貴族紳士というのを書物で見た事があるが、それはこの目の前の男の様な存在を云うのだろうな。
全てが嫌味なく纏まっており、男の僕からしても格好良いと感じる程だが、だからこそ、より一層の警戒が必要となる。
何せ目の前のこの男は、この国に於いて純粋な武力なら2番手であるオルクさんですら、手も足も出せずに負けてしまった程の実力者なのだから、いつどんな攻撃をしてこようが対応できるようにしなければならない。
「……待ちたまえ。私はキミとここで刃を交えるために現れた訳ではない」
足を肩幅に開きつつ右から回り込む様に振り返り、右半身の形で留まっていたので、例え武術の心得があろうが解らぬ位静かに上半身を動かさずに重心を落としたが、一瞬で見抜かれてしまった。
「……剣の心得があるのですね?」
「嗜む程度だがね」
「ご冗談を」
お互いに軽く笑い合う。
――鞘走り。
ぶつかり合う刀と剣。
刃鳴散らし、夜の帳を照らす。
一つ合うごとに斬鉄するが、男が腕を振るうと、その袖から剣が現れ、次から次へと新たな獲物を手にし、一向に戦力を削ぐ事が出来ない。
もう何本目か解らないが、斬鉄した所で、男が後ろに飛び退き、一旦距離を取って黒外套を翻すと、肉厚で幅広な両手剣がその手に握られており、回転した勢いそのまま開いた分の距離を詰めて来たが、先程迄と変わらず、真正面から両手剣へ刃を走らせる。
けれども、幅広であったため、氣は合ったが、中程まで刃が進んだ所で止まり、それに合わせて僕の動きも一瞬だけ止まってしまうと、それを機とみたか、前に出ている僕の右足に合わせる形で男も右足を前に出し、その足を中心に身体ごと内側に回す形で鍔迫り合いへと持ち込まれた。
「決して安い物ではないのだから、こうも斬鉄されては困ってしまうよ」
「隠器術ですから、問題ないですよ」
「私のは違う」
「………………っ?! 【空間転送】?!」
僕は鍔迫り合いの状態であったが、体軸をそのままに身体を左右に回転させる要領で刀を無理矢理引き、大剣を中程から一気に切り裂くと同時に後ろに飛び退いて、相手と距離を取る。
「【魔法使い】!!」
今の状態では一瞬にして勝敗が期してしまうと判断した僕が眼帯を取ると、相手も新たに手にした剣を交差させて地面へと突き刺し、何かの呪文を詠唱し出した。
僕を中心に荒れ狂う突風が発生して全身を包み込み、人
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