我が母国――【ジパング】を出発し、船に揺られること数日。
文献では何度か見たことがあるが、実際に訪れることは初めての【大陸】に、僕の鼓動は自然と早くなり、船が港に着くとほぼ同時に、船内を駆け抜け、船員が注意する声を無視し、甲板から一気に地面へと飛び降りた。
後ろから悲鳴みたいな声も聞こえたが、僕は軽く笑みを浮かべてそれに応え、地面に着くまでの間だ、細く息を吐き続け、足が地へと触れると同時に残りを一気に吐き出し、一瞬にして硬化した筋と唯一動く関節をゆっくりと曲げ、着地の衝撃の全てを身体から素通りさせた。
一瞬、辺りの喧噪が無くなったが、無事であることを告げるため、ゆっくりと立ち上がり、悲鳴を上げたであろう、甲板から身を乗り出して僕を見ている女性に笑顔で手を振ると、突如空気を地面を揺らす程の声が上がった。
始め、何で周りの人達が叫んでいるのか解らず、不覚にも臨戦態勢に入りかけた僕であったが、それが歓声であったことが解った途端、己の軽率な行いと状況判断の未熟さに恥ずかしくなり、壊れたブリキ人形の様に周りに頭を下げつつ、バレない程度に後ずさり、人々の歓声の輪から逃げようとした所――
「待て! そこの人間!!」
――っと、人々の歓声を切り裂くような鋭い声が僕の鼓膜を揺すり、足を止めさせた。
僕の事を【東洋人】とも【異国の者】とも呼ばず、【人間】っと呼び止めた所と、声質から女性であると判断した僕は、相手がどのような者であるか大方の予想を付けて、声の発信源へと振り向いた。
僕を取り囲むように輪になっていた人々が左右に分かれ、そこに現れたのは、案の定、僕等【人間】の女性とほぼ同じ容姿をしている【魔物】と呼ばれる存在であった。
全身を緑を基調とした滑らかな素材の生地で包み、一部に鱗鎧を身に付けた、一見して、気が強いと解る端整な顔付きの【魔物】がいた。
は虫類を思わせる鱗鎧と手足に耳、尻尾、そして、背中に担いだ叩き斬る事に特化した
肉厚な大剣――多分、彼女は【リザードマン】と呼ばれる【魔物】だろう。
厄介な【魔物】に見付かってしまったな、っと思いつつも、逃げる事は不可能だろうと悟った僕は、彼女を正面へと捉えた。
僕に逃げる意志が無い事を理解した彼女は、戦闘にそれなりに慣れた大男でも扱うのが困難であろう大剣を片手で扱い、その剣先を向けてきた。
「その身のこなしと腰に差した変わった剣――貴様、戦士だな?」
否定するのは簡単だが、後々面倒である事と、何よりも僕の矜持がそれを許さなかった。
「如何にも、僕は侍と呼ばれるジパング地方の戦士だ」
侍――聞き慣れない言葉に、周りの人々は疑問符を頭に浮かべていたが、どうやら、この【リザードマン】は違ったらしい。
「ほぉ、サムライとは、わたしは運が良い!」
リザードマンは向けていた剣先を下へ向け、地面へと刺した。
いきなり襲い掛かってくる危険性は回避されたが、いつでも動ける様、両足を肩幅に開き、丹田へと力を込める。
「侍を知っているなんて、珍しいね」
「いや、わたしが知っているのは戦士としての名前と、我等以上にプライドに生き、敵に負けた場合は、例え命が助かろうが、自ら腹を切って自害する事だけだ」
あ〜、うん、まぁ〜……間違ってはいないが、随分と昔の侍が出てきたものだ……。
ここで彼女の偏見を修正してあげることもできるが、時間が惜しい僕は、会話を先へと進めた。
「確かに僕達侍は生き恥を晒す事を良しとはしないが――これ以上言葉を交わした所で、君の目的が達成される事はないのだろう?」
僕は片目を瞑り、顎に手を当て、挑発するように言葉を掛けた。
「ふっ……物分かりが良くて助かる――わたしの名前はリーザ、リーザ・ロッケンマイヤー」
リーザと名乗ったリザードマンは、地面に刺していた大剣を引き抜き、肩へ担いだ。
「新城家が嫡男――新城 兵頭 一磨(シンジョウ ヒョウドウ カズマ)」
彼女が臨戦態勢に入ったため、僕も名乗り上げ、左手を鞘へ移動し、軽く鍔を押し上げた。
僕等2人から流れる空気が変わった事を本能的に感じた人々は、輪を広げ、僕等から離れた。
一般の人が被害に遭わない所まで離れた事を確認した僕は、顎に当てていた右手を柄に乗せ、右足を前に若干進め、右半身の構えを取った。
僕が構えたのを見たリーザは、左手にコインを持ち、それを空高く弾いた。
僕も彼女もコインの行方を確認せず、ただ、お互いの姿だけをその目に映した。
リーザは肩に担いだ大剣をそのままに左半身の自然体。
多分、飛び掛かってきた勢いそのままに切り落としを仕掛けてくるだろう。
戦法も何もあったものじゃない、後先を考えない力任せの一撃――故に必殺の威力を持ち、相手を完膚無きまでに叩き伏せれる。
だとしたら、僕の
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