二話目

むにゅ
#9829;

 妙な感触がする。
 エドは、なにか暖かくて柔らかいものが腕に当たる感触がして目が覚めた。

「んっ…なんだ…って、うおっ!?」

 まだ赤い色の朝日がカーテンの隙間から部屋を薄明かりに染めている。ぼやっと明るい部屋の中、エルザがいつの間にかエドのベッドに潜り込んでいた。
 服装は昨日の晩見たピッチリとしたレオタードのようなものではなく、どこから持ってきたのかパジャマ代わりに大きめのワイシャツを着ているのが、毛布の隙間からちらりと見えた。そんな状態で、エルザはエドの腕を抱きしめるようにしてすぅすぅと寝息を立てている。
 あまりにも安らかに眠っているから、エドは混乱するよりも先にエルザを起こさないことを優先した。


「えへー…お兄ちゃん…」

 だが、エドがどうしたものか考えていると、エルザが幸せそうに緩んだ口から可愛らしく寝言を漏らした。と、同時に、抱きしめる力が強くなったかと思うと、腕がぐいとエルザに引っ張られた。
 
 むぎゅっ
#9829;

「!?」

 エドの手が、なにか柔らかい部分に触れた。毛布に隠れてどうなっているかは見えなかったが、その感触でおおよその見当はついた。
 しなやかな筋肉の上に柔らかさを持った物体が、エドの右手を圧迫している。エルザは丁度抱きまくらにしがみつくように、エドの右手を太ももで挟み込んでいるに違いなかった。だが、問題はそれ以上だった。

──まさかエルザ、下に何も着てない!?──
 
 子供特有の高めの体温に、すべすべしたハリのある肌。それが眠っていたからだろうか、わずかに汗でしっとりと湿っている。その感触が、何の障害もなくストレートにエドの右手に伝わった。
 エドは、流石にマズいと思ったからエルザから無理やりにでも離れようとして身をよじった。だが、その次の瞬間だった。

「あ…んぅ…ダメ…」

 眠っているはずのエルザが、更に力を強めた。ぎゅっ、と、エドの右手をより深く抱き込むようにだ。

 ふにっ
#9829;

「!!!????!」

 エドの指先が、今までと違う感触に触れた。そこは今まで以上に熱く、しかも肌とは異なる触り心地だった。おそらくズボンを穿いていないだろうエルザが、下半身に何かを着けているとしたなら、それは一つしか無かった。
 
「ちょっ、これエルザ、ぱ、ぱん──」
「んぅ…なあに?お兄ちゃん」

 エドは思い出したように左手でエルザの肩を掴んで揺すり起こした。しばらくもぞもぞと身体を捩った後で、ツインテールを解いたからところどころぼさっと寝癖のついた長い髪をストレートにした少女が、眠たそうに目を擦った。

「何って…それは…」
「?…変なお兄ちゃん」

 まさか、エルザのパンツに触ってしまった、なんてことを本人に向かって言えるはずも無かったから、エドは説明しようとして口ごもる。それを見て、エルザは不思議そうに首を傾げた。
 ばつが悪くて、エドはなんとか言葉を絞り出した。

「そ、そうだ。なんでエルザが僕のベッドに?」

「なんで、って…昨日、説明したじゃない。あたしがお兄ちゃんを鍛えるには、できるだけ近くで、長い間一緒にいる事が必要だって。だから、こうしてお兄ちゃんが寝てる時にあたしも一緒に寝れば、寝てる間にもお兄ちゃんを強くしてあげられるの」

「説明…したっけ…?」

 エドは、どうも昨日の夜の記憶が曖昧だった。エルザに会ったことと、人助けがどうこう言っていた事は思い出せるのだが、その後が記憶にモヤがかかったようで判然としなかった。

「したよー。しっかりしてよね、お兄ちゃん」
「ああ、ごめんごめん」

 だが、エルザはしたと言っている。ならば説明したんだろう。エドはそう納得した。

「それよりも、おはよ、お兄ちゃん♪」
「ああ、おはよう、エルザ」

 少し遅れた朝の挨拶は、二人とも笑顔だった。赤かった朝日が少しだけ黄色くなっていた。



「今日の訓練は中止だ!中止!」

 今日は号令が掛かる前にと部屋から出てきていたエドは、あり得ない事を聞いた。
 いつもならば、例え嵐が来ようが地震が起きようが、それどころか校舎で火事が起きた時でさえ訓練はあったのに。

「どういうことですか教官!」
「やかましい!中止と言ったら中止だ!各自、適当に自主練でもしていろ!」

 問い詰めるエドに、教官は構わず自主練だと言い残して早足で去ってしまった。周りを見れば、何人か出て来ていた生徒も戸惑っている。

「なんなんだよ…」

 どうしようも無かったから、エドは取り敢えず食堂に向かった。

 食堂にも人は殆ど居なかったが、食事は用意されていた。久しぶりにゆっくり食事ができると思ったが、部屋にエルザが居ることを思い出して、エドは持ち帰れそうな食べ物を見繕って部
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