「お願いです!僕を鍛えてください!」
「…えーっと…」
急にそう言われても。
ここは人里から少しだけ離れた山の中。人虎のシャトヤが住む、鄙びた庵だ。シャトヤは発情期以外はこの庵で暮らして時々林業を手伝い、発情期だけはもっと山の奥まで入って人間を襲わないようにして暮らしていた。
滅多に人が訪れること無い庵には、しかし今一人の少年がやって来ていた。年の頃は12,3歳といったところだろうか。まだ碌に筋肉のついていない、見ようによっては少女にもみえる中性的な顔立ちだ。
「鍛えてって言われても…まず、キミは誰だ?もしも迷子か何かなら、村まで送ってやってもいいが」
「迷子じゃありません!僕は村の大工の息子のサンといいます。シャトヤさんに弟子入りしに来たんです!」
大工の息子…言われてみると、木材を届けるときに何度か顔を見たような気がする。
「弟子入り?悪いが私は弟子は取らない主義なんだ。暗くならない内に帰りなさい」
「イヤです!僕はどうしても強くならなくちゃいけないんです!」
「…理由を聞こうか」
「僕…村のいじめっ子にいじめられてて…だから、シャトヤさんに鍛えてもらって、あいつらを見返してやりたいんです!」
シャトヤはサンを静かに見つめた。確かにどう見ても強そうな見た目ではない。いじめっ子にいじめられるというのは、如何にもありそうな話だった。
「はぁ…分かった。それじゃあ、簡単な型を一つ教えてやるから。そしたら大人しく帰るんだぞ」
「あ…ありがとうございます!」
シャトヤはとうとう根負けし、サンに型の一つ位は教えてやることにした。防御重視でカウンターを狙っていく動きの型だから、ちゃんと覚えれば村のいじめっ子位ならどうとでもなるだろう。
──たまには、こういうのもいいかもな──
そう思いながら、シャトヤは演舞を始めた。
「どうだ?今ので分かったか?」
「すみません、もう一度…」
「っはぁ…はぁ…さすがに、今度こそ分かったよな…?」
「ごめんなさい、途中までは分かったんですけど、全体の流れが…もう一度いいですか?」
如何に基礎的な型とはいえ、繰り返すこと既に20数回。時間に直せば、通しでもう2時間以上はぶっ続けで同じ型を披露している。無論、魔物娘の体力を持つシャトヤにとってこの程度は何のこともないが、こうも同じことを繰り返せばむしろ精神的にくるものがある。
というか、おかしい。いくらなんでも、ここまで繰り返す必要があるほど難解な型ではないはずである。
「…よし、分かった。もう一回やってやる。いいな、今度こそ、ちゃんと見ておけよ」
「はい!」
返事はいいのだ。こいつは。
「ふっ!はぁっ!」
型を繰り出しながら、シャトヤはこっそりとサンの視線を伺ってみた。まさかとは思うが、眠っていたりはするまいなと思ったからだ。
そして、シャトヤは原因を理解した。
「はっ!」
シャトヤが大きく腕を振り上げる。サンの視線が僅かに上を向く。
「たあっ!」
シャトヤが体をひねる動作をする。動きを追うようにサンの視線が続く。
「ふっ!」
シャトヤがかがむ。すると、サンの視線は覗きこむようなものになる。
──この、エロガキ──
サンが見ていたのは型の動きなどではない。サンは、演舞によって揺れる、シャトヤの豊満な乳房の動きのみを目で追っていたのである。
──ふ、ふふ。私も魔物やって長いが、こうも馬鹿にされたのは初めてだ──
演舞を続けながら、シャトヤは心のなかでほくそ笑む。
──いいだろう。そっちがその気なら、こっちも遠慮はしない。私を馬鹿にした罪、その身体で償ってもらうぞ──
サンは、シャトヤの口の端が獰猛に歪むのに気付かなかった。シャトヤの胸を見ていたから。
「どうだ…?」
「本当にすみません、もう少しで分かりそうなんです。どうか、もう一度だけ…」
肩で息をしながら尋ねるシャトヤに、少年は申し訳無さそうに縮こまってそう言った。その言葉を聞くと、シャトヤはにっこりと笑って言った。
「そうか、しょうがないな…キミは目で見るよりも、実際に身体で覚えたほうが早いかもな」
言うと同時に、シャトヤは一瞬で少年の背後に回った。そして、サンの腕を掴む。
「ほら…私がこうやって、直接動き方を教えてやる。これなら、大丈夫だろう?」
「あ、は、はい」
ところで、サンの背丈は、長身であるシャトヤよりもだいぶ小さい。具体的には、少年の頭はシャトヤの胸あたりまでしかない。
つまり今、密着して手取り足取りシャトヤに教えられている状態だと、サンの後頭部には常にシャトヤの乳房が触れている状態なのだ。
「ホラ…ここは、こうだ」
「うわっ、ちょっとシャトヤさんっ」
しかし、そんな事はお構い
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