表―2

 あれから5年の歳月が経った。
 わたし――――――――私は16歳になった。
 『あの』バレンタインデーから、5年。
 長いようで、短い。
 短いようで、長い。
 そんな5年だった。
 

 

 5年間。
 1826日。
 43824時間。
 2629440分。
 157766400秒。

 

 秒単位まで表すと本当に長いのか短いのか分からなくなってくる。
 ・・・・・はっきり言って1日単位までにするべきだったかもしれない。
 まぁそれはいい。
 今、こうやって思い出すと
 この5年で
 色々なことがあった。
 様々なことが起こった。
 それらを話したいとも思えるのだけれど。
 やっぱり私は。
 『あの』バレンタインデーの日のことについて話したいと思う。





     ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽





 今でも覚えている。



 登校したときの昂揚感を。
 
 下校したときの絶望感を。






     ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽






 『あの』バレンタインデーの日、私は胸を弾ませながら学校へ行った。
 
 教室の前でわたしは動悸を抑えた。

 スゥ―――――、ハァ―――――。

 深呼吸。
 そして、

 「おはよう!!」

 ドアを開けながら私は挨拶をした。
 いや、もう叫んだ、と言っていいかもしれない。
 それぐらい大きく挨拶をした。
 
 だが―――――あいつはいなかった。
 私は教室内を探す。
 
 いない。
 いつもわたしが教室に入ればいるのに。

 そう不安になりながらも、私は席に着いた。



 ホームルームまであと数分というところになった。
 今来ても遅刻になってしまう。

 「今日はちこくなのかな?」

 首を傾げる。



 ホームルームの時間になった。
 担任の教師が入ってきた。
 言いにくいことをどう言葉にするか迷っている、そんな顔だった。

 その顔を見て直感する。
 今日、あの男が休みなのだ、ということを。
 まぁその直感は当てが外れていたわけなのだが。

 「えぇ―――――っと、今日このクラスの仲間である、四月一日悟朗君が
  転校することになりました。というかもう転校しました。
  なので残念なのですが、お別れ会も開けません。」

 


             え?





 場が騒然とする。
 当たり前だ。
 あまりにも急すぎる。
 
 「五月蠅い五月蠅い。静かにしろ。」

 言葉遣いが崩れた教師が頭を掻きながらぼやく。

 「ったく、こっちだって動揺してんだよ。
  今朝早くに警察から電話があってだな・・・・・」

 そこで教師が今自分が何を言っているのか気付いたらしい。

 「あぁ――――――っとだな、つまり何が言いたいかというと
  今日から四月一日には会えなくなった。」






        え?え?え?





     ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽






 なるほど。
 終わりとは予兆もなしに突然来るものなのだと、初めて知ったのは
 この瞬間だった。






     ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽






 私の朝はけたたましい目覚まし時計の音により始まる。
 もそもそと動きだし、動いている内にベットから落ちる。
 そのまま横に回転。
 ぐるんぐるんぐるん。
 そうするとドアの前に置いてある目覚まし時計に辿り着く。
 目覚まし時計に手刀をおろす。
 音が止まる。

 この一連の動作は、私の脳を覚醒させるために必要不可欠だった。
 
 その後、もろもろを済ませて登校する。
 家を出る。
 隣りの家を見る。
 そこには昔、愛が深すぎて愛する未来の伴侶を殺してしまった
 とあるリザードマンが住んでいた。
 男女の仲はとても良かったので、
 その事件を知ったときはとても驚いた記憶がある。
 そんなことを回想しているうちに学校につく。
 
 「おはよう。」

 教室に入り自分の席の後ろのエンジェルに挨拶する。

 「あ、おはようございます。」

 今日も彼女の右目はオッドアイ。
 彼女いわく、かっこいいからコンタクトレンズをつけているらしい。
 謎だ。
 まぁ、彼女自体が謎な存在なのであまり気にならないが。
 
 「やぁやぁ、おはようさん」

 隣りの男から声を掛けられる。

 「おはよう、変態。」
 「…………いつも言っているように俺にはちゃんと親がつけてくれた名前が
  あるんだけど?」
 「お前の名前なんて『変態』で十分だ。」

 そう、この男の名前なんて『変態』で十分なのだ。

 「別にいいじゃねえかよ。
  小学生以下の歳の子を異常に愛していたって………。
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33