その時、馬の駆ける音と共に突然一人の騎士がロングソードを片手に現れた。その騎士は馬に乗ったまま風のような速さでオーウェンの近くにいた手下を蹴飛ばすと、ヒラリと降りて賊たちとの間に仁王立ちした。
「なんだてめぇ!」
「私は教団の聖騎士団の一人、ジェイナスだ!賊ども、覚悟するがよい!」
目の前に突然現れた男は言うが早いか背に背負っていた剣を構えると、目の前に居た賊たちへ瞬時に走り寄り一人ひとりをものの見事に蹴散らし始めた。剣の使い方からしてその男が剣の熟練者であることは誰が見てもわかった。
「ま、まずい、教団に刃向かったとあっちゃ命が幾つあっても足りん。ここは逃げるぞ!お、覚えとけよ!」
賊たちは男が到底自分たちでは敵わない事を悟り、さらに教団という言葉にかなりビビったのか捨て台詞を吐くと一目散に逃げ出していった。
「誰だか知らないけど助かったよ。ありがt」
「あれ?さっきまでいた女の子達は?」
賊が逃げていく様を悠々と見やった後、唐突にジェイナスはお礼を述べたオーウェンを無視してキョロキョロと恐らく先ほど逃げるよう促した二人の行くえを探し始めた。
「おーい、あの…」
「おかしいなぁ…さっき遠くから見たときは女の子が二人ほど居た気がしたんだが…。」
そう言って彼はまた無視をし、独り言を呟く。
「おい、そこの好色。」
「なんだ?貴様、先ほどからごちゃごちゃと。それよりもここにいた女の子達を知らないか?」
ジェイナスは先ほどから自己主張をしていたオーウェンの方へやっと向き直ると今度は一方的に質問をぶつけた。
「えぇ〜い、さっきから自分勝手に話やがって!二人ならついさっき逃げるよう促したからまだ遠くには行ってないよ。これから探しに行くところだ。」
オーウェンは彼の自分勝手な質問に腹を立てながらも答える。
「そうなのか、実に残念だ…。もしここに居てくれたら私の雄姿をお見せできたものをっ…。」
はいはいそうですかと内心呟きつつ、あまり関わり合いにならない方が良いと考えたオーウェンはダガーを懐にしまい二人を探しに行くことにした。
すると、丁度馬車の向こうにある丘の横の林の中からひょっこりとミラが顔を出した。あまり遠くまでは行っていなかったらしい。遠くまで探しに行く手間が省けた。
「お嬢さん、盗賊はこのジェイナスが全て追っ払いましたよ。」
向こうから心配そうにこっちに駆けて来るミラに気付いたのか、ジェイナスは即座に近寄り話しかけた。もうこいつのあだ名は色騎士で決定だ。
「あ、あぁ、そうなのか。それは助かったな、ありが、とう。」
ミラもこの突然現れたよくわからない優男風の騎士に話しかけられ、焦っているようだ。
「いえいえ、あなたのような美しい人を助けられた事、このジェイナス誠に光栄にございます。」
良くもこんな歯の根が浮くような言葉が次々と出るもんだ。彼はミラが相槌を取ってくれることを良いことに息つく暇もなく話し続けている。見ていてつくづく腹が立つ。
「おい、あんた、ミラも困ってるだろ?話はその辺にしてくれ。助けてもらったのには礼を言うけど俺らは馬車で先を急いでるんだ。悪いけどこの子は俺のツレなんでね、連れてくよ。」
そう言ってオーウェンはミラの手をほんのちょっとだけ強引に取り、馬車へ向かおうとした。
「む、誰かと思えば先ほど盗賊に命乞いをしていた男じゃないか。」
せっかく話していたところを邪魔されたのが癇に障ったのかジェイナスはギロッとこっちを睨む。
「何嘘言ってやがる!脈絡なく登場してきたくせに偉そうなこと言いやがって!」
「しかし出てこなかったら今頃どうなっていたと?」
「うっ……。」
痛いところを突かれオーウェンは閉口する。
「オーウェン!!大丈夫だった!?怪我して無い?」
するといつの間に戻ってきたのか、ベスも姿を現しオーウェンの胸に飛び込んできた。
「あ、あぁ、何とかね。とりあえず次からはもう少しソフトに現れてくれ…体が痛い…。」
「ん?なんだその者は!魔物ではないか!えぇぃ私が成敗してくれる!」
ジェイナスが突然現れたベスに気づき、さっきのロングソードを構えなおす。そこで彼が先ほど教団の騎士と名乗っていたことを思い出す。これはひょっとしたらかなりまずい状況なのではないだろうか。
当然ベスの方も敵意むき出しなジェイナスに向かってなんだこの野郎と戦闘態勢を取り始める。一触即発の事態に周りの空気が一瞬で凍った。その時、
「待つのだ、二人とも!」
その場の緊張感を吹き飛ばすかのようにミラが大声で叫んだ。突然の事に二人ともそのままの格好で固まる。
「ジェイナスと言ったか?貴様は教団の騎士らしいから誤解のないように先に言っておくがベスは吾
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