第三便 無邪気な吸血鬼(3)

「―――しっかしこんなに広い町の一体どこから手をつければ…」

 すっかり辺りが暗くなった町に戻ってきたオーウェンは、引き受けたはもののまるで見当がつかず行き詰まっていた。

「とりあえず出会った店の付近で聞き込み調査からするか。」

 昼間に行ったレストランのところまで行き聞き込みを開始すると、やはり黒のローブをすっぽり来て動き回っている人物はそうそういないのか意外にも目撃者は多かった。
 その目撃情報を頼りに、服屋、小物屋、宝石屋から道具屋まで様々な店を縦横無尽に精一杯駆け巡ってみる。しかし進めども進めども店を出てまたどこかに行ったと言われ、留まる気配がない。
 オーウェンはその度に期待と失望を繰り返していた。結局進展していくのは時間だけで一向に彼女が見つかる気配はなく、それどころか最終的に元の位置に戻ってきてしまった。

「ハァ、ハァ…くそぅ…あのお嬢様は…一体…どこ行ったんだ?」

 あまりにも走り回ったので、毎日荷物を届けてまわって足が鍛えられている彼でもさすがに座り込んでしまう。

「まさかヘンなヤツらに捕まっていたりしないよな…。」

 オーウェンの頭の中に捕まった彼女がアヤしい奴らにイケナイことをされている光景がおもむろに浮かぶ。彼の心の焦りが激しくなっていく。
 冷静に考えれば、夜になった時点で彼女の力は元に戻っているのでそんな奴らを返り討ちにするくらいワケない事は考えつくはずなのだが現在の彼ではまぁ無理だろう。

「こんなことならちゃんと町案内役素直に引き受けときゃよかったぁ〜」思わず涙が出てきた。すると、
「――先ほどの人間か、どうしたのだ?えらい騒いで。」
「ぁ〜……?」

 そこにはあれだけ探していたはずのミラの姿があった。






「―――やっと見つけた…。おいあんた、なんでここに居るんだよ。振り出しに居るとか卑怯じゃねーか!心配させやがって!!」

 彼は先ほどのやり場の無い感情をぶつけるように思わず乱暴に喋った。

「な、なんだと!吾がここに居て何が悪い!貴様に心配される筋合いなどないわ!」

 出会った途端に突然大声で怒鳴られたんだから彼女がこう言うのも無理はない。二人はしばらくまったく意味のないまるで子供の喧嘩ような言い合いをした後、両者疲れて、ひとまずは屋敷へ行く途中にあるレーナの宿に行くことで話が落ち着いた。

「――――それで、これからどうする?」

 彼はカウンターに座りながら、コップいっぱいにあった水をごくごくと飲み飲み干してから言った。

 彼女は昼間にオーウェンと別れてから、色々な店を練り歩く中で金を払わないと品物を買えないことにすぐに気付かされたが、小さな紙に名前と金額を書くとお金の代わりになると聞き、バカみたいに服等の装飾品や珍しいものを買い込み、量が多くなって動けなくなったため元のレストランで休んでいたらしい。
 まったく間の抜けた話だ。まぁとにかく無事で本当に何よりだったのだが。彼はせめてもっと早く気付いてくれれば良かったのにと心の中で不平を言った。

「どうするもこうするも、私はもうあの屋敷には戻りたくないのだ。」

ミラは紅茶を片手に持ち、息を吹いて少しずつ冷ましながら言った。

「だってあそこは君の家だし、両親も心配していたぜ?」
「オーウェンには大変感謝している。…しかしそれとこれとは別問題だ。母上と父上を心配させている事には申し訳なく思ってはいるが…、この年にもなって家から自分で出ることすら禁じられていたのだぞ!吾はもっと他の世界を見て回りたい。もうあんな暗い同じことの繰り返しの毎日は嫌なのだ。」

 彼女の瞳は決して考えを曲げないという信念の炎で燃えていた。さっきの言い合いのせいもあってか余計に意固地にもなっているのだろう。

「寝食とかはどうするんだよ!細かいところまで考えてないだろ。」
「うっ……。」

 そこまで考えていなかったのか、自分の盲点をつかれ、言葉に詰まる。

「…とにかく無理やり引っ張ってでも行ってもらうからな!」

 彼としても言いづらかったが、子は親の元に居るのが一番のはずだし依頼の事もある、ともっともらしい理由で自分を納得させて言う。

「まぁ、女の子に無理やりだなんて…。ますます畜生の道に堕ちてしまったのですね、オーウェン。」

 すると今まで黙っていた姉がやっぱり笑顔で言い放つ。

「だ〜か〜ら〜、都合の良いところだけ変に解釈すんなっての!それから、もともと堕ちてない!」

「でも、この子の話ももっともだと思いませんか?色々な事に興味を持つってとっても大切なことですよ。まずは彼女の両親を説得しに行くくらいは試してみても良いんじゃないかしら?」

 レーナが今度は真面目に言う。確かに今まで知らなかった事を見聞きするというのはワク
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