「おう、品物確かに受け取ったぜ!ありがとう。」
「ああ、また何か運ぶ時は連絡してくれ。」
店まで頼まれた品物を運び終えた青年はおじさんに笑顔で報酬の金を貰いつつ言った。
ここは人間と魔物が混在する町サマリア。他の町と比べて魔物が多く、人間と魔物の交流が盛んなことで有名な比較的大きな町だ。しかし『教団』の影響も少なからずあり、魔物への偏見は根強く残っていて裏では差別もされている。
「さ〜て金も貰ったし、次の仕事を貰うついでに店に飯食いに行くかなぁ。」
先ほどの店を出た青年は大きく伸びをしながらゆっくりと歩き出した。見たところは二十歳前後か。辺りには武器屋からよろず屋、薬屋にパン屋、レストラン等大小様々な店が所狭しと並んでいて、青年の視界に入っては消えていった。
青年が歩き続けちょうど町の中心近くまで来たとき、魔法道具屋の角をまがった先にレーナの店はあった。外観はレンガ造りの縦に長いきれいな建物で、看板には『旅人の定宿』と書いてある。
「おーす!レーナ、ただいま!」
扉を開けるときにカランカラ〜ンと音を立てつつ、青年が宿に入りながら言った。
「あらオーウェン、おかえりなさい。ずいぶんと早かったのね。仕事が失敗にでもなったのかしら?」
オーウェンと呼ばれた青年がカウンター前の椅子に座りながらメニューを言おうとすると、内にいた修道服のような落ち着いた服を身にまとった女性が笑顔で言ってきた。布巾でグラスを拭いていた彼女は一見人間に見えるが、耳が尖っていることから魔物であることが分かる。
「相変わらずきついなぁ。仕事なら成功したよ!今回のは書類と小包だったから比較的軽かっただけ。」
「そう、私はてっきり品物をなくして怖くなって逃げてきたのかと思ったわ。」
青年の目の前に冷たい水を出してダークプリーストのレーナはやはり笑顔のまま言った。
「さすがにそんなことしないって!結構この仕事にも慣れてきたしちょっとは褒めてほしいくらいだね。」
「そうですか、それはそれはすごいですね(棒)。ではそんな仕事をテキパキとこなせるあなたに今月の食費を今すぐに払って頂きたいのですがどうでsy」
「そういえば次の依頼は来てたかい?」
「そうですねぇ、今現在ですとこの依頼のみですよ。それではさっきの食費の話に戻すんですが、」
「うわぁ、この仕事は良さそうだ!じゃあさっそく行って来るわ!」
オーウェンは話題が厄介な方向に行きそうになったので慌てて話を遮ってそそくさと店を出ていった。
「まったく、いっつも笑顔でひでぇこと言いやがる。それでも家族かよ!よく今まで耐えてこれたよなぁ…。」
これには訳があり、オーウェンは小さい頃に両親を亡くしてしまったため、親の昔からの知り合いだったレーナの家族の元に引き取られたのだ。現在では宿屋の一室に住み、運び屋の仕事をしている。彼女とは昔からの付き合いでよく一緒に遊んだこともあってか、彼にとっても気兼ねなく話ができる姉のようなものである。昼間はカフェを、夕方からは宿屋を経営していて、面倒見も良く家事もこなすとても素晴らしい人(?)だ。あの容赦ない物言いさえなければ。
「あ〜、サンドイッチを食い損ねちまった。仕方ないからその辺のレストランにでも……ん…?」
近くのレストランへ向けて少し歩いていると、店の前にこんなクソ暑い中、上から下まである長い真黒なローブを身にまとった人が店内をじっと見ていた。口元までしか見えないがじゅるると若干よだれも垂らしそうになっている。怪しい。こういう手合いには関わるとロクなことがないのでそのまま通り過ぎることにした。一瞬目が合ってこっちを見つめてきた気がしたがきっと気のせいだ、うん。後ろからなんかついて来ている気がするがこれも気のせいだろう。
店の中に入ると何故かテーブルに通され、向かいにやはり何故か先ほどの怪人ローブ男が座ってきた。こいつとツレと思われたのか、無性に悲しくなる。しかしいよいよ怪しいのでオーウェンは注文をした後に思い切って話しかけてみることにした。
「あのぅ…、何か僕にご用ですか?」
「別に怪しいものではない。ちょっと食事をしたくてな。」
凛とした、気品が感じ取れる声でローブ女(声は女のそれであった)はその頭にかかったローブ外しながら言った。
「は、はぁ。」
と言いつつも、オーウェンは思わずこの目の前に座っている少女に目を奪われてしまった。この二十歳に届くくらいの少女は、金色に輝くさらさらとしたきれいな髪と真っ直ぐに尖がった耳、端整な顔立ち、口元には牙が2本、そして何よりも宝石のように澄んだ思わず吸い込まれてしまいそうな赤い瞳、まさしくヴァンパイアであった。
「 ? 驚かないのか?人間は吾のようなものを見ると驚くと聞いてお
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