「――きて!ねぇ――」
まどろみの中、可愛らしい女の子の声が頭の中にこだまする。ここが夢か現実かはわからないがとても心地よく、昔の光景を少し思い出した気がした。
「う、う〜ん、もう少し寝かしてくれよぉ…。」
「――おきて!今日は連れてってくれるんでしょ?おーい――」
先ほどよりも少し大きくなった声が何重にもなって耳に届く。そういえば前にも夢の中で何かあったような…。
「じゃないとまた精りょ――」
「ぶわぁぁ起きる!起きます!だからそれは勘弁して!」
何故か急に自分の第六感が体一部の危機を察知したためレンは布団をはねのけ飛び起きた。
「あ、起きちゃった、残念。おはよう!レン君!」
「あ、あぁ、おはよう…。」
残念の意味を聞こうかとも思ったが、これを聞くとトラウマの扉が開きそうな気がしたのでやめておく事にする。
「さぁ、学校の準備して!早速行こうよ!」
「さぁったってまだ5時だぜ?ふあぁ、いくらなんでも早すぎないか?」
と、欠伸交じりに返事をする。ヒナが早く学校に行きたいからっていくらなんでもこんな朝早くに起こされるのは勘弁してほしいものだ。
「だって待ちきれなくって。それよりも学校に居る時の私の格好なんだけど、これならバレないよね?」
と、ヒナは足?が隠れるようなフリルのついたロングスカートにすっきりとしたシャツとジャケットを着て、うれしそうにくるっと一回転して見せた。少し小柄な体形と可愛らしい顔も相まってとっても似合っていたその姿に思わず見とれてしまう。が、
「でも、それだと顔や髪が丸見えじゃないか。日光に照らされた時に透けるんじゃパニックにならないか?」
「えぇ〜、そ、そんなこと無いと思うけどなぁ。」
「それに足が良く見えないってのも気付かれたら危ないかもしれないし、他の方法を考えようよ。」
「そんなぁ、せっかくリアさんが選んでくれたのにぃ…。」
レンに空気の読めない正論をズバズバと言われ、ヒナはシュンとなって落ち込んでしまった。
「ま、まぁ、そう落ち込むなって。俺も良い方法を考えてたんだ。」
「ホント!?どんな方法なの?」
「ああ、これなら絶対にバレる事はない…と思う。」
と、レンは自慢げに言った。
「ねぇ、これなら確かにバレることは無いと思うけど…。あんまりじゃない?」
「仕方ないだろ?姿を見られたらまずいんだから。」
学校に着くと、鞄の中から小さな声でステンレスの水筒が話しかけてきた。
「ここ窮屈だし、暗いから結局何も見えないよっ。」
「講義棟に入ったらうまく出してあげるからそれまで我慢して。」
結局、前にヒナが体のサイズを変化させているのを見て人が居るところでは水筒に入っていてもらうこととなった。姿が見られないようにするには絶好の策だが、傍目には鞄に向かって一人で話しかけている状態なので、できれば会話を続けるのは避けたい所だ。でないと入学早々変人扱いになってしまいかねない。
「あら、あなたは。おはよう、藤堂君。」
そこへ、後ろからいつも通り落ち着いた雰囲気を持ったサクラがにっこりと笑いながらやってきた。
「おはよう、成田さん。成田さんも1限から?」
「……。」
幸いヒナも黙ってくれたようだ。しかし同時に鞄から何やら不気味な視線のようなものも感じるのは気のせいだと思いたい。
「ええ、早起きには慣れていたつもりなのに、やっぱりつらいものね。」
サクラは朝に弱いのか少しぼーっとした表情をして言った。
「早起きはキツいよね。大学生ってもっと自由に勉強できるものと思ってたけど、これじゃ高校と対して変わらないかも。」
「一年生のうちは仕方ないみたいね。そのうち専門分野に別れた時に変わってくるみたい。」
次第に周りの学生達が教室へと向かい始めたので、レンはサクラに先に席をとっておいてもらうよう伝えて人気のない通路へと移動した。
「――いいか、鞄とかで隠してできるだけ一目につかないようにするけど、気をつけるんだぞ。」
「わかってるよっ。…それよりもさっきの人がこの前言ってた`あの子`?」
「そ、そうだよ。」
「結構仲良さそうだったね?」
ヒナはニヤニヤしながら、しかし突き詰める様に聞いてきた。
「な、なんだかんだで授業が被っててよく一緒に授業受けるんだ。それだけだよ!さぁ行こう、授業に遅れるっ。」
これ以上の尋問は勘弁願いたいので急いで教室の中に入り、サクラがとってくれた黒板が良く見える少し前寄りの端の方の席に二人で座った。
「この辺りの席なら大丈夫よね。良かった、今日も間に合って。いつもごめんね、朝待っているの大変じゃない?」
「いやぁ全然、このくらい問題ないよ。」
鞄から微かに不満のような声が聞こえた気がした。
「今日
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