大分沈んできた頃、ようやっとレストランから解放されたオーウェンはこのまま中途半端な時間に宿に帰るのもアレなので、むしゃくしゃしつつ、レーナからもらった依頼を受けに歩いていた。
「くぁ〜、代金以上にコキ使いやがって!とりあえず今日は依頼内容を聞くだけにしとくか。」
散々に物や料理を運ばされ、クタクタになった腕をほぐしつつ地図を広げる。
「え〜っと、確かこの辺だよなぁ、…あれ?この場所ってさっきのヴァンパイア娘の言ってた家じゃないか。」
途端にさっきの子のタダ食いの件が思い出される。
「まったく、どんな教育したらああなるんだ。依頼のついでに親に文句言ってやる!」
そういえば彼女はもう屋敷に帰ったのだろうかと考えつくが、先ほどの件でのイライラが勝り、そのままオーウェンは屋敷の門をたたいた。
屋敷は横に広く伸びていて、心なしか辺りから霧のようなものさえ出ている。さらに本当にここに人が住んでいるのかと思うほど外も敷地内も暗い雰囲気だった。
オーウェンは屋敷内に入り召使いに館主のところまで案内されたが、廊下ですれ違う召使い達は皆慌てていて屋敷内全体が騒然としていた。大きな広間に来ると、奥の何段かせり上がった所のまた奥から、これまた透き通るような赤い瞳をした何か物言えぬ威圧感を醸し出している美女が現れた。
「おぉ、お主が金を出せばなんでも運んでくれるという運び屋か。」
館主は表情を変えずに言った。発する言葉一つ一つに威厳が感じられ、オーウェンはやられまいとじっと相手の目を見据えた。
「はい、運べるものであれば何なりと。今日は依頼の詳細を御伺いしに参りました。」
「そうか。しかし今とても都合が悪いのだ、申し訳ないが後日にしてはくれないだろうか。」
先ほどとは違い、少々焦った様子で館主は言った。
「そう!私達の大事な娘が行方不明になってしまったのだ!!」
するとそんな時、すぐ後ろから細身でしかし目が鋭く光りこちらを見るやはり威圧感を漂わせた男が現れた。
「あぁ、なんてことだ!愛しい娘ミラよ!!どうしてお前は家を出て行ってしまったのだぁ!」
しかし突然さっきまでの威圧感はどこへやら、まるでオペラの悲劇のように男は大声で独り言をあげ始めた。あまりにも演技が仰々し過ぎてあれじゃ喜劇だ。
「何をやっておるのだジョゼフ!私の夫となった以上、人には、特に客人にはしっかりとした態度で望めとあれほど言っておいたであろう!」
と館主は苛立った声であぁまたかとつぶやき始めた。
「だってマーラ!あの子はいままで一回もこんなことしたことなかったじゃないかぁ!何故なんだぁ!確かにこの前私が作ったかわいい服を着てもらおうと思ったらちょこっっとだけ嫌な顔されたし、昨日は久々にスキンシップを取ろうとして後ろから抱きしめたら笑顔で鳩尾に肘をブチかまされたけど、あれか?あれがいけなかったのか?」
先ほどから喚いている男、ジョゼフは今度は滝のような涙をながしながら訴えた。いやどう考えてもそれらだろう、とオーウェンは少し彼女に同情した。
(…それにしても彼女は帰ってきていなかったのか。)
短い間とはいえ話をした仲なので心なしか安否が心配になってくる。タダ食いの件は先送りだ。
「だからと言ってワンワン泣き叫んでどうする!いつまでも娘離れができん奴め!」
「…………あのぅ…」
「「なんだ!!?」」
二人の言い争い(?)がデッドヒートしていたが、とりあえずこの二人の探している娘が昼間に会ったミラだということがわかったので、町にいたことを教えるためオーウェンは話を遮って言った。
「その娘さんなら今日の昼間に町で会いましたよ。」
「ホントか!?どこだ、どこにいたんだ!?」
「えぇ〜い、少しお前は黙っていろ!話がややこしくなる!それで、どこにおったのだ。」
マーラはオーウェンに食いつこうとする夫に向かって問答無用で光弾を撃ちつつ(大丈夫なのかアレ…)聞いてきた。
「彼女とはレストランでお会いしたのですが、その後は私にもわかりません。申し訳ありませんこんな情報しかなくて…。」
「いや、町に行ったことだけでもわかるのはありがたい。今すぐにでも捜索隊を編成し、行かせたいのだが…」
途端に彼女の言葉の歯切れが悪くなる。
「あまりにも大所帯で捜索すると、ただでさえ状況が悪い教団との関係がさらに悪化する恐れもあるのだ…。親として非常に情けないことだが、この所為を理由に教団に攻撃されては余計に娘の命が危うくなる…。奴らは常にこちらを排斥しようとする理由をさがしているからな。」
確かにその通りだった。日も落ちてきたこんな時間に魔物達が大勢で町に押し寄せてきたら教団にとって絶好のチャンスとなってしまうだろう。
「…そう
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