「昨日全滅した玄室までもうすぐだな。」
階層が下がるにつれて序々に敵が強くなっていく中、リディア、バジル、ラナの三人はそれぞれ自分と苦楽を共にしてきた武器を片手に洞窟迷宮内を勇ましく進軍していた。
「ここまで来ても見つからないなんて…。やっぱり……」
リディアが泣きそうな声でそう呟く。エルフ族の尖った長い耳が、今は少し下がり気味になっているように見える。
「な、なに言ってんのよっ。きっとあのバカの事だし、迷宮内で迷ってどっかをほっつき歩いてるだけに決まってるって!」
そう言いながらも自信が無いのか、ラナも心なしか声が震えていた。
「そうそう、アイツって結構どんくさいしなっ。今頃通りかかった魔物に道でも聞いてるんじゃないか。」
バジルが場を明るくしようとそんな冗談を言う。しかしここまでニールの居た形跡がなんにもないとさすがに不安が拭えないものとなってきていた。
「――ったく、なんだよ。相変わらずひでぇ言い草だなぁ。」
「「「ニール(さん)っ!!」」」
そんな話をしていたところに突然通路の奥の方からニールがよぉと手を挙げながら現れた。
「心配掛けてすまない。一応この通り生きてたぜ。」
「なによ〜心配させちゃってっ。無事なら文句無いわ。だっさい腕輪付けちゃって、どうしたの?」
ニールが見つかってほっとしたのか、ラナが表情を緩める。
「見つかって本当に良かったですっ!あんまりにも見つからないから食べられちゃったのかと思ってましたっ。」
リディアもうれしさのあまり目に涙を溜めつつ言った。しかし、
「ちょっと待った…。お前……どうしてそんな恰好を…?」
仲間の中でただ一人、バジルが他の二人に近寄るなと手で制すると怪訝そうに言った。
確かにバジルが不思議に思うのも無理はない。何故なら今現在ニールが装備している鎧は魔王軍のルーンが刻まれたそれであり、その鎧は一目で魔王軍であることを示していたからだ。
「いやぁ、ここに至るまでには実に様々な経緯があってだな。まさか自分でもこんなことになるとは――」
「――ふふっ、侵入者は誰かと思えば、昨日蹴散らしてやったお前の仲間か。なるほど、探しに来たわけだな。」
そこへ後ろから、イヴが堂々とした足取りでニールの隣までやってきた。とっさにパーティの全員が身構える。
「貴様は昨日のっ!」
ラナが叫びながら大きな斧を構え戦闘態勢をとった。
「ラ、ラナ、ちょっと待ってくれ。――あんたも、今出て来ると混乱するからっ。――皆、少し話を聞いてくれ。こうなった訳を説明するから。」
「―――まぁとりあえず、ニールがバカだという事は置いておいてだ、やはり簡単には信じられんな。」
パーティの皆に説明をするとやはり唐突な内容に理解しかねるのか、訝しげな表情で、しかしニールはバカという部分には何故か納得したように頷いていた。
「ちょっと、置いておくなよっ。それじゃまるでオレがバカなのが当たり前みたいじゃないか!」
「当然のことだろ?」
ぐっ、今回の騒動のせいで否定できないのが悔しい。
「しかし、さっき私が説明した話が仮に真実だとしたら、色々と辻褄が合う部分がないか?」
イヴがそんなことはどうでもいいと言うかのようにスルーして話を戻した。
「確かに、魔物に喰われる喰われると騒がれてはいたが実際そんな形跡を見たことはないし、実際に魔物と人間が共存している町だってある。魔物がメスしか見かけない事にも説明が着く。」
バジルは目を閉じて思案しながら言う。
「だが当然、そのように仕組んでいると考えることもできるわけだ。だって真実にしてはうまく出来過ぎている。」
バジルは、依然として警戒を解かずに言った。今まで信じていた話とまったく反対の事を言われたのだから彼がこう考えても無理はない。
「まぁ、すぐに信じられないのは仕方ない事だと思う。ただ、魔物も姿が違うだけで人間と同じく心を持った生き物だという事だけは信じて欲しいのだ。」
出会ってからずっと横柄な態度をとっていたくせによくそんなことが言えると思わず口にしそうになる。しかしよほど信じて欲しいのか、イヴの表情が先ほどとは打って変わって真面目な表情になっていたためなんとなく言えなくなってしまった。
「それで、このバカをわざわざ捕まえてまで何をこっちに要求しているんだ?」
バカ扱いがいちいち鼻につくが、彼女がこんな面倒な手段をとってまで戦争の話をした訳は確かに気になる。
「ほうっ、物わかりがいいな。では率直に言おう。私は教団本部へ行きたいのだっ。無論争いにではない、話し合いをしにだ。」
周りのメンツが口々に驚きの声をあげる。
「神族は魔物も同様に生み出したとされているが、
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