Lv.2 主と奴隷(オレ)と

「はぁ………。」

 ここは先ほどの洞窟迷宮からちょっと離れた町にあるとある宿屋の一室。ゆったりとしたローブを身にまとった聖職者のような出で立ちの女の子は本日何度目になるかわからないため息をまたついていた。背中に長く下ろした綺麗な髪は腰の辺りまで伸びていて、笑えばきっと誰もが振り返るであろう端整な顔立ちが今は憂いの表情をしている。

「リディア、そんなため息ばかりついてたって仕方ないぜ。今日はもう遅いし体力を回復して明日もう一度迷宮に入ってみようよ。」

 リディアと呼ばれた女が声に気づいて顔を上げると、精悍な顔立ちをした逞しい青年が飲み物の入ったカップを片手に心配そうに話しかけてきた。

「えぇ、バジル、わかっています。でもやっぱり心配で…。」

「確かに落ち着かない気持ちはよくわかる。アイツだけこっちに戻ってきてないんだからな。でもきっとアイツの事だ、迷宮内でだってゴキブリみたいにしぶとくやってるに違いないさ。」

 青年、バジルは持っていたカップを彼女に渡して返事を返す。服装は騎士のような大きめの分厚い鎧と背に帯びた大きな大剣が印象的だが、知性も感じられる表情も持っている。

「ありがとう…。そうね、明日になったら早速探しに行きましょう。」

「――そういえばラナの奴は?まだ戻ってきてないのか…。」

 バジルはそこにはいないもう一人の仲間に気づき、声を上げる。

「彼女ならさきほど洞窟前に彼が倒れていたりしないか見て来ると言ってまた出ていきました…。」

「アイツも相当まいってるみたいだな…。」

 バジルはそう言うと考え込むように腕を組んでそれっきり黙ってしまった。

 しばらくした後、部屋の扉が開き、

「……やっぱり見つからなかった。」

 と、言って彼女、ラナは俯いて元気なく部屋に入ってきた。用意されている粗末なベッドに座り込むと、大きな斧を床に下ろし項垂れている。

「いつもの明るいお前らしくもないな。まぁこんなことがあったんだから無理もないが…。今日はもうその辺にしておこう?そんな状態で再開したらきっとアイツに笑われるぜ。」

「ふんっ…。」

 わかってはいるものの納得できないのか、彼女はその言葉を無視してそのままベットに寝転がり不貞寝を始めた。装備しているちょっと露出度の高い動き易そうな鎧がカチャカチャと音をたてる。

「ニールさん…今頃どうしてるでしょうか…。無事を、お祈りしています。」






―――一方、例のボスに捕まっていた例の男、ニールは―――

「うわっ、くそぅっ!はずれなっ!」

「ふふっ、無駄だ無駄だ。それは付けたもの、即ち私にしか外すことはできないぞ。観念しておとなしく私の物になれっ。」

 無事ではなかった。

「くそっ、魔法でも壊せないのかっ。」

 何回も攻撃魔法を腕輪に当ててみるがビクともしない。先に付けている腕の方がどうにかなってしまいそうだ。

「あんまり自分を虐めるな。それともお前Mか?まぁ私は一向に構わないがな。」

「違うに決まってんだろ!なんか腹立ってきた。一撃お見舞してやるっ!」

 今なら距離も近いのでよけられる心配もない。ダメージとしては少ないが今のニールは攻撃せずにはいられなかった。

「勢いが良いな。しかし…!」

 彼女が何かの呪文と共に手を握ると、

「はぅっ!」

 突然ニールの体中に電撃が走り、ビリビリという音がして黒こげになってしまった。

「それは所有者が呪文を唱えると電撃が流れるようになっているのだ。これで私には永久に手出しできまい。」

 彼女は勝ち誇ったようににんまりと笑うとこう続けた。

「まぁ、ここでの立ち話も何だし、向こうへ行ってから話を聞いてもらおうか。――この、魔王と教団との戦争の真実をな。」







「―――すると、この世界の'設定'をもう一度書き直すのが魔王軍の目的なのか?」

 先ほどの部屋に着き、鎧等の装備がハプニングで皆ぼろぼろになってしまったので、貸してもらった新しい鎧を着つつニールは言った。

「まぁ簡単に言えばそうだ。現魔王様は人間との種の融合を考えられていて一度はそれを実行しようとされたのだが…神の力が強すぎてな。書き換えが不十分になってしまったようなのだ。」

 彼女(イヴという名なのだが)は、先ほどの戦闘用の服ではなく魔道師や錬金術師が着るようなゆったりとした漆黒のローブに着替え、手を後ろに回した状態で部屋の中をゆっくりと歩きまわりながら言った。

「へぇ、オレの町で聞いたこととはまったく違うな。向こうでは魔物は人を喰らってしまうと伝えられていたけれど、実際は子孫を残そうとして連れ去っているだけだったとかも正直信じがたい話だ。」

「さらに人間や魔物を含むすべての生き物は皮肉にも実際は神族が生み出
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