「あっ、帰ってきた!おかえりぃ〜!」
部屋のドアを開けて中に入るとすぐ、右手にある台所に置いてあったコップの中からヒナがニュッと伸びて顔だけ出した。
「お、おおぅ…、ただいま…。…とりあえず、そこから出てきなさい。」
頭が生えている植木鉢とでも言ったようなとってもシュールな光景に完全に面食らってしまったが、気を取り直して彼女をコップから出るよう言って自分も部屋に入る。ち
なみにさっきのネタは2時間かけて考えたものらしい。
「今さっき大家さんとこで話してたんだけど、せっかく実体化できたんだし、ここじゃ狭いから201号室に住んだらどうかなって大家さんが言ってたよ。」
「えぇ〜!レンくんと一緒が良いのにっ。ほら、私ゴーストだから物とかある程度通り抜けられるし邪魔になんないと思うよ!」
ヒナは頬を膨らませて文句を垂れたと思うと、レンの鼻先まですっと移動して自分の主張を力んで言った。長い透き通るような(というよりも透き通っている)髪がレンの体
にかかり、思わずドキッとしてしまう。
「そ、そうは言ってもなぁ…。ほ、ほら、あれだっ、お互いプライベートな時間ってのも必要じゃない?」
「私はそういうの別にないけどなぁ。そんな時間なら飽きるほど過ごしてきたし。」
「そっちが無くてもこっちには必要なのっ。部屋違うといってももう会わないわけじゃないんだし、ね?」
それに今朝みたいなのが毎日続かれてもそれはそれで困る。
「むうぅ〜…わかったっ。その代わり毎日遊びに来るからね。」
レンは、アレ?それじゃ結局変わんないんじゃね?と思いつつも一応提案を受けて貰ったので、外にも出られるようになったヒナと一緒に大家さんの部屋に向かった。
「―――あら、その様子だと移られるのかしら?――あなたは、初めましてですね。大家の茉莉花(マリカ)です。」
「…どうも、これから新しくお世話になります。ゴーストの雛菊ですっ。」
ヒナは人見知りなのか、レンの肩口から少し身を乗り出しておずおずと自己紹介をする。
「自己紹介くらい前出てしろって。――じゃあ大家さん、ついでなんで掃除とかもしてきちゃいますね。」
「わざわざありがとうございます。助かりますわっ。じゃあ、はい、これ鍵です。」
ありがとうございますと言って後ろに隠れているヒナの代わりに鍵を受け取ると、ヒナが何やら裾を引っ張るので小声で「…なんだよ…」
「……あの人おっぱいおっきいよねっ…」
「…ちょ、いきなり何言ってんだっ…」
「…?どうか致しましたか?」
こちらのこそこそ話が気になったのかはたまた聞こえていたのか、笑顔でマリカさんが訪ねてくる。
「いいえぇ何でもないれすっ!」
ヒナの不躾な質問に焦って上ずった声を出してしまいながらも、先ほど受け取った鍵で201号室の部屋へと逃げるように向かった。
「たくっ、いきなり何言ってやがんだよ!失礼だろっ。」
レンは階段を上りながら肩に憑いているヒナに注意する。
「でも、大きかったよね?」
「まぁ確かに大きいとは思うけれども…」
「レンくんはああいうの、好みなの?」
「いや、そういう訳じゃ…」
「だってさっき大家さんと話している時、チラチラ見てたもん。――あ〜あ、私ももうちょっと大きかったらなぁ。」
ヒナは、上目遣いでレンを睨むと、別段小さいとは言わない胸を寄せ上げて大きさを確認しながら文句をたれる。
「だぁぁ〜、そんなことは置いといてとりあえず掃除しよう掃除!」
先ほどの話を続けられるのも恥ずかしいので、部屋に着くなり鍵を開けてずんずん中に入っていく。
「そんな事とは何よっ。これでも生前は結構考えたり試したり……」
ヒナが生前の努力について何やらブツブツ言っているが付き合っていると日が暮れそうなので奥の部屋に入り、畳の上を持ってきた箒で掃いていく。
「もう、レンくんのいじわるっ。そういう事してると……。」
ヒナは先ほどの会話で機嫌を損ねたのか、箒を持っているレンに近づくと足を不意に掴み、仰向けに転ばせて押し倒した。
「うわ、ちょ、ちょっとっ。」
「こういう事しちゃうからね。それっ!」
ヒナはレンの腰の辺りに馬乗りになるとレンの穿いているズボンを脱がそうとしてくる。
「待てって、今掃除中だし、そんな…」
またこの前のトラウマが蘇り、レンはうろたえる。
「待たないよ〜。私もいじわるしちゃおっと。」
ベルトをカチャリと外されジーパンに手が届いたその時、
「――どう?進んでる?もし手伝うことあったらあたしも手伝うけど…」
「「あ…」」
不意にドアが開いてリアが現れた。この状況は、助かった…のか…?
「…ってあんたら昼間っから何やってんのよっ。」
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