―エアナ―
兄様が出て行ってから私は兄様が注いでくれたジュウロウの血を飲み干した。
「・・兄様は・・どうして私を遠ざけるのだ・・」
兄様はあの日、私が愛を告白してから私を遠ざけるようになった。
昔はあんなに私の名を呼んでくれたのに、あの日から兄様は私を「お姫様」と呼んで名前を呼んでくれなくなった。
私にも自分を兄様と呼ばず、「ジュウロウ」と呼ぶようにと言った。
あの日から兄様は全く感情を見せてくれない。笑顔を見せてくれない。怒った顔をしてくれない。安らいだ顔を見せてくれない。機嫌の悪い顔を見せてくれない。
私がどんなに理不尽に当たってもまるで意に介さないように擦り抜けられてしまう。
どんなに恥ずかしさを我慢して甘えてみても擦り抜けられてしまう。
どんなに話しかけたってカラクリ人形のように決まった事しか言ってもらえない。
兄様、私は何を間違ったのだ? 私の愛の言葉が至らなかったのか?
今日だってそうだ。朝起きたら兄様の匂いが傍にあって、本当に嬉しかった。昔のように起こしに来てくれたのだと思った。
朝起きたてにキスをして欲しいと私が願ってからは毎日してくれた。
それからは毎朝兄様のキスとともに兄様の優しい微笑を見て起きるのが私の楽しみだったのに。
なのに兄様はまたあの、仮面でも貼り付けたかのような顔で私を見ていた。
それに・・兄様はあの日からまるでご自分が物だと言わんばかりの発言をされるようになった。
私は兄様にそんな悲しい事を言って欲しくはないのだ。
なのに兄様は何度でも自分は道具だ、家具だ、物だと言われる。
そんな事言って欲しくないのに、でも兄様はそう言うのを止めてくれない。
だからさっきはそんな事を言っている兄様が許せなくてあんな風に魔力を力任せに叩きつけてしまった。
壁に叩きつけられて痛かったはずなのに、私に無茶苦茶ばかり言われてて怒っているはずなのに。
昔兄様に言われた『君達ヴァンパイアは高貴な種族なんだから簡単に人間に暴力を振るってはいけないよ』って約束も破ったのに・・
なのに兄様は私を叱ってくれない。
昔なら兄様は私を本気で叱ってくれた。本気で怒ってくれた。
私に自分の感情をぶつけてくれた。
なのに今は兄様は私が何をしても、何を言ってもあの仮面のような顔しかしない。あの、カラクリ人形みたいな答えしか返してくれない。
兄様は・・私を嫌いになってしまったのか?
私はこんなに兄様を愛しているのに――――
・・
・・・・
・・・・・・・
午後になり、私は友人であるサキュバスのフィリ・マヌエルとリリムのクーニャ・リンダルと共に昔この一帯を治めていたサウディ伯爵の元邸宅で昼食を取っていた。
ここ、旧サウディ伯爵邸はクーニャの夫であるラウディー・リンダルが隣国の反魔物国家と戦争になった時、武勲を上げたため褒美として与えられたらしい。そのためここはクーニャがバカンス用、というかラウディー様との夜伽にマンネリを感じた時に利用しているらしいが、私達はクーニャの好意よく使わせてもらっている。
今日はこの二人の親友が私と兄様の間の不和を見かねて気分転換という名目で呼んでくれたのでやって来た。
彼女達二人は私の幼馴染で、兄様との仲をよく知ってくれていて協力してくれる本当に大切な親友だ。
「エアナ、失敗は成功に繋がる。今度の事もその過程の一つだ。諦めずに挑むがいい」
「そうそう、アタックあるのみだよ。男は口説いてなんぼ、女はアタックしてなんぼなんだからさ♪」
フィリとリリムのクーニャは暗い顔をしている私をそれぞれの方法で慰めていた。
「私は・・兄様に何故あんなに距離を置かれているのか分からないんだ。私の愛が足りないのか? だから兄様は私を受け入れてくれないのか?」
「ふむ。エアナとジュウロウは昔は兄妹のように暮らしていたんだろう? ならジュウロウは君の事を『妹だから』という枠に押し込めて見ているのかも知れないぞ? そこはどうなんだ?」
「いや、兄様は多分そうは思っていない・・・と思う。少なくとも兄様は私を家族とか妹とかじゃなく、異性として見てくれて・・・いた、と思う。・・・でも今は私を『ご主人様』って形に押し込めて見ているように思う」
「ん〜、もしかして一年先の縁組に気を使ってるのかも。ほらほら、『俺、お前の事好きなんだ。でもお前にはもう許婚がいる。俺は身を引くよ』みたいな? だったらそんなの気にしなくても良いのにね♪ 私達からしたら略奪愛に横恋慕なんか当たり前なのにさ♪」
「分からない。最近全然兄様の考えが分からないんだ。今までならほんの些細な事でも兄様の事なら何でも分かったんだ。なのに、今は兄様が何を考えているのか全然分からないんだ」
「ふむ。ジュウロウは
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