執事と吸血鬼―後編1―

―――エアナ―――

兄様はすぐに見つかった。

兄様はフィリやクーニャの旦那様と一緒に待機していた部屋に立ち尽くしていた。

「兄様・・・」

ああ、なんだろう。なんだか頭がぼぅっとする。思考に霞がかかったみたいで何だかフラフラしている。

さっきので疲れが出てきたのかな・・・

おかしいな・・・なんだかお腹がすっごく空いた・・・

あ・・・そうだった。血が欲しかったんだ。

「兄様・・・血が飲みたい。血、血、血、血が欲しいよ」

兄様は私の求めに何にも反応しない・・・それって飲んで良いって事だよね。

兄様の首が・・・スゴク美味しそうな頚動脈が・・・綺麗・・・吸わせてもらっていいよね。

カプッ

兄様の首に噛み付いて血を吸い出す・・・

兄様の血が口腔に、喉に、胃に、どんどん流れてくる。

美味しい、美味しいよ。兄様の血は本当に美味しい。

兄様に会うまでは父上に飲ませてもらっていた。

でも、兄様が使用人として母上に連れられて『そろそろ他の男の血を試してみるといい』と母上に勧められて兄様の血を飲んだ瞬間、もう父上の血は飲めないと本能で感じた。

だってこんなに美味しいのだ。こんなに愛しいのだ。

愛しい兄様の血を飲む。

これ以上に■■■事などあるものか。

―――そうだ。この世にこれ以上■■な事などあるものか―――

ああ、兄様の血を飲んでいるだけで魔力が戻ってくる。

それと共にどんどん体が熱くなってくる。

今なら何だって出来るかもしれない。

―――今なら何だって出来るだろう? さぁ、あの時の答えを貰おう―――
そうだ、今もう一度告白しよう。そして・・・既成事実を作ってしまえば・・・

「兄様・・・あの時の答え、まだ頂いていませんでしたね。もう一度言いますので、今度は答えを下さい。私は、エアナ・リーデンは貴方を、ジュウロウ・ユウキを愛しています。貴方を永久に愛しています。だから、私と結婚してください」

あれ? 結婚ってなんだったっけ? ああ、そうか。『ケッコン』って男と女がくっつく事だった。

よし、もう一回言おう。兄様だってくっつきたいよね? だってこんなに気持ち良い事なんだもの。

血を吸っただけでこんなに気持ち良いんだから。

■■で■を吸ったらもっと気持ち良いはず。兄様も出してくれたら絶対気持ち良くなるから。

兄様、私を受け入れて?

「・・・・・・・」

「ねぇ、兄様。何か言って? 兄様も気持ち良くなりたいでしょ? 私が気持ち良くしてあげる。兄様が私以外見れなくしてあげる。私以外必要なくしてあげる。だから―――」

その時だった。兄様は急に私を床に組み伏せてきた。

あはっ、兄様やっと素直になってくれた。いいよ、兄様の好きにして。

「コ・・・・・・・・タイ」

え? 兄様何言ったの? 声小さくて聞こえないよ。

「殺したい。俺はお前をコロシタイ」

え・・・・兄様? 何・・・言ってるの?

「死ね・・・シネ死ねシネ死ね死ね死ね死ね死ね死ね・・・死ね? シネ・・・ってナンダ? アアア、ソンナコトドウだってイイ、シネシネ死ね、綺麗だキレイダキレイだ美しいウツクシイウツクシイ」

兄様が私の首を絞めてくる。

苦しい、苦しい苦しい苦しい苦しいどうしてどうしてどうしてどうして?

兄様・・・私が嫌いなの?

私兄様に嫌われてたの? 殺したいほど憎まれてたの?

兄様は私を殺したいほど嫌いなんだ。

なんだろう。胸に穴が開いたみたいだ。

スースーする・・・体中に風穴が開いて私がそこから全部流れたみたいだ・・

兄様に嫌われたくない。

息出来ないよ・・・苦しい苦しい・・・兄様、なんでそんなに悲しい顔してるの? どうしてそんなに苦しそうなの? どうしてそんなに辛そうなの?

ああ、兄様にそんな顔似合わない。

私が兄様を笑顔にしてあげたい。

私が兄様を受け入れるから。

でも、どうして・・・

「どう・・・し・・・て・・・?」

「にい・・・さま・・・・」

「っ!!」

首を締め付ける手の力が緩んだ。

「ゲホッ・・・ゲホゲホ・・・」

やっと呼吸が出来る。でも今大事なのは兄様。呼吸なんか二の次だ。

「兄様・・・」

私は兄様にどんなに嫌われたって兄様を好きでいるから。

兄様に近づきたい。

兄様の胸に抱かれたい。

気づいたらもう兄様に近寄ろうとしていた。

「来るなっ!!」

「っ!!」

でもその歩みは兄様の拒絶の一言ですぐに止まってしまった。

「殺したい・・・違う違うっ!! そうじゃない!! 殺したくないっ!! 血が見たい・・・死ね・・・シネ死ねシネ・・・ああああああ違う違う、そうじゃないんだ。そうじゃないんです・・・お姫様!! 私が望んでるのはそうじゃない・・・そうじゃない? 何が? 
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