日常と崩壊の影

鍛冶の街。俺たちが向かった街は、ドワーフやジャイアントアント、サイクロプスといった細工等に一芸秀でた人たちが集まる街だった。大通りに出て右や左に目を向ければ、とても精密な意匠が施された指輪やネックレスがホイホイ売られており、大通りを飾る家並みは俺がもともといた世界なんか、足元に及ばないほどに美しかったり、荘厳だったりしている。本当に、こちらの世界に来てから驚きの連続だ。

俺とニーナは今日でこの街に滞在して一か月になる。もうほとんどここに腰を落ち着けようかと思うほどだ。どうやら俺は自分で知らなかったようだが、こういう職人通りみたいなところに憧れがあったようだ。

「ドレイクー。今日はエンディゴ石を……えっと、50ティーフ四方に斬ってくれって依頼だよー。あと、メンディア鉱石を50オイロク運搬の手伝い、今日だよー」
「了解。さっさとその石材を斬って鉱石運搬行くか」
「あーい」

この街での俺の役割は力仕事だ。最初はギルドで仕事を探していた時にたまたま困ってた男を助けた事だったのだが、それを繰り返しているうちに街中の職人たちからそこそこの金をもらいながら雑用をこなしている。というか、俺とニーナでやれば一時間も経たずに終わる仕事に払いすぎだと思う。この街の人たちは金銭感覚が緩いようだ。

それから、この街に来てからいろんな単位を教わった。というか、体で覚えられた。例えば1ティーフは俺がもといた世界で言う所の大体30.5cmだし、1オイロクは一キログラムだ。金貨一枚は銀貨100枚分。銀貨一枚は銅貨100枚分。さらに、もっと細かい数字があるらしいが大体100枚に付きランクが一つ上がる感じのようだ。金貨の上もあるらしいが……それを使うのは、金持ちの中でも酔狂なやつらだけらしい。

「ドレイクー。早くしないと置いてくよー」
「あ、あぁ。わかったよ」

さて、魔物娘たちと二人暮らし。それも今日で一か月だ。人目もなく、好き放題ヤれる一か月……


だったが

「ん?どしたのドレイク」

こいつは、俺と二人暮らしを始めてからセック……まあ、その、そういう行動を誘う行動を一切してきてない。まあ、最初は毎日言ってきたが、三日もしないうちに鳴りを潜めた。どうしたのだろうか。

原因はわからない……いや、もしかして俺が拒否しすぎたから拗ねた……にしては手は繋ぐし、腕を(羽を?)組むくらいは日常茶飯事だからそれはない……じゃあなんだろうか?

「ドレイク〜……あんまり見つめられると、その……ね?」
「すまん。まつ毛がほっぺについてるのをまじまじと見ちまった」
「え……いや、言ってよ。恥ずかしいし…」

フム、しかし……正直に言ったほうがいいだろうか……



ぶっちゃけ、俺の方が今かなりムラムラ来てる



どうしよう。魔物娘だから滅茶苦茶かわいいのは当たり前なんだが、この一か月の間一緒に暮らしてわかったことがある。この子、アホの子じゃなく、底抜けに明るいだけで、とても頭のいい子だ。頭の回転が速いとでも言ったらいいのだろうか、暗算は当たり前だし、話題を集めるのも得意だ。一度だけだが探偵のまねごとをして空き巣の犯人をとっつかまえたこともあった。

それだけじゃない。ちょっとした仕草、お腹を抱えて笑ったときだけ見せる、困ったような八の字眉。朝起きてすぐの寝ぼけたニーナの全く隠そうとしない大あくび……あぁ、もうシンプルに言ったほうが早いな。

俺はニーナに恋をした。どうしようもないぐらいに惚れちまったんだ。本当に、どうしようもないくらいに……

俺はそんな自分の気持ちについ三日前に気付いた。それから今日まで、なんか、ニーナとの距離をどうしたらいいか困っている。

「今日のお仕事終わりー。疲れたー」
「運搬が思ったより疲れたな」
「形が真四角じゃなかったからねー。変に力入れないとだったしね」
「お疲れさん。はい、これが今日の給料だ。それと、ドレイクの旦那」
「あん?」
「ちょいとこっちに来てみ」
「……?」

何だろう。俺を呼んだのは一番最初に俺たちに給料を渡した男。背が低く、ひげもじゃで、赤っ鼻のドワーフ……みたいな普通の人間の男だ。俺のことをドレイクの旦那と呼び、ニーナを嬢ちゃんと呼ぶ。

「何だよ。更に仕事任せようってのか?」
「いやいや、話はもっと複雑でシンプルだ」
「は?」
「あんた、嬢ちゃんに惚れたろ」

「ぶっ!?」

「見てたらわかるぜ。大体三日前ぐらいからか?ってか、正直もう心に決めてるんじゃないか?」
「…………まあ、うん」
「だろうな。嬢ちゃんはまだ気づいてないみたいだが……まあ、決めてるんだったらよぉ。話ははえぇのよ。ほれ」
「……これ……」
「言うのは男から。その方が女ってのは喜ぶってもんだぜ。旦那」
「…………」
「まあ、俺童貞だけどな!
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