ヒミツのバイトは箱の中

都会の真ん中。
少年は途方に暮れていた。



長い休みを利用して、少年は思い切って一人旅に出ることにした。
前々から貯めていたお小遣いと、両親から少しの軍資金をもらって、都会に。

はしゃいで使いすぎないように。
そう釘を刺されていたのだが。

初めての大都会は、見るもの全てが刺激的すぎて。
しかも、今までに持ったことのない額の所持金を持っていて。

浮かれた少年は、食事や宿泊、細々な買い物で次々と散財してしまう。


気付けば軍資金は底を尽き。
帰るための交通費すら使い込んでしまっていた。

「どうしよう…これじゃあ帰れない…」

通常、両親に連絡するのが最も無難だろう。
しかし、両親は両親で別の場所に旅行しており、迎えには来られない。
それに、調子に乗って使い込んで帰りの交通費がないだなんて伝えたら。
どれだけ怒られるのか、怖くて連絡する勇気がでない。

タクシーを使い、到着してから代金を家で調達することも考えた。
しかし両親がいないため、家のお金の在処が分からない。
しかも、バレたら怒られるのは同じだ。

帰るだけなら、ヒッチハイクという手もあるだろう。
しかしこの都会でヒッチハイクをするにはかなり勇気がいる。
乗せてもらえるとは限らないし、乗せてもらえても善良な人間とは限るまい。


途方に暮れた少年は、路地裏を彷徨っていた。
せめて今夜宿泊する場所だけでも何とかしたいところだが。



ふと、路地裏の壁に目を向けると。
そう古くはないチラシが貼ってあった。

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明らかに胡散臭いし如何わしい。
そもそも、会社名どころか仕事内容すらも書いていないではないか。

それでも、この条件は魅力的だ。
1日だけでも良く、短時間高時給、年齢不問で経験不問。
しかも内緒で働けるときた。

少年の通う学校はアルバイト禁止であるが、内緒ならば。
両親にもバレることなく、交通費を稼げるのではないか。

都合が良すぎて怪しいのは百も承知。
ダメで元々。
ダメだったときの恥ずかしさとかリスクは、多分ヒッチハイクとどっこいどっこい。

暫く悩んだ末、少年はチラシが示す事務所へと足を運んだ。



比較的小さな事務所。
人気のないところだが、建物は綺麗で、あからさまな危なさは感じない。

恐る恐るその中に入る。
幸いにも自動ドアなので、抵抗は少ない。

小ぢんまりしたロビーには、受付が一人。

青いローブを被った、褐色の女性。
綺麗な女性ではあるが、こんな都会でこの風貌は明らかに不自然だ。

と、少年はその受付の女性と目が合った。

「こんにちは。何かご用ですか?」
「あっ、あ…あの、その、外の…チラシを、見まして…」

少年は緊張で声が震える。
女性は流暢な日本語を喋っている。
少なくとも外国の危ない組織の支部とかではなさそうだ。

「アルバイト希望の方ですか?」
「は、はい」
「それはそれは、ようこそいらっしゃいました」

女性の態度が柔らかくなる。
伴って、少年も少し緊張を解いた。

「早速、面談を行いたいのですが、よろしいですか?」
「え…あ、はい」
「では、奥の面談室へどうぞ」

少年は受付の女性に案内され、事務所の奥へと歩いていった。
面談と聞いて再び緊張が高まるが、門前払いされるよりは良いだろう。



「人事部長、アルバイト希望の方です。さ、お入りください」
「し、失礼します」

少年は、小さな部屋に通された。
四角い机を挟んだ向かい側には、赤いローブで顔以外を隠した女性が座っている。
恐らく彼女が人事部長なのだろう。
彼女も褐色の肌に赤い瞳の、思わず見とれてしまいそうな綺麗な女性だ。
受付の女性は退室し、少年とその女性以外、人影はない。

「こんにちは。ようこそいらっしゃいました」
「こ、こんにちは」

人事部長が話しかける。
見た目よりも幼い、猫なで声に近い声だ。

「ふむ…あ、どうぞお掛けください」
「は、はい、失礼します」

少年が座る間、人事部長は少年の身体を品定めするように眺めた。

「いくつか、質問をさせていただきますね」
「はい」

そして人事部長はいくつかの問いかけを放つ。

「まず、体力はある方だと思いますか?」
「えっと、運動は、それなりに出来ますし…」
「なるほど。はい、ありがとうございます」

「次に…貴方は、閉所恐怖症ではありませんか?」
「閉所…?」
「えっと…狭いところとかにずっと入っていても大丈夫ですか?」
「あっ、大丈夫です」

「貴方は、このバイトを内緒にするこ
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