「私、思うのよ」
魔界の奥地、魔王城の一角。
一人のリリムが自室の椅子に腰かけ、侍従のサキュバス二人に話しかけていた。
「私もそろそろ、素敵な旦那様を見つける時期かなって」
「それは良いお考えだと思いますね」
彼女はリリムの中でも年若い方だ。
既に幾人もの姉が伴侶を見つけており、彼女より年下の妹の中にも既婚者はいる。
そんな中、魔王城に籠りっきりの彼女はまだ独り身だった。
「お嬢様は、どのようなタイプの男性がお好みですか?」
「そうねえ…やっぱり私は、可愛い小さな男の子がいいかな♪」
「なかなか良い趣味ですねえ…」
「そういえば、ご用件はその事についてですか?」
「ええ、そうよ」
「では、我々がお嬢様のお眼鏡に叶う方を探して来ればよろしいのですか?」
「あっ、そうじゃないの。それは自分で探しに行くわ」
「えっ」
侍従のサキュバス達は、このリリムが外出するところを見たことはない。
「だ、大丈夫なのですか?」
「何よ、失礼ね。うんと小さい頃は、外に出たこともあるわよ? 人間界にもね」
「そ、それは失礼致しました」
もちろん、姉の付き添いであった。
一人で行くのは初めてだが、楽観的な様子である。
「ビビッと来た子が良いわねえ。この子の精液欲しいっていう感じの」
「ちょ…直感で決めるのですか? もっと様々に…」
「いいのよ。リリムの直感よ? 外れることはないわ」
「そ…そうですね。出過ぎた注進でした…」
実際、その直感に従って伴侶を得た姉たちも多い。
リリムの、魔王の娘としての直感に従うのは、あれこれ考えるよりむしろ有用だ。
「では…我々は何を?」
「出かける前にね、準備を手伝ってほしいのよ」
「ご支度ですか? では、お召し物を…」
「ああ違う違う。そういう支度じゃないの」
「はい?」
リリムは椅子から立ち上がった。
そして、思索にふけるように部屋を歩き始める。
「やっぱり魔物たるもの、快楽の追及は大事でしょ?」
「ええ、それは大事ですね」
「で、私は知っての通り処女なの。旦那様を捕まえたら、初体験になるのよね」
「そうなりますね」
「初体験となれば、最高の快楽を得たいって思うのは当然じゃない?」
「もちろんです」
侍従のサキュバス達も、籠り切りのリリムに仕えているので未婚のままだ。
もちろん未経験であるが、二人の場合は激しい自慰をしたせいで膜はもうない。
「旦那様も小さな男の子から選ぶなら、その子にとっても初体験になるでしょ?」
「ええ。お互いに、ですね」
「じゃあ、その旦那様にも最高の快楽を味わって欲しいじゃない?」
「それはそうです」
その返答を聞き、リリムは立ち止まった。
「だから考えたの。お互いに最高の快楽を得られる初体験への流れを!」
「流れ、ですか?」
「限界まで快楽を溜め込んで、最初の一回、全力の絶頂のために!」
「溜め込む…?」
首を傾げる侍従達に、リリムはメモを手渡す。
「だから、ここに書いてあるものを準備してほしいの」
「これは…」
「この魔界の、ありとあらゆる、天然の媚薬や精力剤。あとサバト謹製の薬もね」
「…かなりの量ですよ」
「魔王の娘たる私の名前を出せば大丈夫でしょ」
実際、この量を集められるだけの人脈は普通の魔物にはないだろう。
しかしリリムともなれば事は簡単だ。
「お願いね。明日までに」
「はい…………えぇっ、明日までですか!?」
「ええ。早くしないと旦那様を探しに行けないわ」
「す、全て揃ってからでないと出かけられませんか?」
「だって、その気になれば多分、その日のうちに見つけてくるわよ?」
「そ…そう、です、ね…」
いくらなんでも、二人だと明日までに集めるには多すぎる。
何人の手を借りねばならないだろうか。
「ああ、もちろん他の子たちにも協力してもらっていいから」
「は、はい」
「…そうだ、これを使ってどうするのかも伝えておかないとね。予定では…」
・
・
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侍従達は侍従仲間や魔王城に居住する魔物兵士にも協力を要請し、駆けずり回った。
おかげでなんとか、夜が明けるまでには材料を調達することができた。
「うん、全部揃ってるわね。ご苦労様」
「はぁ…はぁ…」
予定通りの材料が揃っていることを確認し、リリムは満足そうに頷く。
「それじゃあ行ってくるわ。夜までには帰ると思うけど」
「は、はい。行ってらっしゃいませ…」
侍従たちに見送られ、リリムは何十年ぶりかに魔王城を後にした。
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・
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リリムの言った通り、その日のうちに彼女は帰ってきた。
「ただいま」
「お、お帰りなさいませ。本当に、随分お早かったですね」
「人間界までひとっ飛びよ。滅茶苦茶ビビッてきたもん。すぐに」
リリムの後ろには、黒いマントを着せら
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