翌日、クレイは何者かが自室のドアをノックする音で目が覚めた。
「…………誰…?」
「レダです。朝のご挨拶と伝達に参りました」
「あ、ありがとう。入って良いよ」
「失礼します」
部屋に入ってきたレダは、マントの下に灰色のベストと膝丈までのスカートを着用していた。
ベストの前からはビキニが見えている。
「本日は朝食後、フェイラン様の依頼で街に向かいます。つきましてはクレイ様にも御同行を」
「街に?」
「はい。街の商人に渡したい物があるとの事で。…朝食のご用意は出来ております、お早めに」
「分かりました」
朝食はホットドッグだった。
「本日は急いで出発しますので、軽めの物を。フェイラン様は私室で調べ物があるとの事です」
「うん、分かったよ」
口に入れた途端、マスタードの効いたホットドッグにクレイの舌が刺激された。
(結構マスタード効いてる…)
「では私は出立のご用意をして参ります。玄関でお待ち下さい」
(あ、やっぱり食べるの早い)
丸飲みしているのではないかと思う程の早さで朝食を食べ終えたレダは、自室へ向かった。
「お待たせいたしました」
「う、ううん。全然待ってないよ。(本当に十秒ぐらいしか…)」
レダは、スカーフを被せた小振りなカゴを持っていた。
「何が入ってるの?」
「見ますか?」
「うん」
レダがスカーフを取ると、そこには…
真っ白でやや大きめの角があった。
「角?…あれ、でもどこかで…」
思い当たる節はすぐに見つかった。
「レダさん…行く前にアルカ島を覗いてもいい?」
「構いませんよ」
クレイは単身、アルカ島へと向かった。
「あ、クレイ君!」
「フィアリアさん…………その頭…」
クレイを出迎えたのはフィアリアだった。
しかし、ユニコーンである彼女の最大の特徴…額の角は無かった。
まるで元々そこに無かったかのように、綺麗に無くなっている。
「これ?…夕べフェイランさんが来てね、持ってっちゃったの。もちろん許可は出したけど」
「そんなに綺麗に取れるんですか?…痛くないの?」
「なかなか根元からこんなに綺麗に取れないわね。全然痛くなかったけど」
「そういう物なんですか?」
フィアリアは首を傾げた。
「ううん、普通はこんなにされたら結構痛いはずなんだけど…何にも感じなかったわ」
「フェイランさんが何かしたのかな…」
「多分ね。…で、今日は何しに来てくれたの?朝早くから愛を育んでくれるの?」
「あ、あの…すみません、これからお使いで街に行かなくちゃならなくて」
「お使い?…………なるほどね、この角を売りに行くって事かしら」
「はい、多分…」
すると、フィアリアはクレイを抱きしめ、唇を重ねた。
「んっ…」
「…………気を付けて行って来てね、クレイ君。戻ってきたら顔を見せて」
「はい…行ってきます」
クレイはアルカ島を後にした。
「…………帰ってきたら…また交わりましょうね、クレイ君…」
「ごめんなさいレダさん、待ちました?」
「いえ、構いませんよ。では…参りましょう」
門の外に出ると、そこには手押し車があった。
荷台の部分は、人間一人が充分入れる広さと、座り心地は悪くなさそうなシートがあった。
「こ、これは…?」
「これで向かいます。クレイ様は乗り込んでください」
「え?…は、はい」
クレイが乗り込むと、レダは手押し車の取っ手部分を持った。
「しっかり捕まっていてくださいね、クレイ様」
「わ、分かりました」
次の瞬間、手押し車はヴァルハラの正面から姿を消していた。
(速…ひゃぁぁぁぁぁっ!?)
「十分程で着きますから」
並の馬車の倍は出ているであろうスピードは、クレイの意識を混濁させていった…
「…………きて下さい………レイ様…」
「う、うぅん…」
「起きて下さいませ、クレイ様」
クレイが目を覚ますと、すぐそこに町が見えており、レダはスピードを緩めていた。
「ここからは歩いて参りましょう。流石に目立ちますので」
「だ、だよね…(恥ずかしすぎるし…)」
「治安は良好とは言えない町ですので、奴隷商に目を付けられかねませんから」
(理由が物騒すぎるよ!)
二人は手押し車を町の門の外へと置き、町へと入っていく。
「レダさん、あれ盗まれたりしないの?治安良くはないんでしょ?」
「フェイラン様によって結界が張られております。触れたら召されますから大丈夫です」
(大丈夫なの!?…帰ってきたら人が死んでるって嫌すぎるよ!?)
二人は裏路地へと入っていった。
「あ、危なそうなんですけど…」
「私たちの会う商人はあまり表には出られませんから」
「…犯罪とか?」
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