第一章・第九話 Daily4:ゴブリン&ホブゴブリン/後編 (強鬼)

ヴァルハラへ帰ると、レダが出迎えた。

「お帰りなさいませ、フェイラン様」
「あぁ、ただいま」

レダは後ろの荷台を見やった。

そこには、未だに気絶しているリィナ達と、心労で眠ってしまったティノとクレイが乗っている。


「このゴブリン達は…?」
「…ああ、そう言えば説明は後でするって出て行ったんだったな」

フェイランはレダに、これまでの事を話した。

ジルベールから聞いた成りすましの内容、クレイ救出の内容、ホブゴブリンを見つけた事。

「ではこの子達も…アルカ島に加えるつもりですか?」
「あぁ。折角手に入れたのだしな。希少なホブゴブリンも見つけたことだし…」

フェイランは後ろの荷台を横目で振り返り、誰も起きていないことを確認した。

「…もちろんこれからお仕置きだから、本人達の前では言わないがね」
「目一杯怖がらせなくてはなりませんからね♪」

事も無げに物騒な会話をする二人。
レダもとっくにフェイランの手口や嗜好は熟知していた。















リィナやティノ達は調教部屋に運び込まれた。

まだ目覚めない彼女らを一旦放置し、フェイランはクレイの部屋を訪ねた。


レダに運び込まれたクレイは、まだベッドで眠っていた。

「…起きなさい、クレイ」

悪戯の方法を108個ほど考えたフェイランだが、結局は普通に声をかけて起こした。

流石にこれ以上疲れさせると彼の身が保たないと判断したのだろう。


「んっ…ふぁい…………って、えぇぇっ!?」

寝ぼけ眼で目を覚ましたクレイは、フェイランを見るなりひっくり返った。

「な、な。なんでフェイランさんが…!? それにここ…ボクの部屋…?」
「レダが運んでくれたぞ」
「あ、なるほど、寝ちゃって…って、それよりもどうしてフェイランさんが…」
「気分だ。これからあのゴブリン達の仕置きを始めるのでね」

その言葉を聞き、クレイがしゅんと肩を落とす。

「やっぱり…ですか…」
「安心しなさい、ラーナやリノンほど痛々しいモノじゃないさ」
「…はい」
「あ、それとフルーツは食料庫にちゃんと仕舞っておいたから安心しなさい」
「そう、ですか。良かったです…」

クレイは自分の役目が果たせた気がして、ほっと胸をなで下ろした。


「さぁ、来なさい。もちろん調教部屋だ」
「うっ…はぁい…」

その笑顔はすぐに強張ったが、今更どうしようもないので素直に従った。



調教部屋では、目覚めたティノ達をレダが拘束していた。

それぞれの手首には頑丈そうな鉄枷が後ろ手でつけられ、六人の鉄枷は鎖で繋がれている。


「目隠しも致しますか?」
「いや、そのままでいい」

ティノ達はフェイランを見るなり震え上がった。

「あ…うあぁ…」
「ゆ、許して…許してよぉ…」
「こ…これから…何するの…!?」

「決まっているだろう?」

フェイランはニッコリと笑みを浮かべて言った。

「処刑タイムだよ」

普通なら爽やかな笑顔と形容してもいい笑顔だが、今は恐怖を呼び起こすだけだった。


クレイが慌てて耳打ちする。

「…しょ、処刑って…」
「もちろん脅し文句だ。…私の手口にそろそろ慣れなさい」

フェイランが耳打ちで返答する頃、ティノ達の顔は真っ青になっていた。


「う、うそ…」
「しょ…処刑…!?」
「やだ…やだやだ…っ!」
「そんな…わたし…私、まだ…」
「え? 私達…殺され…る…の…?」
「あ…あぁぁ…うあぁぁぁぁぁぁっ…!」

恐怖のあまりジェーンは床に突っ伏し、他の者達も呆然としたり、涙を流して首を振っている。



「来なさい」

情け容赦のない口調でそう言われ、ティノ達は震える足でフェイランの後を追い、降りていく。

「許して…許してください…」
「なんでも…もうなんでもしますから…」
「に、二度と人を襲ったりしません…! だから…」
「やめてください…お願いします…お願いしますぅぅ…」

ゴブリン達が悲痛に許しを乞う声だけが、石造りの階段に響いていた。



地下室の最初の部屋には、ラーナとリノンへの懲罰で使用した水車がそのまま残されていた。


だがよく見ると、水車には所々紅い染みが作られていた。

一団の後ろを歩くクレイが、すぐ前にいるレダに小声で尋ねる。

「あれって…」
「演出の一環です」

それを聞くとクレイは、ゴブリン達に気付かれないように胸を撫で下ろした。


そんな事とは知らないゴブリン達は、水車を見て更に震え上がる。

「あ、あれで…誰かを…」
「じゃぁ…ここで…だ、誰かが…」
「わ…私達も…これから…こんなふうに…!?」
「やだ…そんな…やだよぉ…」

立っているのさえ不思議なほどに震えた足で、ゴブリン達は次の部屋へと向かう。



そこにはやはりラーナ達への懲罰
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