「はぁ…」
ぶらりと玉座の間へ赴いたクレイは、フェイランが溜息をついているのを見かけた。
「どうしたんですか、フェイランさん?」
「ん…クレイか」
「…レイシアさんに搾られすぎたんですか?」
「いや、あれぐらいじゃ“搾られ過ぎた”とは言わん」
(あの量で!?)
一呼吸おいて、フェイランは話し始めた。
「…実はな、スタッフの増員がなかなか上手くいかんのだ」
「スタッフ…って、僕やレダさんみたいな?」
「ああ。もっと言うなれば君のようなショタ人員だな」
「そういえば、僕以外はここに来てませんね…」
フェイランは肩を落とすように頷いた。
「奴隷として売りに出された者を買おうとしたが、途中で魔物の襲撃に遭い強奪された」
「強奪、ですか…」
「今頃は魔王城の上級デュラハンの性奴隷にでもなっているだろう。惜しい事をした…」
(ここに来てもあんまり変わらないような…)
「他にもいる。ある日訪れた森の中でお菓子の家があってな…」
「お菓子の家!?」
「ああ、あるんだから仕方ない。中にはショタとロリ二人が暮らしていた」
「で、その人たちを勧誘したんですか?」
「いや、あまりにも仲睦まじく暮らしていたから断念した」
「…………フェイランさんが諦めたんですか?」
「スタッフは強奪したり誘拐したりしない事にしている。家族がいるなら尚更だ」
「僕は孤児院にいたんですけど、それは家族にあたるんじゃないですか?」
「家族と言うかもしれんが、一応は自分の意思だろう。誘拐したわけでもない」
「そうですよね…」
するとフェイランは一転してにこやかな表情を浮かべた。
「だが喜びなさい。一週間後に新しいスタッフが来る予定だからな!」
「そうなんですか!?」
「奴隷として売り出されかけたのを私自ら買い取った。今回は危険地帯を通らせはせん」
「へぇー、どんな子なんだろう? 楽しみだなぁ…」
「ふふっ…いい“遊び相手”になってくれるはずさ」
フェイランの笑顔と共に放たれた台詞に、クレイは一抹の不安を感じた。
フェイランは表情を戻し、クレイの方を見据えた。
「さて、丁度来てくれたことだし…久々に任務を与えよう」
「えっ、これから任務ですか!?」
「…フィアリア達と約束しているのか?」
「あ、はい…これから正午まで…」
「なら平気だ。夕飯までに任務を終わればいい」
クレイは恐る恐る尋ねた。
「…ちなみに…今回の対象は…?」
フェイランは口元に笑みを浮かべて言い放った。
「…………ドラゴンだ」
「謹んで辞退させて頂きますっ!」
クレイは青ざめて逃げ出した。
「…………あの青ざめた顔、写真機で撮っておけばよかったな…可愛いかったのに」
残されたフェイランは、ポツリと危険発言を放っていた。
・
・
・
フィアリア達と交わった後、クレイは昼食を摂る。
しかし、そこにいつもいるはずのフェイランの姿はなかった。
クレイは同席しているレダに尋ねた。
「あれ…? フェイランさんは一緒に食べないんですか?」
「フェイラン様は先程ミズガルズの図書館にお行きになられました。調べたい事があると…」
「図書館に? いつもお昼御飯は同じ時間に食べるのに…」
「確か『私の記憶と仮定に確証を持ちたい』と仰っていましたが…私にもさっぱり」
「そうですか…」
「他にもお買い物をされるようですし、昼食も向こうでお摂りになるようです」
二人が昼食を食べ終わった後、フェイランが荷物を携えて帰ってきた。
「今帰ったぞ」
「お帰りなさいませ、フェイラン様」
レダが門の前で出迎える。
「クレイの玉座の間に呼んでくれ。昼食は済んだな?」
「はい」
「…それと、ユウリから食材と税の納付分を貰ってきた。こっちは倉庫に入れてくれ」
「かしこまりました。しかしすみません、わざわざフェイラン様が…」
「ついでだ、ついで」
フェイランは荷物をレダに渡し、共にヴァルハラへと戻っていった。
・
・
・
玉座の間へ呼び出されたクレイは、またしても青ざめていた。
「クレイ」
「はひっ!?」
クレイは突然フェイランに名前を呼ばれ、間の抜けた返事をしてしまう。
\パシャリ/
「…へ?」
「よし、いい表情だったぞ…」
フェイランの手には黒い箱状の物体が握られており、先ほどのクレイの表情を撮っていた。
「あの、それは…?」
「写真機…カメラだ。撮った写真は魔力で複製・転写が出来る優れものだぞ」
「レダさんの言ってたお買い物って、それですか?」
「ああ」
「じゃぁ調べものっていうのは…?」
「それはクレイに今ここで話しておく必要はない。いずれ分かる」
すると、クレイはまた表情を曇らせた。
「やっぱり…
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