もし世界が擬人化したら、どうしようもない“あばずれ女”だろう。
希望という下着を見せて、数秒後に地獄へ叩き落とす
くそったれな悪女。
おれの人生は、そんな女の手のひらの上のような人生だった。
物心着いた頃から顔にアザが絶えなかった。
俺はいつでも親父のストレス解消用サンドバッグで、殴る蹴るは当たり前、家である7階立てのマンションの屋上から宙ぶらりんにされたことや、一週間食パン一斤で生かされたこともあった。
みかねた担任の先生が、児童保護所に俺を連れていってくれた小学五年生から、俺の“人生”が始まった。と言っていい。
そこでの生活は楽じゃあなかったが、(一言で表すとマイルドな刑務所みたいな生活。)まああそこの扱いよりはマシだった。
なにより、保護所の職員、“先生”に会えたことが、俺の一番の幸福だった。
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「えいっ!」
ジャンプするたびに跳ねる艶々とした黒髪。
くりくりと元気そうに光る黒い瞳に、シャープな顔。
ああなんか揺れてんな大きいな明らかに年相応じゃねえな、という男の夢を乗せている美人、という顔つきだが話してみると可愛い系の女の子
ーーーーーーが、餅つきでもつくかのようにアオオニを自分の生成したカマキリの鎌(E魔界銀のつけづめ)
で切り刻んでいる。
「たくましくなったなあ…」
最近流行りの戦う系女の子、もとい黒谷 那知ちゃんのエグい戦闘シーンを見ながらため息をつく。
最初は、
「お仕事お手伝いします!」
から始まって、
魔王特性印魔弾を取りに行ってくれる所から、
お弁当を“仕事場所”にもってくれるようになって、
それから撃ち漏らした魔物をお手製の罠で止めてくれるようになって、
気づいたら魔物を仕留めてて、
最後にはこうして自分一人で魔物を蹂躙できるようになった。
……ところで皆、サラミスライス作戦って知ってる?
あまりにも計画的な犯行に、黒幕の影を見る。
彼女が仕留めてのびているアオオニに一発ぶちこんで俺の仕事は終わり。
ひょっとしなくても女に戦わせて大金もらっているクズである。
何とかしなくては
と、ものすごい笑顔で頭を出してくる彼女を優しくなでつつ、重い口を開いた。
「…ねえ、那知ちゃん。」
「はい!なんですか井口さん!」
「やっぱり危ないよ。こんな仕事より安全で友達と一緒に働けるバイトの方がいいよ。俺が探したげるからさ、だから…
お手伝い、今日でおしまいにしない?」
ぴきっ
あ、やべ
空気凍りついた。
那知ちゃんのひまわりのような笑顔が一瞬でゲリラ豪雨寸前のような泣き顔に変わる。
「わたしは…いらないですか…お邪魔でしたか…う、う…」
今にも落ちそうな涙の滴を見て慌てる姿を隠せない。
……が、言わなければならない。大人として、いたいけな女子がこんな仕事をしてはならないという事を!
「私…助けてくれた井口さんのお手伝いがしたくて…」
いつ魔物に命を奪われるかわからない恐怖と、どうしようもない人間の悪意を、
「魔物娘になった皆さんの…笑顔を見たくて…」
ああああああああああああ言うんだあああああ俺ええええこの世界の汚さはその年で見るものじゃあないと!
君はもっと綺麗なところで幸せに生活するべきだと!
言え!言え!井口冬瀬!
「なにより…ひっく…井口さんと一緒にいたくて…」
あっ(膝を屈する)
「…次は…三日後だから…一緒に頑張ろう…ね…」
「はい!!!」
彼女の笑顔にただ俺は複雑な笑みを返すことしかできず、女の涙というファイナルウェポンに屈しこの時点で警告することができなかった俺を、
三日後の俺は後々、死ぬまで恨むことになる。
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那知ちゃんが眠った後、そっとリビングに向かい“黒幕”
を電話で呼ぶ。
「どういうつもりだ。魔王。
いたいけな高校生戦場に送りつけてなにがしたい。」
電話越しに甘ったるい声が聞こえてくる。当然、電話越しでも特性の耳栓ははずさない。
声を聞くだけでインキュバスになるなんてごめんだ。
『よく言うわ。彼女が戦っている間ずーーーっと銃の安全装置を外してたくせに。』
「当然だ。彼女に何があったらどうする。」
『すでに肉弾戦では彼女はあなたをとうに超えている。
センスがあるのよ。彼女には。
それに…』
「それに?」
『彼女はあなたのお嫁さん候補だから
#9829;
#65039;』
「18歳と28歳。どう考えても犯罪だろうが。」
『それを言うなら1800歳のバフォメットと20歳の男の子が結婚することは犯罪かしら?』
「ーーっ」
思ってもない反撃に少し窮する。
『あなたの故郷を奪ったのは謝るわ。人間として
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