たった二人っきりのPKO(アリサ外伝)

オレは今、何処にいる?


見渡す限りの青い空。
輝く太陽。
そして踏むのは砂、砂、砂、砂、砂。
『さて、いぐちに、もんだいです。
わたしたちは、今、どこに、いるでしょうか。』
「イッテ
#9899;見た?」
『せいかいは、あふりか、さはらさばくでした。』
「マジかよ。」

俺たち二人は
アフリカ大陸の北半分をおおう砂漠のど真ん中に取り残されていた


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いつもの通り、警視庁、取調室で来ない魔王に悪態をつけながらオレはタバコを吸っていた。
重いドアが開く音。
考えていた悪態をぶちまけようと立ち上がったが、意外な人物が入ってきた事を見て、呆然と立ち尽くす。

「アリサ!? 何でこんなところに…」
『魔王はおやすみ、今日は、わたし。』

ドアから入ってきたのは美しい女性。“リリム”である。
長い銀髪を揺らし、今日はずいぶん薄着の彼女を見てさらに驚く。

「…プールでもいくのかよ。」

白いタンクトップにミニジーンズ。大賢者にあるまじき薄着を見て顔を反らす。
パチン、と指をならして人差し指を左右に動かすアリサ。
『ちっちっちっ』
「また変なアニメ見たかお前。」
『惜しい、いぐち。』
そうして俺のゴルフケースを持ってきて呪文を詠唱した。

そして冒頭に戻る。
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「で、何すんだよ。プールは掠りもしてねえし。」
さくさくと小気味のいい音をたてながら砂漠を歩く二人。
『ぴーけーおー。』
「は?」
『いぐちの、いた組織では、人助けを、ぴーけーおーっていうって、聞いた。
わたしたちは、ぴーけーおーを、する。』
「PKO?」
国連じゃねえだろ。というツッコミをしても絶対アリサにはわからないので飲み込んで、話を続ける。

「人助けをするのはわかった。お前が“どう”するのかも大体分かる。…で、どこに向かってるんだ?」
『ちょっと、危ないところ。…あ。』

砂漠の向こうから砂塵を巻き上げてくる4つの何か。
砂を後ろに撒き散らしながら飛ぶその姿は、一つも乱れない。
それは俺たちをあっという間に囲み、上空を羽ばたきながら旋回している。
『話の、とちゅう、なのに、わいばーん、だ。』
「お前やっぱり変なゲームやってんだろ!!」

突然の急上昇から、一斉に鉤爪をたてながら急降下してくる4匹。
タイミング、コンビネーション。共に完璧な攻撃。
だがーーーーーー
『ポーズ』
ぴたり、上空を見上げた彼女がそれを言った瞬間に、ワイバーンの動きは止まる。
すかさず印魔弾をぶちこみ、翼はそのままに、空中で変化していく“彼女達”
次々と可愛い美少女になっていく。

『こんな、えろいしーん、見て、興奮しないの?』
「何て事を言うんだお前は。」

軽口をいいながら魔物娘に変えたワイバーンを転送する彼女。
『さいきん、外国でも、魔物が、増えてる。』

アリサの話によると、発展途上国を中心に魔物の目撃件数が増えているとのこと、対応できるのは魔物娘だけなので、PKOという名目で“始末”をしているとか。

『わたしも、てつだってる。…でも、きょうは、始末、だけじゃ、ない。』
そう、目的地のオアシスにたどり着いた時、轟音が鳴る。
地中から何かがせり上がってくるような、だんだんと大きくなる地震。
とてつもなくデカく、そして砂漠。
まあ、間違いなく、アイツだろう。
そっとゴルフケースをあける。

爆弾でも落ちたかと思うほどの衝撃と共に、砂漠から出てくる蠢く巨大な円柱状の物体。
サンドワームだ。

『いぐち、構えて。』
「…なあ、」

ゴルフケースはアリサからもらったものだ。中身も、
でもサンドワーム相手にこれはねえだろ。
バレットm82。
対物ライフルかよ。

「アリサ、そこはロケットランチャーとかのほうがよくなかった?」

魔物を魔物娘にするためには、全身に魔力を行き渡らすか、急所にぶちこむかの二択がある。
この場合、本体が硬い外皮の中にあるのでなるべく弾をばらまけるミニガンか、ロケットランチャーになるのだが…
『大丈夫。わたしを、信じて。』
「…わかったよ。アリサ。」

こっちに突進してくる茶色の巨体は、新幹線がそのまま突っ込んでくるような錯覚を覚えるほどだった。
その口にしっかりと照準を合わせる。

『銃だけ、アクセル。…約100年後の未来へ。』

彼女の詠唱で形が変わっていくライフル。
銃口は三つに別れ、
スコープはよりデジタル化し、
銃本体はより近未来化していく。
『わたしの、愛しい、フィクションで、ぶち抜いて。』
出来上がったのは、レールガン。
パリッ、パリッと収束していく電気エネルギー。
加速していく印魔弾。
電磁力のチャージが終わり、引き金をかちりと引く。

無音の一発。


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