転校生





「俺と、付き合ってくださいっ!!!」



夕暮れの校舎裏で響く男の声。
それは紛れもなく自分の口から発せられたもので、そして気持ちを打ち明け伝えるための言葉。
いわゆる、男女交際を求める『告白』だ。
自分でも驚くくらいに声が出た。心臓は破裂しそうなくらい高鳴り、血の巡りで顔まで熱い。
緊張で汗も吹き出ていることだろう。この瞬間はいつでも何度でも慣れることはない。
勢いよく頭を下げ、相手の顔を見ることができない俺は返答を待っていた。

相手は学校でも可愛い女の子。
それもそのはず、この世では最早知らぬ人などそんなにいないであろう『魔物娘』だ。
容姿は綺麗で、性格も一途で、男を虜にする魅力がある。
そして男性を愛する特性から、一部では彼氏に飢えている印象まであるくらいに。
付き合っている相手のいない魔物娘からすれば、告白してくる男はとても嬉しいことだろう。
すると、相手の女子は・・・





「・・・ごめんなさい。貴方とは付き合えないわ」





俺の告白に拒否の意思を示した。





・―・―・―・―・





「それで、『今回も』ダメだったと」

「・・・・・・・・・おう」


翌朝の教室。ホームルーム前。
自分の机に顔を突っ伏している俺の話を聞いてくれた友人、天村雲雀は静かに結果を予測して話してきた。
昨日のショックが抜けきれていない俺は、やや不機嫌に一言返す。
すでに教室には生徒が集まっており、がやがやと話し声が騒がしい。
その俺の一言は注意していないと聞き逃してしまいそうな声量だった。
しかし、そんな態度でも天村はちゃんと返事をしてくれた。


「お前も懲りねぇよなぁ・・・これで通算何回目の失恋だ?」

「あー、確かもう50回目だっけ?あれじゃん。目標達成してんじゃん」

「まだ48回目だよっ!!それに目標にはしてねぇ!!」


横から茶々を入れてきたのはもう一人の友人、笹森成樹。
天村とは違って少しお調子者なところがあるゲーマー野郎だ。
折角真面目な天村にだけ話してたってのに。この野郎、人が気にしていることを。
・・・そうさ、フラレたのは今回が初めてじゃない。
この世に生まれて16年。俺は『48回』の告白をしてきて、そして見事に全部玉砕しているのさ。
俺が告白する女子はみんな、『他に好きな人がいたり』、『今は恋愛とか興味なかったり』、『運命の出会いを待っていたり』・・・と様々な理由で、人間・魔物娘合わせて全員駄目だった。
でも、48回も回数を重ねて振られているのは、俺にも原因がある・・・と思うけど。


「でもさぁ、ガラシン。その『惚れっぽい』性格。いい加減どうにかした方がいいんじゃね?」

「仕方ないだろ!好きなもんは好きなんだからよ!!」


そう、俺は惚れっぽいんだ。女性をすぐに好きになりすぎるところがある。
勿論誰だっていいとかそんなんじゃない。
軽い男と勘違いされやすいが、俺は全部本気で全部大真面目だ。
ただ・・・その女の子のいい笑顔を見ると、胸を打たれちまうだけだ。
あの顔をもう一度、俺の前で見せて欲しいと思っちまうだけなんだ。


「あー、まあ気持ちは分かる。気持ちに嘘はつけねぇよな」

「ひばりんには生徒会長いるもんなー」

「だっ、あ、あれは違うって言ってんだろっ・・・」

「天村が羨ましいぜ全く・・・あの会長さんといつも一緒にいるんだからよ」


ちなみに彼女いない歴=年齢の俺とは違い、天村には気になる異性がいる。
・・・付き合ってはいないそうだけど、時間の問題だろう。
だってその会長に告白したとき、断られた理由が「私雲雀君専用だから。ごめんなさいね」だったからな。
天村は気付いていない・・・いや気付かないようにしているみたいだけど、ほぼ周知の事実である。


「『幼馴染との恋、ようやく実る』って見出し、いつ出したらいい?」

「止めろ。全力で止めてくれ」

「・・・でも〜?本当は〜?」

「本当に止めろっつてんだろ成樹」ギリギリギリギリ

「いだだだだだ止めてひばりん俺のライフはもう0よ!!」

「ギブ早いなオイ」


俺は新聞部だから、変わったことがあれば新聞記事として広報することができる。
放課後は愛用のカメラを持ってスクープを探しに行くのが日課だ。
学校一の人気者といってもいい生徒会長の話題は、一面を飾るには十分な話題。
生徒会長ファンクラブからは刺されそうだけど、対象は間違いなくこの目の前にいる幸せ者だろうから気にしない。


「まあ、そんなことよりもよ。お前ら聞いたか?今日うちのクラスにも転校生来るってよ?」

「転校生?こんな時期にまた珍しいな」

「しかも超可愛いってよ!いやー楽しみだ!」

「可愛い転校生か・・・それは是非取材してみたいもんだ」

「・・・
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