魔物には決まった特技がある者もいる。
それは戦闘だったり、特殊な能力だったり。
人間と同じように家事ができたり、商才があったり、様々だ。
性格や容姿は違っても、根本的な部分は同じだったりする。
だから、『この魔物はこれができる』と決まった印象で考える人が多いんだろうけど。
皆がみんな同じじゃないってこと。そんな当然なことを忘れやすいんだよね。
・〜ある日の朝〜
「タムタム、朝だよ」
「んぅ・・・兄やん、お早うさん・・・」
俺が声をかけるとすぐに目を覚まして体を起こそうとしているが、のそのそとした動きだ。
まだ眠いようで、目蓋の重そうな黒い目元をこしこしとこすっている。
髪もボサボサ。まさにザ・寝起きという姿だ。
「タムタムは起こすのに手間取らなくて助かるよ」
「ウチはできる子やしね、兄やん」
この妹は、刑部狸。
狸耳としましま尻尾がチャームポイントな、ちょっぴり自信家の刑部狸だ。
うちの妹達の中では年齢が下の方ではあるんだが、中々のしっかり者である。
どれくらいかと言えば、下の妹達のまとめ役にもなっているほどだ。
俺が考える『朝に手がかからない妹ランキング』では堂々の2位である。
ちなみに1位は自分で起きるコルネッタ。
勝手に順位付けをしたけど、あくまで『朝に』であることは言うまでもない。
「うんうん。手がそこまでかからない子に育ってくれて、俺は嬉しいよ」
「そこまでって・・・別にウチ迷惑かけてないし」
「ん?あぁ、言い方少し悪かったかもな。ゴメンよ」
「それでいいんやし(`・∀・´)」
両手をわざわざ腰に当てて胸を張るタムタム。
どうでも良いことを威張っているように見える風ではあるが、妹達ではただの愛嬌のある仕草にしかならない。
流石である。何というか流石である。
「でも別にそんな一言一言細かいとこ取り上げなくてもいいと思うんだけどなぁ」
「兄やんに迷惑かけたことないウチが、そうあるように言われたからだし。謝罪を要求するんやし。」
「ははー、申し訳ございませんでしたー」
「うむ。それでいいんやし(`‐∀‐´)」
完全に平謝りだけど、満足そうだから別にいいよね。
本気謝りしても、引かれるだけだし。
背伸びがしたいお年頃ってやつなのかな。
「それよりも兄やん。何か忘れてるんじゃない?」
「ん。そうだな」
ナデナデ
「んへぅ〜
#9829;」
タムタムは毎朝ちゃんと起きるご褒美に、と向こうが理由をつけて頭を撫でることを要求している。
・・・ちゃんと起きるんだったら、コルネッタみたいに自力で起きてくれるのが一番嬉しいんだけどね。
頭を撫でられるのが好きなようで、目を細めて笑い、もっふもふの尻尾が左右に揺れる。
やっぱりまだまだ子供だよなぁ・・・
しかし、俺の方も最早日課になりつつあるので文句は言えない。
むしろ文句なんてあろうはずがない。
まったく、妹の頭ナデナデは最高だぜ!!とさえ言ってもいい。
実際には絶対言わないけども。
「よし、それじゃそろそろ行くからね。タムタムも顔洗ってきな」
「うん。いってらっしゃいやし」
「おう」
すんなり離れてくれるのはありがたいけど、何か拍子抜けしちゃうよなぁ。
手間取ることに慣れてしまった自分が怖い。
近すぎる妹には自制することを。離れている妹にはもっと甘えてもいいことを。
両方求めちゃうってのは、やっぱり贅沢なんだろうなぁ・・・
(本当はもっと一緒にいたいけど・・・兄やんが大変なの分かってるからやし。
兄やんが撫でてくれるだけで・・・うちは嬉しいんやし
#9829;)
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・〜ある日の密告〜
「兄やん兄やん、今日ってばアレの日やし」
「ん?あぁ、もうそんな時期か・・・」
俺が家計簿と財布を見比べている最中。
タムタムから声をかけられた。
毎度のことながら説明すると、タムタムには家の金銭管理を手伝ってもらっている。
刑部狸は元々商売を得意とする種族。
だから金銭管理はお手の物。うちのタムタムもそれは同じなようで。
普段は俺がつけてはいるが、それでも抜けがある。
だからこうやって二人でつけることがある、ということだ。
「それじゃ、今回も頼むよ」
「はい!なんやし」
その抜け漏れ調整や『あること』で、タムタムは非常に手助けしてくれている。
その『あること』とは・・・
「まず、フルー姉やんからやし。
この前、街で新しいぬいぐるみとクッション買ってたんやし。計2点やし。
ホルン姉やんは油揚げ、バレス姉やんは遊び道具、アコ姉やんは本
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