「僕がまだ9歳のとき。
僕はこんなうわさを聞いたんだ。
さいきん近くの森でわるさをする人をやっつけたっていう強い旅人さんがいるって。
だから、どうしても僕はその人に会ってみたかったんだ。
その人がいるっている森に、自分の剣をもって、走っていったんだ」
・1日目
「ねぇ、あなたがうわさの旅人さん?」
む、君は誰だい?
「僕はあなたのうわさを聞いてここまで来たんだ!強い旅人さんがいるって!」
そうか、それは光栄だな。
それで、私に何か用かな?
「僕と勝負してよ!」
何?
「勝負だよ!剣の勝負!旅人さん強いんでしょ?戦ってみたいんだ!」
ふむ、こんな小さい子と戦うのは私も気が引けるのだがな。
「バカにしないでよ!!僕はまだ小さいけど、そのうちたいりくでいちばん強い剣士になるんだから!!!」
ほう、それは何とも頼もしいな。
失礼したね。
「それに、これでも村じゃけっこう強いほうなんだよ!旅人さんより強いかもよ!?」
私より強いか・・・ふむ。
・・・それでは、お詫びに相手をしてあげよう。
「ホント!?よーし!それじゃ行くよ!」
さて、君の腕前を見せてもらおうか。
・・・・・ ・・・・・
「うぅ・・・」
ふふっ。
やっぱりまだまだだな。
私の勝ちだ。
「ま、まだ負けてないよ!立てるし、剣ももてる!」
でももうボロボロじゃないか。
剣を杖の代わりにして立っているのがやっとだろう?
「でも!」
それに日も暮れてきてしまった。
日が沈んだら村に帰れなくなってしまうんじゃないかい?
親も心配するだろう。
もしかすると魔物に襲われてしまうかもしれないぞ?
「それはヤだけど・・・僕どうしても旅人さんに勝ちたいよ!」
・・・仕方がないな。
それでは、明日にしよう。
「え?」
明日、ここにまたおいで。
もう一度だけ、相手をしてあげよう。
「ホント?待っててくれるの?」
ああ、そうだ。
「嘘つかない?」
嘘じゃないとも。私は嘘が嫌いでね。
約束しよう。
私は明日、ここにいる。
「約束だよ!絶対だからね!」
ああ、それじゃ気をつけて帰るんだよ。
「うん!」
あれだけフラフラしてたのに、走って帰るか・・・
全く、子供は元気だな。
・2日目
「旅人さん!来たよ!」
やあ、待っていたよ。
ずいぶん早いね。朝に来るなんて。
昨日の怪我は大丈夫かい?
「あんなのへっちゃらだよ!僕は強いんだから!」
そうだったね。
それじゃ、始めようか。
・・・・・ ・・・・・
「うぐぐ・・・」
驚いたな。
昨日より筋がいい。
でもやっぱり私の勝ちだ。
「ま、まだ・・・」
地面にお腹をつけているのに、戦えないだろう。
そのまま少し休んでなさい。
「うぅ・・・負けちゃった・・・」
昨日よりも素直になったな。
それに少し腕もあがっていた。
何かあったのか?
「お父さんに、少し教わったんだ。お父さんも強いんだよ!」
へぇ、そうなのか。
一度手合わせしてみたいものだな。
「ねえ、僕を弟子にしてよ!」
何だって?君を弟子に?
「旅人さんみたいに強くなりたいんだ!おねがい!弟子にして!」
強いお父さんがいるなら、そのお父さんに教わればいいだろう?
私じゃなくてもいいじゃないか。
「お父さん、忙しいから・・・あまりめいわくかけられないし・・・」
それに私は弟子を取らないんだ。
今は一人旅をしたいからね。
「おねがいしますっ!!!」
・・・参ったな。
「おねがいします・・・!!!」
・・・。
・・・やっぱり私は弟子は取らない。
「・・・っ!!うぅ・・・」シュン
だが、相手はしてあげよう。
「えっ・・・」
私はしばらくここにいるよ。
君がここに来るというなら、相手をしてあげる。
それでどうだ?
「ここに、いてくれるの・・・?僕の剣の相手、してくれるの!?」
そういうことだな。
でも絶対に手は抜かない。剣士としての礼儀だからな。
まあ君がそれで嫌なら、私はまた旅に出るが・・・
「行くよ!ぜっっっったいに行く!!!毎日ここに来るからね!!」
そうか。
では待っているよ。
でも今日はもう帰りなさい。
しっかり休むことも大事だから。
「分かった!ありがとう!・・・あ、でも」
どうかしたかな?
「う、動けるまでもう少し待って・・・」
・・・ふふっ。
・3日目
「旅人さん!今日もよろしくおねがいします!」ペコッ
ああ。
随分礼儀正しくなったね。
「お父さんに話したら、ちゃんとあいさつをしなさいって!」
そうか。
確かに挨拶は大事だな。剣士として、最低限の礼儀だ。
いいお父さんじゃないか。
「
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