第十四章† 駆ける糸口†

火山とは、それこそ永き歴史と自然現象が
重なることによって生み出される偉大なる産物である。
人間よりも自然体に近い魔物…特にサラマンダーなどの
火属性・耐性の強い魔物にとっては魔界と同じかそれ以上に
心地の良い場所かもしれない。


だからこそ、人間であるザーンは疑問に思っていた。
なぜ…人間の軍であるマスカーがあの火山に陣を敷いているのか…。
領土内に魔物を住み着かすわけにもいかないため、占拠したのはまだわかる。
…しかしなんと彼らは以前住み着いていた魔王軍と同じように
その火山に巨大な陣を敷いている…これが不思議でならなかった。

人間にとって火山とはあまりにも危険なものだ。
ヴェンガデン火山自体それほどおとなしい部類の火山ではない…、
それなのになぜ?それほどあの火山を重宝しているのか?

火山周辺の高原に巡回隊を配備してまでの厳重警戒など、
数々の疑問がザーンの頭に過るのだった。
…しかし、それも直にわかることだということもわかっている。
サキサとキリアナたちが巡回隊を叩き、
リゼッタとノーザの補給地奇襲によって混乱した迎撃隊を叩きさえすれば、
その次にはあのヴェンガデン火山を守備する軍隊と対決することとなる。


しかし、ザーンは警戒していた。
火山を占拠し陣を敷くマスカー…そして…
あの火山に潜んでいるであろう……まで見えぬ敵に………。





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                《キリアナ視点》




「…見つけた」


朝日が強く差し込む空の下で、高原にある丘の上で私は意識を集中させ、
周囲に響く僅かな音をその耳で聞き取った。
私たちケンタウロス…もとい馬の聴力はそれこそ人間と比べて凄まじいが、
普段は必要以上に周囲の音を聞き取らないようにしているため、
意識を集中し音に専念してこそ、その真価が発揮される。

「どこだキリアナ?」

私の隣で乗馬状態にあるサキサが訪ね、
私はその音が的確に示した方角を指差した。

「あっちの方角だ、少し馬の走らせ方が荒いが間違いないだろう」
「よし、無理に国境要塞から離れ過ぎては隊長たちと
合流する時間にそれだけロスが出てしまう。このまま一気に!」
「落ち着くんだサキサ、確かにそれも最もだが勝利に急ぎすぎては
それこそ己の命を危険に晒しかねない」

私は隊長がシュザントに配属される前に、
この第四部隊を指揮していた経歴がある。
それらの経験と隊長と共に戦い学んだ知識などを
フル活用した頭で状況を確認する。
血の気が多いサキサやシウカがいる我が第四部隊、
そんな二人を上手く扱えばよりこの隊の戦力は向上する。
以前に隊長からの教授で学んだ知識の一つだ。

「それに下手に後を追うように接触しようとすれば、
そのまま逃げられ伝令を火山に送られる可能性だってあるわ」
「…つまり、先回りだな?」
「そういうこと…命令を遂行するためには、
絶対的な状況を創りだす…それが勝利へと繋がる鍵となるのよ、
さぁ…グズグズしてないで行きましょう」


馬の体を動かし、相手側に気づかれないルートを迂回し移動を開始した。
するとその道中…少し気になる場所が目に入った。

「これは……」


それは切り株などが大量に残った高原の一部だった。
それは火山へと続いているものの、そこまでの道中にも切り株の後があり、
その光景を見て私はあることを思い出した。

聞いた話によると、
かつてあのヴェンガデン火山は周りを森が囲んでいたそうだが…
今…目の前の光景……森なんてどこにもない……。
あるのはその名残のように残る切り株だけ……
そう、おそらくマスカーが火山周囲の森をすべて伐採したのだろう。
魔物の住みやすい環境を恐れていか…火山砦の材料となったか…
理由は色々と予想できる…しかし、この切り株だけの虚しい光景は…
どこか、私の…いや…私たちの心に火を付けるものがあったと思う。


「……………」

私と並行して走っているサキサの険しい顔…、
そしてその後ろで私たちに続くリザードマンたちも皆、
似たような表情を覗かせていのだから…。

「……キリアナ…」
「…………?」
「……必ず、この地を取り返そう…。私たちの手で…!」
「…そう、だな……ええ、必ず…」

そのうちに潜める火を感じながら、私たちはその走りを強めた。
そしてようやく、巡回隊を待ち受けるポイントへとたどり着いた。
しかし……。

「待ってサキサ…妙だわ。連中…走りを止めてる」
「なに!?」

目標ポイントへと辿りつき、再び耳の意識を集中させれば、
蹄の音が走っていないことに気づいた。

「まさか、我々に気づ
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