現在も尚続く魔王軍とマスカー軍の緊張状態。
先の大戦をきっかけに魔王軍は
集中的兵力を用いての大規模な攻撃は極力控えている傾向がある。
殲滅大戦で魔王軍が受けた傷跡はあまりにも大きかったからだ。
勝利を確信したときほど脆いものはない。
大戦時の魔王軍は紛れもなく其れだった、
かつてザーンは言っていた、「あの戦いは後一歩で勝てた戦いだった」
言い換えれば、その『一歩』ほど魔王軍が脆い時はなかったのだ。
それを立証したのが始教帝レインケラーの奇跡的逆転劇、
戦場で見せたその巻き返しは魔王軍にとっては想像もできない痛手であった。
次々と倒れていく魔物娘やその夫たち、
その戦いで魔王軍が失ったのはあまりにも大きい。
そしてそれは今尚続いている…、
電撃的勢いに乗ったマスカーたちはその勢力を拡大し、
大陸のほとんどを支配下に治めていた魔王領を侵略……、
今でこそ多少は落ち着いているが、その被害も決して軽くはない。
しかし僅かながら回復の兆しもある。
人間とは違い魔物は種族にもよるが成長段階が早く、
生まれながらにして強力な戦闘力を持つ者も多い…、
だからこそ現在の魔王軍は大勢の魔物が
犠牲になる恐れがある戦闘を極力さけ、
互いの領土を奪っては奪い返しの繰り返しを続けている。
魔王軍も痛手を負っているが当然それはマスカーも同じこと…
だからこそ向こうもこちら同様に
小規模な戦闘で出来る限りの現状を維持しているのだ。
…だがどちらも確信はしている。
またいずれ、免れることもできない大規模な戦いは必ず起こる。
いわば今の小規模な戦闘はその為の備え……、
必ずまた、どちらもが大勢傷つく戦いが起こる。
しかしどちらも引けないものがある。
魔物として人間として、魔王軍として教団として
決して屈することもできない長年のシガラミがある。
そしてザーンたち第四部隊もまた、
そのシガラミに縛られるままに戦いに赴くこととなるだろう……
魔王軍の手足として、軍人としている限り、彼らに戦い以外の道はない……。
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≪主人公:ザーン視点≫
コーヒーでの謎の騒動一件を後にし、
私とリゼッタは会議室にて、キャスリン将軍やネルディ隊長、
そのほかの隊長格たちとともに、情報交換及び、
これからの方針を話し合っていた。
それぞれの隊長が自分の所有している情報を提供し、
送られてくる情報は、私の後ろに立っているリゼッタが
手に持つファイルに書き留めていた。
「以上のことから、まやかし兵に関しては本城に報告のうえ
最善の注意を呼びかけるべきかと…………」
私もまた、隊長である以上その一人だ。
先程リゼッタとサキサの二人と話し合って整理した情報を
キャスリン将軍たちに報告。
「そのダヴァドフという男の特徴は?」
「はい、長身・顎鬚を蓄え………」
そして向こうからの質問を精密に返答していた。
…それから先程の会話で「本城」という単語が出てきたが、
コレは説明するまでもないだろうが、「魔王城」のことである。
「……ではこれで本日の会議を終了するわ、みんなお疲れ様。
それぞれいつもの訓練に励むようにお願いね、
私たちがマスカーとの戦いに勝つかどうかで
どこかで平和に暮らしている魔物や人間たちの命運を分けるということを
くれぐれも忘れないようにね?」
『はっ!!』
キャスリン将軍の言葉を合図に私たちは一斉に敬礼をした。
そしてそれぞれが持ち出してきた書類などをまとめ出し会議室を後とする。
私もリゼッタにいくつか書類を手渡した後、
彼女と共にその場を後にしようとしたが、キャスリン将軍が声をかけてきた。
「ああ、ちょっと待ってザーン隊長」
「…はい、なんでしょうか?」
私が足を止めれば、リゼッタも私の後ろで足を止めた。
「ふふっ、そんなかしこまなくてもいいわよ。
ちょっとした世間話、隊員さんたちの調子はどう?」
其れを聞けば、私は将軍に報告すべきことを思い出す。
「将軍殿らの処置のおかげでみな全快へと向かっております。
それで、将軍殿に報告したいことがあるのですが……」
「報告ね…言わなくてもわかるわ、シュザント拠点に戻るんでしょう?」
「ええ、こちらでお世話になったことは私もこのリゼッタも…
隊員たち全員が心より感謝しております…。
ですがあまり長居しては、カナリア公の大目玉を受けかねませんので」
「ふふっ、あの吸血鬼さんらしいわね…了解したわ。
シュザント拠点までの転送陣を用意しておくから
準備が整ったら声をかけて頂戴、私はいつもの将
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