エリザとカーディナルがコルシカに行ったその次の日の朝。
壮年の騎士を先頭に物資を積んだ馬がレフォルが野営している地に到着し、手続き副官に任せると、直ぐにレフォルが使っている天幕へと向かった。
「マ、マリウス先生。先生が物資を届けに来て下さったのですか?」
マリウスはレフォル、ハーゲン、ファス。の3人以外に、教会に属する全体の騎士、剣士の剣術を教えている。
「いや‥教え子共が心配でな。この役を買って出てきた。まぁ心配とは‥あれだ。あれ。騎士とて男。こんな狭い天幕の下でおなごと寝食を共にすれば、教義とは別の感情が沸き起こり、深夜に事故の1つや2つは起きるだろう?それとも既に起きてしまったか‥?」
顎に手を当てて、レフォルとアルマの反応を確かめるように交互に見ている。そして‥教会に属していられるのが不思議な程、この手の話を平気でする。
マリウスはレフォルが顔を真っ赤にして、必死に否定している事よりも、アルマの方が顔を真っ赤に俯いているのを確認していた。
そして‥野営地から出発する準備が整うまで3人にはそれぞれ剣術指南という名の扱きが待ち構えていた。
出発準備が整うと、ハーゲンが指した位置を目指してゆっくりと着実に、そして‥剣術指南も忘れずにその足を確実に進めていった。
次の日の朝を少し過ぎた頃。息を切らせたエウラリアと涼しい顔をしたアンが城に帰還するなり、そのままの足でエリザの部屋に向かった。
「おお。戻ったのかの。エリザは今、外出中での。数日中には戻ってくるようじゃ」
2人は予想外の人物に拍子抜けするも、普通に寛いでいるニアに安心を覚えた。
「ニアさん。エリザさんから、私たちに対して、指示はあるのかしら?」
「人間を倒したら、即捕獲。そのために城の中で迎え撃つつもりらしいからのぅ‥。じゃから、ワナを仕掛けるも良し、好みだけを狙うも良し。こんな感じの事を言っておったの。で…ワシとエリザは好みを見つけたから、主らは手を出すでないぞ!まぁ‥これについては後でそやつの特徴を細かく教えるから良いとして‥」
「分かりました。なら、私も戦いの中で私の好みを見つけます」
アンは話が長くなると判断した。そして、割り込むように一言告げると部屋を後にした。
「とにかくエリザは無事なんだな?本当に良かった‥。しかし‥アンが婿を選ぼうとするとはねぇ……」
「そんなに不思議なのかの?」
「ああ。あいつの場合。なんというか…。婿よりも剣の方が大事っていうか……。まぁ。そんな感じがしてたからな」
「なら‥お主は婿に興味ないのかの?」
「あるもないも、まずは城を守ることが先決だろ?その後で余裕があれば‥な」
「相手の服装によってはお主が真っ先に突進すると思うのじゃがな‥」と声には出さずに心の中に留めた。
「ま、まぁ‥。とにかく休まずにずっと走って来たから本当に疲れた。私も部屋に行って寝てくる」
その場で直ぐに解散となり、それから2日が過ぎた夜。エリザはもう1人を伴って城の屋上に立つと自室に入った。
「あらニア。私の部屋で我が物顔で寛いでいるのね?」
様々な物が散らかされた床を見て、率直な感想を漏らした。
「そやつは誰じゃ?」
自己紹介しようとするその人の口を遮るように手を出した。
「この子は私の切り札って所ね。それよりも‥アンとエウラリアは戻ってきたの?」
「戻ってきておるぞ。今は各々の部屋に居る筈じゃ」
「後で顔出しついでに、この子の紹介をしようかしら?」
「なぬっ‥。ワシには紹介せぬのか?」
ニアはわざとらしく驚くフリをした。
「ほら、興味ナシってのが見ていて分かるから‥。そうそう。次に私が戻るまでに自分で汚した箇所は掃除してね」
何かを思い出したように直ぐに踵を返した。
「言い忘れてたけど‥帰りにその辺を飛んで回ったのだけど‥人間達が大分近くに居たわ。そうね……明日か明後日には来ると思うわ」
伝えるだけ伝えると、エリザはもう1人を連れてアンとエウラリアの部屋に向かった。
「言い忘れる程、軽い事ではないじゃろぅ……」
つぶやくようなつっこみを入れた後、かったるそうに部屋の掃除を始めた。
そして‥「ドレス。似合わねぇ!!」大きな声と共に笑い声が夜の古城に響き渡った。
そして次の日の朝‥。
昨晩の厳正な話し合いの結果。エウラリアが見張りとして屋上から森を見渡して……赤い鎧を身に付けた人間を見つけるなりすぐに足元の大斧の担ぎ、猛突進の勢いで城の中を巡り、外に出て行った。
部屋にいても聞こえるその猛進ぶりに、アンは窓から人の姿を確認すると、自身の愛剣を持って、エリザとニアに知らせてから外に出ていった。
「しかしのぅ‥城内にて迎え撃つハズではなかったのかの?」
「エウラリアが孤立しないように、アンも出ていったのだから‥私達も外に出るべきね」
身支度を整え
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