「あら‥貴方は私の相手をしてくれるの?」
「いや…剣を帯びていない者に剣は向けられない」
レフォルはエリザよりも鎌を持っているニアの方へと視線を向けた。
「そう‥。なら‥嫌でも私に向けさせるわ!」
エリザは地面に手をつき魔法を唱え、その瞬間。辺りの地面に雷が走り、周りの兵士をなぎ倒していき、その雷がレフォルを捉えて、当たる瞬間。アルマがレフォルを抱えるように後ろから持ち、羽ばたいて‥躱すとゆっくりと地面に降ろした。
「レフォルさん。戦う前に少しだけ時間を下さい」
レフォルの右手と左足の甲冑を外して、自身の手と足の紐を解き結んでいった。
「レフォルさん。貴方に私の加護を……」
自身の唇をレフォルの唇に軽く重ね……
「勝利‥して…下さい……」
身体を離して軽く微笑むと、足元から崩れるようにレフォルに身を預けた。
「大丈夫。そのエンジェルちゃんはただ気を失っただけ。私を疑うなら‥脈を取れば判ることよ」
エリザは心配そうにアルマを抱えているレフォルに声を掛けた。
「少し待っていろ」
エリザに向けて小さく、それでいてはっきりと返してから、天幕へと戻り、アルマをベッドに寝かせると甲冑を身に付け天幕を出てエリザと向き直った。
「敵である私に丸腰だからって理由で剣を向けないなんて‥アナタ優しいのね」
エリザはその場で気を失っている兵士の剣を取ってレフォルに構えた。
「いや‥剣を帯びていない者を討って得るものはただの恥辱だ。僕に剣を教えてくれた恩師へ、そして‥僕自身への……」
レフォルもエリザに向かって剣を構えた。
「私はエリザ。アナタの名前は?」
「レフォルだ」
間合いを詰めようと地面を蹴って‥レフォルはすぐに異変に気がついた。甲冑を着ているにも関わらず身体が全く重さを感じず、それ所か寧ろ軽い。そして踏み込んだ1歩も思っていたよりも跳ねていた。
全く予想もしていなかった身体能力の向上でエリザとの距離が目と鼻の先になり、剣を横に一振り。エリザは剣で防がずに身を躱したが‥髪が数本切れて地面に落ちた。
すぐさまエリザの方へと向き直り、確認するように剣を握っている手と足を見た。
「エンジェルちゃんが受けていた加護をそのままアナタに渡した。そんな感じね。身体能力の向上はそのオマケ‥なのかしらね?だからこそ私を見てもなんとも思わないでしょ?」
エリザは持っていた剣を地面に刺すと、目を閉じて、魔力を手に集中させて‥黒い剣を手から生成した。
「私が剣を作るまでの間に、今のその力なら私の心臓を簡単に突けたでしょう?だから‥レフォル。アナタは本当に優しいわ」
「それは‥えと……」
「エリザよ。覚えなさい」
強制を孕む声。
「アルマが気を失った事を知らせたり、僕が背中を向けても攻撃をしなかった。だからエリザの方が僕より……」
「あらそう。ありがと。でも‥直接言ってくれないのね」
寂しそうな表情を一瞬浮かべると、黒い剣を鞭のように伸ばしてレフォルに襲いかかり、レフォルはそれを紙一重で躱し動きを止めている無防備なエリザへと一気に間合いを詰めた。
その頃ニアは人に対して、特に何もすること無くただ走っていた。それも、後ろには数百名の人間に後を追いかけられる形で…。時折、地面に軽く魔法を魔法を当て、土煙と共に地面を走り難くしたり‥後ろに合わせてペースを落としたりと本当にただ走っていた。
そして……ニアの顔をめがけて矢が射られ、顔に刺さる寸前で手で掴みその辺に捨てた。
「ファス上出来だ。奴の足は止まった」
ハーゲンは愛用の大剣をニアに向けて構え、ファスも弓を置き、細身の剣を構えた。
「前後同時は不可じゃからのぅ‥」
ニアは後ろにいる兵士にめがけて魔法を放つと、全員が崩れるように倒れ込んでしまった。
「なっ……」
「そんな顔せんでも‥ただの睡眠の魔法じゃ。朝になれば目を覚ますじゃろぅ。たぶん‥。
しかしのぅ。オヌシら騎士道は2対1もアリなのかの?そして‥そのぶっといのでワシをヒィヒィ言わせるのじゃな」
「騎士道とは貴様ら化け物に対して在るものではない」
大剣の重さを活かした振り下ろした一撃。ニアは後ろへ軽く身を引いて避けた所にファスの突き。それを鎌の刃の部分で防いだ。
「頭をかち割り、心臓を一突きとは狙うとは怖いのぅ‥。それにワシのようなプリチーな者を捕まえて化け物とはデリケートなハァトが傷つきそうじゃ」
「2人掛かりで攻めても、軽くいなすのですから、十分化け物ですよ」
ファスは一度剣を払い再びニアに構えた。
「覚悟して下さい」
「イヤじゃ♪ほ〜〜〜れ煙幕!!」
ニアは周囲に被害が及ばないように手加減した魔法を地面に打ち込み、砂煙を発生させて……時間経過とともに徐々に視界が開け…ファスが見たものはハーゲンがニアによって倒されていた所だった。
「せ、先輩……」
「情けない声を上
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