コルシカを出発して約半日。レフォル達は魔物娘が棲息している森の中で野営をしていた。
同じ頃。その森の中にある古城内にて赤い服を身に纏った魔女のカーディナルが1つの部屋を‥直属の上司にあたるバフォメットのニアの部屋を目指して慌ただしく走っていた。
「ニア様大変です!」
ドアが激しく開かれて、部屋にはニアの他に古城の主でサキュバスのエリザも居た。
「そんなに慌ててどうしたのかのぅ?ま‥まさかワシのサバト『幼女の味は蜜の味。たんと召し上がれ
hearts;』になにかあったのか!?」
「アンタの趣味がモロに出ている名前ね‥」
エリザは思わずつっこみを入れた。
「何があったのか話してくれぬか?」
咳払いをした後、エリザを華麗にスルーして話を進めた。
「2日くらい前にサバトの材料調達を頼んでいるタヌキさんから『最近、教会の方から武具の大量買いの話があったんだけど‥』と話を聞いたのですよ。それで昨日、今日と教会に様子を見に行ったら‥今朝にこのお城を攻めるために兵を出していたんです。それで大急ぎで……」
「寧ろ‥大助かりじゃろう。のぅ?」
「ええ。そうね。特に未婚の娘が聞いたら大喜びするわね」
「お主もこれでやっと脱未婚じゃな。結婚願望が強いのは知っておるぞ」
「ねぇニア?口は禍の門って言葉を知ってる?その口が二度と開かないように針と糸で縫い付けたいくらいだわ」
カーディナルはエリザの顔を見て‥背筋に寒いものが走り‥間違いなく実行すると直感的に理解した。
「あの、あのあの‥。その‥その、違うんです。今回はエンジェルが先頭に立っているんですよ…」
エリザとニアの顔つきが一瞬にして変わった。
「エンジェル‥?ニアはどう思う?」
「勇者と称される者なら‥私の婿にこそ相応しいって事かの?」
「ねぇ魔女っ娘ちゃん。近くに貴女の小指くらい太い糸とそれが縫える針はあるかしら?門はしっかりと閉めないわね」
「これじゃから、冗談の通じぬおひとりさまはこわ……」
この瞬間、閃光が走り‥ニアの顔が爆風に包まれた。
「今のはワシでなければ大変な事になっておるぞ!!」
爆風が収まるとそこには顔の所々に煤をつけたニアが数回咳き込んだ後、怒鳴るような声を出していた。
「私にそういうことを言うのはアナタだけよ。当然、他の誰にもしないわ」
カーディナルはニアにそっとハンカチを差し出して…ニアは角を丹念に拭いた後、顔を拭いた。
「ま、まぁ‥エンジェルがついておるなら軽視は出来ぬの‥」
「そういう事。最初からそう言いなさい」
「さて‥カーディナル。褒美のナデナデをするからこっちに来るのじゃ」
「はい♪♪」
ニアはカーディナルの帽子を取り、頭を撫で‥カーディナルも見た目相応の明るく無邪気な笑顔を見せていった。
「アンタ達を見てると緊張感がないわね‥」
エリザは呟くようにつっこんだ。
深夜、ミノタウロスのエウラリア、デュラハンのアンが集められた。
「ったく‥気持ちよく寝ていたのになんだよ…」
エウラリアは眠そうに目を擦っている。
「エリザさん。深夜に召集した理由は何かしら?」
アンは深夜でも眠そうな素振りを全く見せていない。
「人間がこの城を攻め落とそうとしている。と情報が入ったから対策を練ろうと思うの」
「んなのあたいら4人の内、1人か2人、手こずっても、3人で行けばすむ話だろ?対策はこれでいいだろ?もぅ戻って寝ていいか?」
眠そう言い放ち、直ぐに頬杖をついて‥今にもここで寝ようとしている。
「ワシの可愛い魔女によると‥人間側にエンジェルがついておるようじゃ。じゃから軽視をしない。それがワシとエリザの考えじゃ」
アンは表情を驚きに変え、対して隣のエウラリアは表情を全く変えていない。
「対策を話し合う前にいいかしら?戦闘力で選んで召集した理由はわかりました。でも‥隣の牛‥。もう寝ているわ…」
エウラリアの頬を指先で軽く突いて反応がないことを確かめている。
「エウラリアの事は折り込み済みよ。実の所、対策は練ってあるの。2人を呼んだのは指示を兼ねた情報伝達のため。ただ‥事後承諾って形に近いのは許して。
まず‥これから私が空から人間を偵察するわ。その間に、アンとエウラリアは戦えない娘を中心に脱出の準備を急いで。その後で人間の配置によって逃げ道を選ぶわ。今の所、取れる対策はこれだけ」
「わかったわ。隣の牛はここで起こすよりも‥この部屋から一旦出します。そうすれば目覚めの聞き苦しい声を少しは聞かなくて済むでしょう?」
「何をする気か知らぬが‥そのまま勢いよくイスを引けば、多少の痛みを伴って目覚めるじゃろう」
「それじゃつまらないわ。重要な時に寝ている罰も与える必要があるわよね?」
アンは愉しむように加虐的な笑みを浮かべ、エウラリアを絶対に起こさないように注意しつつ部屋から運び出し……
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