1話 天使降臨

「私は‥主より遣わされたエンジェルのアルマです。
主から受けた命は、ただ1つ。この地に蔓延る魔物娘を一掃する事です」
跪いて、騎士の称号を受けようとしていた青年、レフォルの手を取り…
「騎士様。お願いです。私には貴方の力が必要です」
予期せぬ訪問者に誰もが目を止め、次に進行するのに今暫くの時間を要した。

そして‥レフォルは騎士の称号を受けると同時に、魔物娘討伐の中核を任され、様々な準備に数日を要した。
出立の前日。全ての者に休みが与えられ、昼を過ぎた頃。レフォルはアルマを連れて教会から家路へと着き、その中でアルマは行き交う人々に好奇や奇特といった目に晒されていた。
「その‥すまない」
「どうしてレフォルさんが謝るのですか?」
「その‥悪気は無いと思うのだが‥気を悪くしたらと思い‥」
「皆さんに悪意がないのは分かります。それに‥この輪と羽根、私はエンジェルであることを誇りに思っていますから」
心配そうなレフォルにアルマは笑顔で返し、2人は話をして道を進み……家の前で止まった。
「ここが家で‥まず、妹に事情を話す。それまで、ここで待っ……」
「お兄ちゃん!!おっ帰り♪♪」
実兄の声を聞いてか、最後まで言うのを待ちきれずにドアが勢いよく開かれて、レフォルはドアと激突寸前だった。
「あれ‥?そっちの人は誰?」
レフォルの妹ペネムは兄よりも、アルマの姿を見て、輪や羽根に疑問を持つよりも早く、頭の上にクエスチョンマークを複数、浮かべていた。
「その………」
レフォルは2人を家の中に入れ、お互いに自己紹介をさせた。


「アルマさん。よろしくね♪」
ペネムは右手をそっと出した。
「ペネムさんこちらこそ宜しくお願いします」
アルマも右手を出して、2人は固く握手を交わした。
「お兄ちゃん。アルマさんと女の子同士で話したいから、ちょっと借りるね♪」
「あ、ああ‥」
妹のキラキラと輝く目に若干引きつつも返事をし、ペネムは握ったままのアルマの手を引いて、自分の部屋に連れて行った。
「ねぇねぇ。アルマさん!アルマさん!!」
手を離して向き合うように立ち、更に輝きを増やした目で小指を立ててアルマに見せた。
「私の赤い糸の相手って誰だか分かる?見える?」
「え?」
質問が予期していたものと全く違うために、呆気に取られてしまった。
「ほら、エンジェルってハートの付いた弓矢を使って恋人を結びつけるっていうか……」
弓を射る真似をして、声を弾ませた。
「いえ…私はその‥担当が違うので……ごめんなさい」
「あっ‥。いいの。いいの。将来、私は誰と結ばれるのかなって思って……。あははは……」
そうです。私たちはペネムさんのような方を、この笑顔を魔物娘から守るために明日から戦うのです!アルマは密かに胸に誓っていた。
「アルマさん?急に黙ってどうしたの?」
「明日からその……」
実の兄を連れて戦いに行くとも言えず、かといって嘘を吐く訳にもいかず、その場で口を閉じて閉まった。
「そっか‥。お兄ちゃんとどっかに行っちゃうんだ‥。そうだよね…だってお兄ちゃんは‥私たちを守るために騎士を目指したんだから……だから‥」
ペネムは一瞬、影のある暗い顔に変わり‥その顔を見たアルマは胸が痛んだ。
「ペネムさん。その……その‥その………
次に‥いえ、全てが解決して、帰ってきましたら‥レフォルさんと一緒に街の‥コルシカの案内を頼めますか?」
使命を果たした後、地上にいられる時間がどれだけ残されているのか分かりません。ですが…
「うん。私も3人で手を繋いで歩けたらいいなって思ってた」
「はい!絶対に破らないように、約束しましょう」
「うん♪」

「これは‥エンジェルの勘ですけど‥ペネムさんには良い方がきっと見つかりますよ」
そうです!!帰りを待っている人にも幸せになれる権利があります!
「良い人とか‥。えへへ……」
照れるような笑みを見せた後、レフォルがいる居間へと戻った。


「ん?なんだ。話終わったのか?」
「うん♪でさ‥お兄ちゃん。時間空いてる?空いてるなら、これから一緒にお風呂に入ろうよ!」
「な、ななな…ペネムさん!!何を言っているのですか!」
アルマは顔を真っ赤にして怒鳴るような声を自然と上げていた。
「そう?そんなに変?だって兄妹だよ。兄妹って一緒に入るものだよね?」
「ああ。ペネムとはよく一緒に入っている」
「レフォルさんまで……」
「なら、アルマさんも一緒に仲良く入る?みんなで背中を洗いあったりして……」
「お、おおお……男の人と入るなんて無理です!絶対に無理です!!」
赤い顔を更に真っ赤にして、髪が振り乱れる程、首を強く振った
「私だって男の人と1回も入った事ないよ」
「そうだな‥。ペネムを嫁に下さいって言う奴がいるなら、一度見てみたいな」
「ちょっとお兄ちゃん!それ!!
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