4話 夜の海

「ほら‥雫」
スピカは雫の背中を軽く押し、薊も歳破を軽く押して‥スピカは2人の邪魔にならないように薊の所に行った。

「はい。薊。飲み物とアイスと花火。
雫が夕ごはんをたくさん食べるために、アイスを控えるって言ってたから、1個少ないよ」
「分かってないなぁ〜雫は…。
花火を見ながら、好きな人と1つのアイスを1つのスプーンで食べる。この間接キスから始まる、ラブラブな空気の作り方が…本当に分かってないなぁ〜」
ラムネを開け、普段とは違うイントネーションで雫をからかうように言った後に飲み干した。
「あの‥。雫さん。歳破さん。私のアイスを食べてください」
「ヴィオ」
薊はヴィオの肩に手を置き首を数回横に降った。
「ダメダメ。こういう時は‥私たちが美味しそうに、見せつけるように食べればいいの」
「薊さん‥。薊さんの言ったことに感心したのに‥その感心を返して下さい」
ヴィオは溜め息を交えて、呆れた目で言った。
「ダメ♪それに返せないから♪」
スピカから逃げるように、走り、花火を砂浜に並べて置き、次々と導火線に火を着けていった。
そして皆がその花火を見るなか、歳破だけは花火を見ずに雫の横顔を見ていた。
「雫。その‥返事だけど……」
雫にだけ聞こえるように小さな声で言っているのだが‥聴力の違いから全員に聞こえていた。
そして、ヴィオだけが心の中で謝っていた。
「雫とは‥その…入学式で初めて見たときから……一目で‥」
歳破は何かを覚悟した顔に変わり、雫はその顔を見て、身体から心臓が飛び出しそうな強い衝撃を受けていた。
そして‥唇に何かが軽く触れたような感触を受け……その数瞬。キスをされている事に気付くと同時に、頭の中で大爆発が起き、瞬時に顔が真っ赤に染まった。
「その‥言葉よりも…行動で返そうと思ったから……」
驚きのあまり‥声を出すことができず、口をパクパクして…その場で素早く数回頷き、嬉し涙を流していた。
2人には言葉は無いものの、2人だけの時間が流れ、花火が終わる頃には自然と手を繋いでいた。

「これから雫のお待ちかねの晩ごはんの予定だけど‥ここで2人語り合ってる?
その後で‥2人は別のものを食べるのかな〜〜♪」
「あの‥その……歳破君も一緒に、ごはん‥どう‥かな…?
薊‥いい?」
「どうしようかしら〜〜♪♪ねぇ雫?」
勝ち誇った顔をして雫を見て、雫も何かを要求される事を覚悟していた。
「雫さん。安心して下さい。晩ごはんの事でしたら、薊さんが……」
薊は慌てるようにヴィオの口を塞いだ。
「薊‥。ありがとう」
「ヴィオが余計な事を言うから‥私たちはさっさと着替えて、晩ごはんを食べますか」
照れを隠すように薊は急いでホテルに向かい、スピカも続いた。

「薊さんは、雫さんとスピカさんが買い物に行っている間に、電話で必死に交渉をしていたんですよ」
「後で委員会にお礼を言わないとな」

海水を洗い流し、着替え終わり、夕食が準備してある部屋へと行った。

「食べ放題だから、好きなのを好きなだけ食べて」
「は〜〜〜い!!」
スピカは我先にと急いで行き、その席の上には多種多様の食べ物を乗せた皿で勢いよく埋め尽くされていった。
「スピカ1人で食べそうな勢いね‥。雫は甘い物を我慢してまで食べたかったんでしょ?早くしないと食べたいの無くなるよ。それとも‥歳破君の前だからって遠慮するの?
ほら‥これ見て♪テスト明けの後の打ち上げの写真♪」
「駄目!!見せないで!」
「スピカ!雫を押さえて!」
「隊長!分かりました!」
食べ放題のレストランで雫とスピカの前だけに、料理が並々と乗せられた皿が数枚ある写真見せ、その量に歳破は引いていた。
「雫もスピカもこれを残さずに食べるから凄いよね?」
そして意図か手違いか‥その写真を雫から見えないように、歳破にメールで送った。
「薊さん。食事中はもっと静かにして下さい」
「え!?私だけ?」
「そうです。薊さんが全ての元凶です」
「まずは‥より良くお互いを知るための1歩って思ってしたのに……」
「それなら‥雫さんが嫌がる写真を見せるのは間違えていると思います」
「じゃ違う写真を‥それともヴィオの寝顔がいい?」
「……。あの!薊さん!」
溜め息を出し、強い口調で言った。
「そうだよね‥。歳破君は雫一筋だよね。なら雫の寝顔って事で♪」
朝の写真を見せ、歳破はその写真に見入り、雫は恥ずかしさのあまり、机に伏せ、ヴィオは言っても聞かないと諦め、スピカは食べることに夢中になっていた。

話をしながら、賑やかにそれぞれが好きな食べ物を取りに行き‥
「はい雫。お皿の上に乗せたからには戻す訳にはいかないよね?」
雫が食べ終わる度に、薊は自身が盛り付けた皿をテーブルの上に置いっていき、そして難なく食べる雫に歳破の顔はひきつっていった。


「ごめん薊
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