彼と彼女が同棲を始めて早数日……。
彼は晴れて引きこもりでヒモなニー……未だに家を出ることを許されておらず、彼女が不在の時に自身の代わりとして、目の前に槐がいる生活を得るまでに彼なりに大変な目に遇っていた。
彼女は梯梧を養うと決めた以上、あっさりと何の未練もなく学校に退学届けを出すとその日の内にアルバイトを始めて‥
彼女が仕事に行っている間は彼は独りになり、紫苑がいない間の時間を過ごすのにテレビは‥『梯梧君が私を愛するって言ったから、私だけを見て欲しい』その理由でコードをハサミで切られ‥
パソコンも同様の理由で使用不可‥。
そして‥陽の光と思いカーテンを開けようとすれば『デイゴクン‥ワタシヲミテクレナイノ?』となり『文房具』を喉や目に突き付けられた。それも紫苑と槐の4本の腕で…。
存在を忘れつつあった携帯は……すべてのデータが消されている事に対してもめげずに記憶を便りに使っていた所を紫苑に見られてしまい…単純な力では敵わないと思ったのか、槐が身体に取り憑き身体の自由を奪ってから携帯を取り上げると、カセットコンロを持ってきて目の前で元の形が判らなくなるまでこんがりと焼かれて‥異臭を放ちながら1つの黒く歪なオブジェとして完成し……
話し相手もおらず、更には娯楽ともいえるものが一切なく、暇をもて余しすぎた彼は生活改善を求めて彼女と話し合う決心をした。
結果だけを言えば上記のように彼女が出掛ける時は槐を置いていくとの結論に至り、その経過で‥「ワタシハ‥デイゴクンノコトヲコンナニ、フカクアイシテイルノニ‥ワタシノアイガツタワラナイノ?」等々、話し合いの途中に度々、鬼気迫る表情で殺気に似たものを放ちながら包丁を向けられた事も多々あった。
そして次の日の早朝、彼女が仕事に出掛けると彼女の部屋で槐と何をするか考えて……
「槐。僕の家の場所知っているだろ?」
彼は筆談ではなく槐に話しかけた。
『なんで?』
槐はメモに書くと彼の質問の意図が分からず、頭にクエスチョンマークを浮かべて彼の顔を見た。彼は槐のその純真な表情に心が安らぐと同時に、どんな時でも話し相手がいる事の喜びをこの時初めて実感した。
「僕は紫苑の家から出られないから‥僕の変わりに槐が僕の家に行って僕の物を持ってきてほしい」
彼の説明に彼女もうんうんと笑顔で頷き…そして‥「あと‥妹の様子を……」
妹の様子。ただこれだけを聞いた槐は愛らしい表情から一転‥その表情を昨日の紫苑へと似せていき……表情の変化に地雷を踏んだと実感すると共に反射的に自身の命の危機さえ感じ取った。
「いやいやいや……誤解だ。誤解、誤解……誤解だから…」
彼は身ぶり手振りを交えながら必死に話を続け‥「紫苑の家に行くのに家族の誰にも連絡してなかったから‥僕の事を槐から妹に伝えて欲しいって思って…」
槐は顔を穏やかにしたものの、その目から放たれる鋭い視線は彼には突き刺さる程に痛いものであり、長時間曝され続けていた事に耐えられずに‥視線だけで心が折れかかれ‥言わなかった事にしようとしたその瞬間に‥「ご褒美を差し出しますので‥僕の私物と妹に僕の事を伝える事をお願いします」彼に今のこの状況を打開する閃きの神様が降りた瞬間だった。
ご褒美。彼女にとってのご褒美とは当然、彼の精を示しているのと同時に彼女がこの世に在り続けるために必要な糧。
その一言を聞いた槐の表情は一瞬で和やかなものになり『先にご褒美をくれたら行ってくるね』走り書きしたメモを見せ、上目遣いで目を潤ませて懇願するように彼を見続けた。
彼は槐の目の訴えに負けてご褒美の件を了承すると床に仰向けになると、槐は彼の局部を露出させると、腕だけを下腹部に―取り憑かせて……彼の頭の中を妄想で満たすと…体と局部をゆっくりと擦り合わせていき………彼の精を直接その身体の中へと受け、槐は1回では満足することなく2回、3回と彼の精が空になるまでその妄想を流し、体を密着させた。
そして‥愛らしい笑みを浅葱君に見せると、約束を果たすためにその家へと向かった。
朝――浅葱邸、樒の部屋内――
樒は目を覚ますと枕元に置いてある携帯を取り、未だに兄からのメールの返信が無いことを確認して‥着信も無い事にショックを受けて虚ろな目で天井を見た。
昨日も電話も出なかったし、メールも返さないで兄ちゃんどうしたゃったんだろ‥。樒は兄の事を心配しながら身体を起こすと、その目尻は微かに滲み――丁度その頃、槐が浅葱低へと着き適当に入ろうとした部屋が樒の部屋だった‥。そして、樒は窓ガラスの真ん中から顔だけを出して徐々に家へと入ってくる槐を見て恐怖のあまり直立不動になると盛大な悲鳴を上げた。
槐はその悲鳴を聞くなり嫌そうな顔をしながら身体の全てを部屋に入れ……
「な、な、な、な、な、な、
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