最終話 ヤンデレな彼女に愛されて

彼はゴーストに身体を取り憑かれている事で包丁を突き付けられている事への恐怖心が徐々に別の感情へと塗り潰されている事に気付けるだけの心の余裕は持っていなかった。
「ワタシハ‥ニッキノコトヲオコッテイルワケジャナイノ。ダッテアサツキクンハ、ワタシノコトヲシリタカッタンデショ?ダカラ………シッテソノヘンジガハヤクキキタイノ。コタエテクレル?」
彼女は口調こそは優しいが…目は笑っていおらず、狂気に満ちた目で彼を見ている。対して彼はその彼女のその手にある包丁がいつ自分に刺さるか、その恐怖に怯えた目で見ている。
「ソンナニオビエタメヲシナクテモイイノニ‥。ワタシハコノホウチョウデ、アサツキクンノイノチヲトロウナンテオモッテイナイノ。タダ……ワタシヲコバンダラ、ワタシガイナイトセイカツデキナイカラダニスルダケダカラ」
彼女は彼の首元から包丁を左へと逸らして彼から見た右肩へと向けていき――これからの彼の一言によっては両手に握った包丁を肩の関節へと深く刺していく事に躊躇いはなかった。
「ゆ、楪…」
彼は右腕を失っていく恐怖に駆られてここで初めて声を上げた。
「ナニ?コレカラアサツキクンノミギウデガツカエナクナッテモ、ワタシガズットミギウデノカワリニナルカラ、コノサキフジユウハシナイデショ?」
彼女は狂気を孕んだ目から突如、うっとりした目に変わり、彼はその変化に目を白黒させた。
「アサツキクンノクチニマイニチゴハンヲハコベテ、オフロデカラダモアラッテアゲラレルノ。ソレニ……オトコノコッテ、テイキテキニダサナイト‥カラダニワルインダヨネ?」
彼の頭の中は既にゴーストによって淫らな妄想が広がりきっており、彼女の今の言葉に反応して‥いつしか彼女が持っている包丁よりも手に集中し、体育館であったようにその手で扱かれる事を想像した後に胸の谷間や太もも‥股と順にいやらしい目で舐め回すように見ていき……彼女が無防備にも下着姿であることを改めて認識すると彼の下半身は臨戦態勢へと移ってき――彼女の方も彼の顔から緊張感が無くなっていくのと視線が明らかに自らの身体を見ている事に気付き、そして――
包丁を左手に持ち替えて‥「ねぇ‥浅葱君。浅葱君が一言いうだけで私は……」言いながら右手を胸から腹、腰へと当てていき……彼に寄り添うに触れて「浅葱君のだよ」耳元で一言囁くとその瞬間、ゴーストが塗り潰していった妄想は彼の欲望として爆発した。
「僕は‥楪の事を愛す!だから!!」彼は強く叫び声を上げて…彼が最後まで言い終える前に彼女の心は嬉しさで満ち溢れ、包丁を後ろに投げ捨てると同時に彼へと抱きつき唇を重ねた。



唇が離されると彼が口を開こうとすると首を横に軽く振り彼を制した後に彼女の方が口を開いた。
「浅葱君、浅葱君、浅葱君、浅葱君、浅葱君……。これからずっと!!ずっと一緒に生活していこうね!だって浅葱君も私を愛してくれるんでしょ?私だって浅葱君に負けないくらい浅葱君を愛するから!だから……だから……」
彼女は彼に対しての想いを爆発させながら言葉を詰まらせて嬉し涙を流すとゴーストは彼の身体を伝って彼女の身体へと乗り移る事で彼の身体を自由にし、彼は身体が自由に動く事を理解すると彼女を抱き寄せると彼の方から唇を重ねた。




次の日の朝、彼は目を覚ますと隣で寝ている彼女の頭を優しく撫でると起こさないようにベッドからそっと出ると自身が何も身に付けていない事に羞恥を覚え、床に脱ぎ散らされた衣服を着ていき―彼女が身に付けていた下着をその手に掴むと真っ赤な顔をしながら自分が寝ていた所へ―彼女の隣にと置いた。そして‥自らの中で彼女―紫苑を受け入れるために机の上に置いてある日記を改めて読んでいった。



全てを読み終えて日記に書かれていたゴーストの事もその性質も理解して「えっと……紫苑の中にいるんだろ?出てきてくれないか?」紫苑に取り憑いているはずのゴーストに向かって優しく話しかけた。


彼が自分の呼び掛けには応じないのか?と諦めかけた頃に彼女の姿とぶれるように姿を表していくのを彼は黙って見続けて――ゴーストの顔を改めて見て…紫苑と瓜二つに驚いた。
「えっと…名前を聞いてないからなんて呼んだらいいか分からないけど……」
彼は申し訳なさそうに話をはじめるとゴーストは首を数回横に振り、紫苑が愛用している机へと宙を漂いながら向かいペンを取るとメモに文字を書き綴っていった。

自身が話す事が出来ないことと名前を『槐(えんじゅ)』と明かすと、彼は槐の書いたメモを見ると槐と筆談をするために紫苑の使っているイスへと座り彼も文字を書き始めた。
『槐がいなかったら、僕は紫苑にずっと恐怖を抱いたまま接して、日を追う毎に紫苑との関係も悪くなっていって…お互いが不幸になっていったと思う。それを防いでくれたのは‥紫
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