早朝、彼女は目を覚ますと身体を起こして彼がベッドの上で寝ている事をまず確認した。そしてその寝顔を見て心を安らげていると思い出したかのように机に向かい彼が起きないようにとスタンドライトだけをつけて昨日の出来事を日記に書き綴ると寝ている彼の方へと向かいその唇に自らの唇をそっと重ねた。
コレカラズットアサツキクンダケヲアイシテアゲル。デモ‥モシモワタシヲコバンダラ……
彼女は唇を離すと狂気を孕んだ目で彼を暫く見つめてから音を立てずに静かに部屋を出ていった。
部屋を出て台所に着くとその手に1本の包丁を握りしめて部屋へと静かに戻っていき、寝ている彼の腰に跨がって座ると持っていた包丁をベッドと敷き布団の間に隠した。
「アサツキクンガワタシタチノコトヲ、コバンダトキハ……ワタシタチガイナイトセイカツガデキナイヨウナカラダニシヨウトオモウノ。ダカラ‥ソノトキハキョウリョクシテネ」
彼女は誰に向かって言うわけでもなく独り言のように呟いた。
アサツキクンガドンナカタチニナッテモ、アサツキクンハアサツキクンナンダカラワタシノアイハカワラナイワ。
彼にとっての不穏な話が出た中、彼はその事に全く気付く様子もなく安らかな寝息を立てており、彼女はその彼の寝顔に見惚れていた。
彼は腹部に重さを感じながら目を覚ますと彼女が自分に胯がっている事に対して、目を覚ましたばかりの朧気な意識はこれはいつも見ていた夢と勝手に解釈をすると、この先に起こるであろう事に期待を寄せて、布団から両腕を出すと彼女の身体に手を回し、キスをするために自身の方へと彼女を優しく倒していき、彼女の方も抵抗する事なく彼に従い――いつまで経っても彼女の唇の感触が無いことに違和感を覚えて彼女をよく見ると寝ている身体に寄り添うように抱き寄せているだけだった。
「浅葱君。おはよう」
目が合い、初めに彼女からの朝の挨拶。夢では1回も無かった事が違和感となり彼の意識を覚醒させる事を促した。
そして彼は目を完全に覚ますと目の前の現実に驚く事しか出来なかった。
「浅葱君の方から私を抱き寄せてきたのに何で驚く顔をするの?」
彼女は少し不機嫌な顔をした後に急に何かを決心した顔になった。
「私は浅葱君の事が好き。……違う‥私は浅葱君の事を愛してる。初めは断られたけど‥今の浅葱君の返事を聞きたいの。聞かせてくれる?」
彼女の心はドキドキしながらも同時に彼の返事を聞き漏らさないために落ち着いていた。
「正直に言うと僕は楪の事が分からない」「分からない?」
彼女は彼の言葉に顔を強張らせながら聞き返すと手は包丁を隠した所へと伸ばした。「楪の事を怒らせたらごめん。」
彼は彼女のその表情が変化していく様を見て素直に謝ると言葉を続けた。「怒らせる気はなかったんだ。ただ‥楪はその……激し過ぎる所があるから‥楪と一緒に生活をして僕なりに楪を理解して受け止める時間が欲しいかなって思う」
彼は彼女と視線を全く外さずに答えた。
アサツキクンガワタシトイッショニセイカツシタイッテイッテクレタ。コレデズットワタシダケヲミテクレル。
彼女は心は嬉しさで満たされ強張らせた表情から一転して笑顔へ変わっていくその変化に驚きながらも「楪の笑顔って可愛いよな」彼は口には出せなかったので心の中だけで思った。
「ねぇ‥浅葱君」彼女に呼ばれて返事をしようとした矢先に「朝ごはんを作りたいから手を離してくれると助かるのだけど‥」
彼は彼女に言われて背中に回している手を離すと、彼女は彼が寝ている体勢から身体を起こすことが出来ないように四つん這いの姿勢をとっていき…彼の顔に合わせて自身の顔を沈めていき――その唇を重ねた。
暫くして唇が離され「これから朝ごはんを作るから出来たら呼ぶから浅葱君は部屋にいて」
「楪が作っている所を見たいから僕も行くよ」
彼女は彼の返答に若干の戸惑いを見せるとベッドの上から動き床に足を着けると彼が起きてくるのを待ち………なかなか起きてこない彼に彼女はしびれを切らせて布団を剥ぐとそこには彼の息子が服の上でも立派に自己主張をしていた。
それを見てしまった彼女は‥「浅葱君‥。私先にごはんを作っているから後から必ず来てね」顔を赤くして部屋から出ていき、彼はその彼女の様子を見ると身体を軽く起こして頭を抱え項垂れて………時間が過ぎると共に自己主張が収まると彼女の部屋を出て台所へと向かった。
彼も彼女もどちらも口を開かずに気まずい時間が流れ……出来上がった朝食が食台の上に運ばれていった‥。
「ねぇ‥浅葱君…。浅葱君は……私と……ベッドの上で………したい?」
彼女は顔を真っ赤にして彼と向き合うとか細い声を出して彼に聞き‥彼は彼女の突然の提案に食べ物が変な所に入り噎せると彼女は食事を中断して彼の背中を軽く叩き―――彼は楽になると彼女にお礼を
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