1話 私だけの浅葱君

彼の口から出た答えは―――
「ごめん‥好きな人がいるから楪の気持ちには応えられない……」


彼女は想いを伝えるも拒まれた事に打ち拉がれたように見えたが……
ワタシジャナイチガウヒト?イミガワカラナイワ。ダッテ‥イマ‥アサツキクンハワタシダケヲミテイルデショ?ナノニチガウヒトナノ?ソレハヘンヨネ?

「ごめん……」
彼は再び謝ると彼女に背中を向けて屋上から去り、階段を数段降りた所で不意に身体のバランスを崩しそのまま階段から転がるように落ちて踊り場で頭を打つと意識を失った。



彼が目を覚ますとそこは見覚えのある天井があり、部屋で――学校の保健室のベッドの上で寝ていた。状況の整理を含めて周りを見渡すとベッドの隣に彼女がイスに座っている姿があった。
「浅葱君大丈夫?あの後‥後ろで大きな音がしたから急いで行ったら浅葱君が倒れていて……」
告白の言葉を抜けば今のが彼女にとって彼との話をしたのが初めてで彼女自身胸が高鳴っていくのを感じていた。
「僕が倒れていた?」
彼は彼女に言われた事を思い出すように記憶を辿りつつもベッドから身体を起こそうとすると激痛に見舞われて反射的に呻き声を上げた。
「浅葱君今は動こうとしないで休んでいて」
彼は心配そうにしている彼女のを目を見ると寝たままの体勢で彼女を見上げて話をした。
「楪が僕を運んでくれたの?」
「近くに誰もいなかったから私が運んだの」
「1人で?」
「ええ。誰かを呼びに行く事よりも先に保健室に運ぶ方が大事と思ったから」
彼は彼女に対して『自分より小柄な女の子がたった1人で屋上の近くの踊り場から1階にある保健室まで運べた事』に素直に不思議に思った。
「楪は意外に力あるんだな」
「必死だったから‥だから力が出たんだと思う……」
彼女は既に顔を真っ赤にして話しているのだが…彼の方から見ると丁度明かりの影となり彼からはその顔が見えていなかった。

会話が止むと彼はふと窓を見ようと首だけを動かして――真っ暗で何も見えなかった事に驚き時計を見ると……7時を過ぎていた。
彼女はその様子を察して「浅葱君が家の場所を教えてくれれば私が家まで送ろっか?両足が痛かったら背負って片足なら二人三脚の要領で歩けると思うんだよね」
彼女の提案に彼は逡巡するも、このまま保健室で休み続けるのは現実的に無理と考え彼女の提案を飲んだ。
歩けるかどうか調べるためにベッドの上で足を動かすと右足だけが痛んでいる事が分かり二人三脚の案で家に帰る事に決まると彼は激痛に襲われながら身体を起こしベッドの縁に座ると彼女は横に座り彼の手を取り自身の首に回すと2人は掛け声を上げて立ち上がるとその拍子で彼の手が僅に揺れて親指の甲が彼女の胸に軽く触れた。
「あ……」
「あ……」
2人は同時に全く同じ声と同じ反応を起こした。
「ごめん‥その……」
彼は真っ赤なった顔を見られないように俯きながら謝ると次の言葉に詰まった。
対して彼女は‥アサツキクンガワタシノムネヲサワッタ。サッキハアンナコトイッテタケド‥ホントウハワタシノコトガスキナンダヨネ。スキダカラサワッタンダヨネ?
それから2人で歩きだし下駄箱で靴を履き替え外へ校門を学校を出ると彼の家のある方向へと歩きだした。



30分も二人三脚で歩くと身体を密着しているせいか汗と共に出る彼女の香りが彼の鼻腔を刺激し更には身体を動かす度に親指の甲が胸に触れて彼の男としての部分は既に完全に猛っていた。彼にとっての幸いは今が夜で制服も黒かった事で彼女に気付かれなかった事だろう。



「ここが家だから…」
彼は二人三脚の体勢を解くと片足で跳ねるように飛び玄関の前まで行った。
「楪‥今日はありがとう」
猛った部分を隠すために不自然なまでに前屈みでお礼を言った。
「明日になったら病院に行って足を見てもらってね」
「わかってる」
彼は返事をすると玄関を開けて中に入り部屋に着くと明かりをつけて親指の甲が服越しとはいえ初めて異性の胸に触れた事と密着して香りを嗅いでいた事を思い出して今まで猛っていた欲望をティッシュに2回出すと丸めてゴミ箱に捨てた。



彼女は暫く家を離れずにいた。
ココガアサツキクンノイエデ、イマアカリガツイタトコロガアサツキクンノヘヤネ。ソレニ‥キョウハジメテアサツキクンニタヨラレタワ。コレカラモドンドンワタシヲタヨッテネ。ダイスキナアサツキクン。
彼女は満足すると、ここから自宅に着くことが出来ないので1度学校に戻ると家路についた。



彼女も家に着くと部屋の明かりをつけると暗かった部屋が明るくなり、そこには彼の横顔の写真が部屋中に貼り付けてあった。
制服を丁寧に脱ぐとシワにならないようにハンガーかけて洋服タンスにしまうと普段着に着替える事なくそのまま下着を脱ぎ全裸になった。
イッパイノアサツキクンガ
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