夏の星空

サファイアさんに見下ろされ、その口が開く瞬間。意図か偶然か、コルドンが目を覚まして、サファイアさんは振り返ってしまい‥以来、貝のように口を噤み、何も出さないものの、行動の一つ一つが無言の圧力となって僕に伸し掛かっている。
「あ、あの‥お腹……空きましたよねぇ?」
最初に沈黙を破ったのはコルドン。そして‥
重い空気の中、サファイアさん、コルドン僕の3人で食卓を囲み‥食べているのは昨日の残り。
「そ、そういえば‥私……どうやって学校に行けばいいのでしょう?」
然り気無く‥とはいかないものの、コルドンは気付いたように自分の手を合わせた。
「どうだと?」
「どうって?」
声の感じは違うものの、きれいに重なった声に‥昨日とは違い顔を見合わせる事も無く……
「その‥制服が無いと行けないですよね?」
「確かに‥そうだな」
箸の動きを止めて、鋭い視線が僕を1本、1本と串刺しにしていった。
「えと‥その……僕の予備の制服なら着られる‥かな?」
横目の鋭い視線。更に滲み出る圧力‥。
「タオルを巻けば、胸を隠す事が出来ると思います。そうすれば男子生徒として成り済ませそうですよね?」
「それで良いと思うなら、私からは特に言うことは無いな」
箸は再び動き、摘ままれた物は口に運ばれていく。
そして‥
「「「ごちそうさまでした」」」

食器を片付けて、僕の部屋へ‥

「これが制服です」
クローゼットを開けて、手渡し‥いつまでも着替えないコルドンを不思議に思ったの束の間。
「私とこいつは家の外で待っている。着替え終わり次第、出てきてくれ」
部屋から追い出されるように、耳を強く引っ張られて、そのまま外へ‥
「お前は私に信じろと言ったな」
指は耳から離れ、人差し指は僕の喉の直ぐ下を突くように触れている。
「だが‥お前が取った行動はなんだ?なら、なぜ共に寝ていた?」
眉の上がった顔。身体が竦む恐怖が僕を襲う。でも‥
「何もしていません。それに何も無かったですよ!!」
感情を表すように荒らげた声。その反動からすぐに咳き込み、その場に屈み……止まった頃には荒い呼吸を繰り返して……
顔を上げた時に映ったサファイアさんの表情は……
「分かった。お前がそこまで言うなら信用してやる。だが‥次はないぞ」
目が合った瞬間、慌てるように背中を向けた。
「ああ。そうだ‥。これは言い忘れていたが‥私もお前の家に世話になろうと考えている。よく考えてもみろ。私はお前の恥ずかしい話を何一つ聞いていない。それでは不公平だろう?違うか?それに‥衣食住。全てにおいて、負担させた金額は全額支払おう」
「金額の話は僕よりも、両親にして下さい」
「そうだな」
振り向き、差し出された手。僕はその手を取った。
「こうして改めて見れば‥風邪にしては、窶れて過ぎている気もするが……お前、本当に休んでいるのか?」
一睡も出来なかったなんて言える筈もなく、適当に誤魔化し…続きを話している内に制服に身を包んだコルドンが家から出て……
その姿は正に男装の麗人。でも、この一言では言い表せない程に凛々しく、目を見張るものがあった。
「瑠璃さん?どうしたのですか?」
見惚れていたなんて言える筈もなく、適当に誤魔化し、
「声ですぐに女と分かるが‥私と居れば口を開く必要も無いだろう」
サファイアさんに僕。顔を見渡したコルドンは途端に笑顔を見せて、そして‥右と左それぞれの手で、手を取り、手の平を重ね合わせ、
「これで仲良しです♪♪ケンカは絶対にしないで下さいね」
拍子抜けしていたサファイアさんの顔。その表情はすぐに険しさを帯び、腕に力を入れて、力ずくで引っ張っているように見える。が‥コルドンは笑顔を絶やしていない。
「このまま手を握って、学校まで行きましょう!!」
若干の怒気を孕んだ声。そのまま、手を繋いだままいつもの道へ。サファイアさんと僕の後ろの丁度真ん中をコルドンは歩いている。直接伝わる手の仄かな温かさを感じながら、時折、困惑した顔のサファイアさんに視線を移して、視線に気が付かれる度に顔を背けられた。

学校。いつものように校舎に入る手前、数多くの視線を感じた。それはコルドンを見ていたのか、それとも……
「瑠璃。当然の事だが‥私とお前では学年も違えば、下駄箱の位置も違う。だから‥この手は離してくれないか?」
僕は慌てて手を離し、
「私の後ろを歩こうが、瑠璃の後ろを歩こうが同じ研究室に着く。コルドンお前はどうする?」
「サファイアさんについて行きます」
期待していた。と言えば嘘になる。でも、本当に意外な答えだった‥。
1人になった僕は不思議とサファイアさんに会うこともなく、研究室に入った。
「あら‥意外ね。1人なの?」
事情を説明しようとした矢先にサファイアさん、コルドンが入ってきた。
「話は通してあるから、サファイアはコルド
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