縁は異なもの

「さて…。どうするか‥」
下水道のある一室に閉じ込められているに近く、溜め息と共にどうする事も出来ない状況に落胆する声も漏れている。
思い返せば………
街で食料の盗難がされたとの被害が多く寄せられて、細かく調査をしている内にラージマウスの一団が関係している(らしい)との事。
そして‥とりあえず1人でランタンを片手に下水道に潜り…バブルスライムの香りを感じては見付からないように息を潜めて、歩き続けて……
「親分!!人間です!!それも男です!!」
「見るからに働き盛りの好青年です!!」
ラージマウスに出会った。それも大勢に‥。出会った事よりも‥ランタンの光が目に反射して、それがより不気味度も上げて‥
「親分!!群れが大きくなる機会です!捕らえましょう!!」
「そうだな!お前たち!!あの男を捕らえろ!!」
「「「「「「「了解です!!」」」」」」」
人目で分かる上下関係。誰1人ずれる事なく同時に声を出して、同じポーズを一斉に取り‥途端に僕を見る目が完全に変わり…逃げないと将来が危ぶまれる状況‥。
即、踵を返して必死に走った。どう通ったなんて一切覚えていない。でも‥
「あっちに逃げた!!」
「こっちに逃げた!!」
「そっちに行った!!」
「こっちだ!!」
地の理。それに加えて、絶妙な連携プレーもあって……
結果。紐で手も足も出ないほどに、幾重にもグルグルと巻かれ、両手を上げたラージマウスの絨毯に運ばれて‥
「「「「「「「親分!!捕まえてきました!!」」」」」」」
またも誰1人ずれる事のない綺麗なポーズを取り、僕はラージマウスのボスに差し出された‥。
「お前たちにも後で分け前を渡すよ」
邪悪な顔を浮かべたラージマウスのボスに、何の抵抗も出来ないままに薄暗い道を連れてかれて‥1つの部屋。きっとこのボスの部屋と思う部屋に入れられて、寝床と思える所に寝かされて……
美味しく頂かれてしまいました。はい‥。それも一滴残らず搾り尽くすような勢いで‥。隣を見れば幸せそうな顔で眠るラージマウスのボス。思わず溜め息が漏れる‥。
起こってしまった事や将来の事を考えるよりも、まずこのラージマウスの一団が窃盗に関与しているかの調査が大事で…扉のノブに手を掛ければ鍵が掛かっている。そして‥鍵穴らしい物は見つからない。つまり閉じ込められたに近い状況。
扉を壊そうとすればその音で起きると思う‥。この八方塞がりの中、出来る事を考えて………
何1つ思い浮かばない‥。
意味もなく、部屋をただウロウロとしている中。カチリと鍵の開く音が響き‥次いでゆっくりと音を立てずに扉が開かれて、入ってきたのは1人のラージマウス。
「お兄さんが捕まった人間?」
僕の事をまじまじと観察するように見ている。
「ここから出してあげる。その代わり……」
捕まえたラージマウス達とは違うラージマウスなのか?ふと疑問が過るも選択肢はない。
「要求なら後で飲む。だからその前に案内してほしい所がある」
「早く離れたいのに‥それはどこ?」
「食糧庫かそれに近い所。早く離れたいなら、場所だけでも教えてほしい」
「分かった。ついてきて」
ラージマウスの性か‥後ろ姿だけでも不審者と見間違えられる程に落ち着きがない。
「そういえば‥他のラージマウスを見かけないけど‥」
「お兄さんを捕まえるために動き回ったから、身体を休めるために寝ていると思う」
「なら君は?」
「お兄さんの事は追ってないわ。それに‥なったばかりだから‥まだ少し違うのかも知れない」
これより先の話は触れないようにしようと思う。

「着いたわ。この先が食糧庫」
中に入って、見渡せば‥資料で見た食糧と同じ特徴の物がいくつも入れられて、疑惑が確信へと変わっていく。
「外に出よう」
眠っているとはいえ、あれだけの数を1人で捕まえるのは無理がある。だからこそ応援を呼ぶためにも外に出る必要がある。
「うん」
ラージマウスの棲みかを出て、そのまま上に上がり…出てきたのは街の見知った場所。後は上司に報告して、応援と共に1人残らず捕まえて……
足は仕事場に向かうも袖を引っ張られている。
「ねぇ‥お兄さん…。その‥。お札…」
潤みを含ませた瞳で僕を見続けている‥。逡巡に逡巡を重ねて‥仕事場に向かうのを止めて、一旦家に戻ることに決めた。


「私‥。こう見えても最初は人間で…ラージマウスに噛まれて……。気がついた時に容姿も、何もかも変わってて‥ショックだった。でも‥だからなのかな?群れに馴染めなくて‥でも…家には帰れないし……だから‥私を‥私をずっとお兄さんの家に居させて下さい。炊事、選択なんでもします!だからお願いします!!」
家に着き、居間のテーブルに座るとラージマウスは涙をボロボロと溢して訴え‥
この子は本当に帰る所がなくて、僕を頼っている。なら無下にする事は出来ない。
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33