「欲なんてもんは、それを満たした瞬間に後悔しちまうもんさ。食欲も、性欲も、睡眠欲も、人間の三大欲求なんて言われてるこれらでさえ、ヤッた後はあれ、なんでこんなことに必死になってたんだろうってなるんだよ」
「……はぁ、そうですか」
「あれ? なんか反応薄いな小僧。あ、もしかして図星か? 図星だな? 図星に違いない。まぁ小僧のことだから一人で元気よく性欲を満たした後、虚無感に苛まれてるんだろうなぁ、はっはっは」
愉快そうに彼女は笑った。その美しい翼を広げ、はためかせつつ。
俺と彼女、他には誰一人いない閉鎖された空間。鬱蒼と木々が生い茂る森の奥地で、俺達はいつも通りお喋りをしていた。
そんな、人のこと馬鹿にして楽しんでいる彼女の態度から、思わずこめかみに指を当てて返事をする。
「あのね、そもそもなんですか。いきなり欲がどうだこうだなんて言われても、呆然なんですけど」
「で? 実際一日に一人で何回ヤッてんだ? まぁまぁ、小僧みたいな盛んで悩ましい年頃の男子だ。人外のお姉さんに思わず性癖をぶつけてしまうことだって、何も恥ずかしいことじゃねぇ」
「……はぁ、そうですか」
呆れを込めて、わざと同じ返事をしてやった。
何だか同情したような笑顔で俺を見るこの人外のお姉さんだが、本当に人の話を聞いていないようだった。
「で、欲がなんでしたっけ」
「だからさ、小僧の性癖は人外のお姉さんに自分の性生活を吐露してしまうことって、そんな話だろ?」
「そんな話はしてねぇよ」
なんだよその特殊過ぎる性癖。
「はっはぁ、まぁあれだ。小僧の性癖はおいといて、その性欲ってのも含め、欲ってのは基本的にそれを達成してしまえば後悔するんだよって話だ」
「後悔、ですか……まぁ確かに、身に覚えが無いわけじゃないですけど。でも満足感とか、そういうのもちゃんとありますよ」
「そりゃ当然、あるだろうな。だがな小僧、それはその欲を満たしている最中のことだろ? 欲を満たし終わった後に残るのは、ただの虚無感でしかねぇ」
大きな切り株に腰を下ろしている彼女はそう言うと、足をぱたぱたと愉快そうに振っている。
地面に直座りしている俺はそんな様子を見上げつつ、その彼女の笑みに違和感を抱いた。
「なんか、妙にネガティブですね、今日は」
後悔とか虚無感とか。
ひょんなことから俺と彼女が出会ってから一ヶ月程度経つが、こんな言葉を彼女の口から聞いたことは無かった。
予想だと、今日の彼女はもっとテンション高めの有頂天だと思っていたが、どうも違うらしい。
俺の言葉を聞いた彼女は、少し目を丸くして、首を傾げた。
「ネガティブ……? あはは! そうか、小僧にはそう見えるか!」
かと思うと、途端に楽しそうな笑い声を上げる。
その様子に呆気に取られていると、彼女は再び口を開く。
「いや、すまんすまん、あまりに意外な言葉が出てくるもんで、驚いただけさ」
「意外って言うなら、俺も思いましたけどね。後悔とかなんとか……、むしろ、あんたは後悔なんてしないタチと思ってましたよ」
「おいおい小僧、それはあまりにも酷くないか? あたしだって後悔の百や二百……いや、三百かな?」
「多いなおい」
「まぁあれだ。とにかくあたしだって色々悩むことはあるんだよ。むしろ、あたし達の方が長命なんだから、百や二百なんてざらよ」
「長命ね……。人間は大体八十歳から百歳なんて言われてますけど、あんたらはどれくらい生きるんですか?」
「ん、あー……、言われてみれば、明確な寿命とかは聞いたことねぇな。まぁ種族によっても違うだろうが、あたし達ハーピィ属で言うなら、五百年くらいなんじゃねぇの?」
「五百……まぁ確かに、そんなに生きられるなら、後悔の一つや二つありそうですね。すみません」
「おう、解ればいいのよ」
腕を組み、うんうんと頷く彼女。
一つ区切りが付いたところで、先程の長命という言葉から、以前より彼女に聞いてみたかったことを思い出した。
彼女と出会うまで……まぁ出会ってからもそうなのだが、彼女達について俺は何も知らず、長命というのも今初めて聞いたものだった。
少し、今更になって彼女のことが気になった。
「そういえばなんですけど、あんた何歳なんですか?」
「ん? 今年で……十五だな」
まさかの年下だった。
「はぁ!? 十五!? 十五でそれって……」
彼女が十五歳と認識した途端、ふと彼女のその、魅惑的な引き締まった体へと目が向く。
どんな成長速度だよ、と。
すぐに目を逸らしたが、彼女は俺の視線に気付いたようで、何ともいやらしい笑みを浮かべ、前屈みになって自らの胸の谷間を強調し始めた。
「ははぁん、ピュアな純情ボー
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