「・・・・・・んー・・・」
「・・・・・・」
ベッドの上でとぐろを巻いて、トランプをいじりながら唸る彼女。
彼女はちょっと前に、俺が駅前で手品を披露している時に知り合ったメドゥーサだ。
彼女にあの日、俺の持っているトランプのハートのAを奪われてから、
彼女は俺が休みの日には毎日俺の家へと手品を練習しに来るようになった。
元々は、「貴方が私の教えるときは足りるんだから構わないでしょ!」と、
言われていたので、俺が教えに行くのかと思いきや、
いつの間に俺の家を知ったのか、また、なぜ俺の休みのタイミングがわかるのか、
彼女のちょっとした行動自体が手品というか、もはや魔法の域である。
「・・・・・・ダメだわ!全然できない!」
と、ベッドに横たわりながら言う彼女。
頭の蛇たちも、何匹かはガックリとうなだれ、何匹かは彼女を励ますように動き、
そして1匹だけ「ざまぁ見ろ」といった感じで鳴き声をあげていると、
彼女に握りこまれて黙らされていた。
「最初のところはできるようになったのに・・・」
「いや、こればっかりは練習するしか・・・」
「タネを見たときは私でも楽勝だと思ったのに・・・」
「いや、そんな一目で出来たら俺の面目丸つぶれですし・・・」
「もう!さっきから何よ!元はと言えばあんたが駅前で手品なんかしてるから!」
「それを言うなら見なきゃいいでしょ!」
「それもそうね・・・って何で私が悪いみたいになるのよ!」
と、ベッドの上で下半身の尻尾をぶんぶん振り回しながら抗議する彼女。
頭の蛇たちの何匹かも俺を威嚇し、何匹かはまぁまぁと彼女をなだめる。
そして1匹だけ「うるさいなぁ」みたいな態度をしていると、
彼女にデコピンされていた。
あの1匹は俺なのか・・・それとも変わりものなのか?
「あ、でもね!簡単なやつならできるようになったわよ!」
「へぇ、そりゃすごいじゃないですか。どんなやつですか?」
「ふふふ。まぁ見てなさい。」
と、得意げに笑みを浮かべながら、彼女は手に持つトランプをシャッフルし始めた。
「さ、好きなのを選びなさい」
と、俺の前にトランプを裏向きにして広げる。
「んー・・・じゃあこれで」
「それでいいのね。じゃあそのカードのマークと数字を覚えて。」
「ん、わかった。」
と、俺はパッと見て瞬時に覚える。
「えっ?も、もう少ししっかり見たほうがいいんじゃないの?」
「え?いや、そんなしっかり見なくても覚えれるし・・・」
「いや、もう少しちゃんと見ておいたほうが・・・」
「何でですか、あ、もしかしてこのトランプのマークと数字を変えるとか?」
「そ、そんなのできるわけないでしょ!いいから早くちゃんと見てよ!」
そこまで言うなら仕方ない。
渋々俺は彼女の言うとおり再びトランプに目をやる。
ふと、彼女に目をやると、いかにも落ち着きがない。
ずっとトランプをシャッフルしているのだが、目が泳いでいる。
頭の蛇たちも落ち着きがない様子だ。
『初めて人に見せるから緊張してんのか・・・ん?』
すると、1匹の頭の蛇がコソコソと遠巻きに俺の背後へとゆっくりと伸びてきた。
どうやら俺が気づいていることには気づいていない様子だ。
『ふむ、さては俺が覚えたカードをこっそり見るつもりか・・・』
そこで、俺は彼女の目が泳いでいるのを利用し、
手元にあるもう1つのトランプのデックからハートのAを取り出し、
それを持っているハートのキングに重ね、いかにも1枚のようにした。
そのうち、彼女の頭の蛇は俺が持つカードを見れたのか、
そそくさと彼女の頭の蛇の群れの中へと帰っていった。
「いつまで見てんのよ!そんなのすぐ覚えられるでしょう!」
「さっきと言ってる事が違うんじゃないか!まぁいいや。覚えたよ。」
「ふっふ〜ん♪あなたが持っているそのカードはズバリ!ハートのAね!」
ご機嫌な様子で俺の持っているカードを言い当てる彼女。
「マジか!なんでわかったんだ!」
と、一本取られたとばかりに俺は演技してみる。
「よりにもよって、ハートのAを取るとはね♪」
「いやぁ、まいったなぁ・・・俺の顔色を見て言い当てたのか?」
「えっ?え、ええそうよ!あんたホントわかりやすいわね。」
と、勝ち誇った彼女に対して、俺からの逆襲が始まる。
「いや、ホントすごいよ、まさかホントに当てるとはね・・・」
と、言いつつ、俺は最初に選んだカードを左手の中へパームし、
彼女に内緒ですり替えたハートのAを取り出す。
それを見た彼女の顔が一気にこわばる。
「俺の顔色もだけど、思わずカードの色まで変わっちゃうとは・・・」
と、俺が出したハートのAは裏が青色。
そして、彼女の持っているトランプの裏は赤色。
瞬間、自分の持っ
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