結局、俺は女の人を家に運ぶことに決めた。
放置していくには余りにも忍びなく、彼女の家に連れて行こうと起こそうとしても全く起きず。警察を呼ぶという手もあったのだろうが、何となく其れもはばかられた。其れだけのために通報するのも、面倒だったし。
……やましい気持ちで家に連れ込むわけじゃないぞ。多分。恐らく。きっと。
と、いうわけで、背中に大きな荷物を抱えて、ゴミ置き場を離れる。
女の人だから軽いとはいえ、体全体を弛緩させた人間を運ぶのは、やはり辛い。
おぶろうとして背中に持ち上げた時、誤ってお尻を触ってしまったので、今は手を持ってずるずると運ぶ形になっている。
……あのまま運んでいたら、恐らく理性が持たなかっただろうしな。
まあ其れでも、背中に当たる胸の感触は、如何ともしがたいのだけれど。
うう、持ってくれ俺の理性!
何とか部屋の前に着いた時には、俺の息は少し切れていた。
確かに大学に入って運動をあんまりしなくなったけど、これほどまでになっていたとは・・・。
手をいったん外して、ドアを開ける。入れておいた暖房が温めた空気が流れ込んできて、思わず身震いを一つ。
そういや、ジャンパー着ていないんだったな。すっかり体が冷え切ってしまっている。
急いで部屋に入り、女の人をベッドに寝かせる。
そのまま腰をおろして、一息つく。直撃するエアコンの温風が、冷えた体に心地よい。
ベッドの枠に寄りかかって、エアコンから出る温かい風にホクホクしていると、急にシロが俺に向かって飛びかかってきた。
「うわっ!」
……顔面にシロが直撃。なんだってんだ。
顔に張り付いたシロを抱きかかえると、シャー、鋭い呻き声をあげた。
てっきり嬉しさのあまり俺に飛びついてきたかと思ったが、どうやら違うようだ。
威嚇?俺に向けてか?
……いや、違う。この女の人に向けてだ。
今までに見たことも無いような鋭いまなざしで、俺の向こうで寝ている女の人をねめつけている。
初めて見た人に対して警戒心を持っているのだろうか。
……いやでも、初対面の友達連れてきたときにはこんなことなかったしなぁ。
まさか、この女の人に対して嫉妬とか!
……ねえな。
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其れからは特にすることも無く、シロを弄って時間をつぶした。
ふああ、あくびを一つ洩らす。あんまり眠くないけれど、もう眠ってしまおう。
未だに女の人に飛びかかろうともがくシロを胸に抱きかかえて、物置から布団を引っ張りだす。
ベッドがあるから全く使わなかった代物だ。少しほこりっぽい気がするが、まあ、いたしかたない。
何だか日課のネットをする気にもなれず、電気を消して布団に寝転がる。
シロもいい加減あきらめたのか、おとなしく俺の胸に収まった。
目を瞑って、お休みなさい……。
――って、寝られるわけがないじゃないか。隣で聞こえる女の人の寝息、つられて脳裏によみがえってくる、彼女の柔らかい体や甘い匂い。
そのどれもが、健全な男子たる俺を興奮させるには十分なもので。
最近女の子とまともに話したことすら無かった俺が、眠りを阻害されるのも当然というものだった。
その上、余り眠くないという体の状態も災いする。
どくんどくんと、耳元で鳴っているかのように大きい心音をBGMに、俺の長い夜が始まったのだった……。
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頭に鈍痛が走る。ズキズキとした其れが、緩やかな眠りを阻害する。
はぁ、またやってしまったみたいだ。緩々と目を開けた。
……目を開けると、其処は異空間だった。
どこだ、ここは。
ええと、昨日缶ビールを5本ほど飲んだ後・・・。ああ、ダメだ。全く思い出せない。
取り敢えずあたりを見回す。テーブルとパソコン以外何もない小さな部屋、簡素なベッド、そしてその横で眠る……一人の男。
寝つきが悪かったのか、唸りながら床に寝転がっている、地味目の男。
……助けて、くれたのだろうか。
そう思うと、ぽっと、胸が温かくなった。私とかかわってくれる人間なんて、何年振りだろうか。姿を見るだけで、ドラゴンという魔物だというだけで、なにも言わず避けられてしまう私が。
しかし―――。彼から漂ってくる大量の魔力。はあ、先客がいるようだ。
彼の胸元を見ると、腕の中に収まりながら、此方をじっと睨む生き物の姿が。彼を守っているつもりなのだろうか。
フフ、ほほえましくて、思わず笑いが洩れた。と、其の笑い声を聞いたヤツの体がびくっと震える。
やれやれ。テンプレートな反応に肩をすくめる。何も怖がることはないだろうに。
ふぅっ、なんてわざとらしい溜息をついていると。ジリリリリリと、けたたましい音
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