The story begins

ひんやり冷えた缶ビールを思いっきり飲み干す。
鋭い苦みを湛えた液体が喉を通り、体全体に沁みていく。
くー、何て年食ったような声を出して、缶ビールを道端のゴミ箱に投げ入れた。
もやもやとした気持ちが少し晴れた気がして、ふうと息をついた。
酒はいいものだ。うれしい気持ちを増幅させ、さびしい気持ちを紛らわしてくれる。

大きな辻風が一つ吹き抜ける。
さっき冷たい飲み物を呑んでいたせいだろう、体が大きく震えた。
もう行くかと体を起こす。頭にまでアルコールが回っているのか、目の前がぐらりと揺れた。
何とか踏ん張って、のろのろ歩みを進める。
行くあてもなく、ぷらぷらと。
いつか、私が何処かに落ち着く日が来るのだろうか。
そんなつぶやきは、真白な吐息とともに夜風にまぎれて溶けて行った。

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魔物というものがこの世界に現れたのは、半世紀ほど前の事らしい。
いや、もとからこの世界に存在していた魔物もいるというから、正確には、存在が認識された、と言ったほうが正確か。
当時の人間社会の動揺ぶりといったらもう、それは並大抵のものではなかった。
宇宙人が襲来しただの、地球は滅亡するだの、なにをするきさまらーだの。
まあ、そういった声も数年経つうちに消えていった。
彼女たちに敵意が無かったし、何より、その全員が見目美しかったから。
彼女たちが現代に現れた理由は、俺にはよくわからない。最近、魔物の事について研究している学者が何かを見つけたとかいうことはニュースになっていた。けれど、文系脳の俺には、がちがちの理系な理論で話されるそれは全く意味がわからなかった。
分かるのは、魔物が今ではこの世界に浸透しきっているということだけだ。
未だに魔物に対し暴力的手段で拒否反応を示すものもいるのだが、それももはやほんの一握りだ。

魔物たちは、現代社会を築き上げ、発展させてきた。
魔物たちが、人間に技術と安寧をもたらしたのだ。

もうひとつ、彼女たちについて特筆すべき事項がある。彼女たちの体質である。
これも詳しいことはよくわからないが、魔物たちは、人間の精が無いと生きていけないらしいのだ。
だから、彼女たちはひたすらエロい。精、つまり体液を手に入れるためである。
だが、誰からでもいいというわけではないらしく、基本的に彼女たちは決まった相手と結ばれようとする。
その判断基準は魔物によりけりだが、概ねこの人なら上手くやっていけるだろうと何かによって判断した人と、というのが多いようだ。

つらつらとこんなことを述べて何が言いたいのかというと。
男にはそれが人間であれ、魔物であれ、大体相手が居るこの世界において。
なぜ俺は未だに一人身なのだろうか、ということを、声を大にして叫びたいのだ。


この世は、実に不公平だ。
今まで散々平平凡凡に暮らしてきたものが、不意に思わぬ幸運を手に入れることもあれば、運に恵まれないものが、そのままずっと日の目を見ることなくのたれ死ぬこともある。

其れは恋愛においても同じで。
何でこんな奴に彼女が、何て文句と血の涙を垂れ流したくなるような奴がいる。
一方で、何でこいつがモテないんだ、って憐憫の目で生温かく見守ってあげたくなるような奴もいる。

俺はどちらに属しているか?
言うまでもない。後者である。いや、実際には何でこいつが、なんて言葉もつかないだろうから、もっと悲惨なものかもしれない。

幼稚園、小学校、中学校、高校とつつがなく過ごし、そこそこの大学に入学することができた。其れまでに挫折は味わうことはなかったから、そういう意味では幸せな人生ではある。

だがしかし、恋愛面においてはどうだ。
出会いもない、告白したこともされたこともない、そもそもそんな勇気もない。ないないづくしだ。
容姿は悪くない……と思う。まあ中の中くらいだけれど。
性格も悪くはない……はず。基準は分からないが。
運動は……下の上くらいか。何時も成績悪かったもんな。
……自分で言うのも何だが、いいところはほとんどない。強いてあげるとするなら、悪人ではないということだけか。
まあ、それでも。せめて一つぐらいは。人生の春を予感させるようなフラグがあってもいいのではないだろうか。
しかし、結局この年になるまで人間はおろか、魔物にすら声をかけられない事態に陥っている。
其れなりに仲の良かった幼馴染とは、高校の時点で離ればなれになり。
よく一緒に話した同級生とは、大学で離ればなれになった。
今俺の回りで女っ気と言えば、アパートの大家さん(かなりの高齢)と飼い猫のシロぐらいのものだ。

なんとかせねばなるまいと思うこともある。華の大学生だというのに、未だに彼女の一人も作ったことも無いのはどうなのかと。
反面、もう半分あ
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