あるところの男は皆から虐げられた。
理由は力がないから。
あるところの女は皆から虐げられた。
理由は力がないから。
これは同じ境遇の戦士として育てられた男と
エルフの里から飛び出した、エルフの女の話…
出会いは簡単だ。とある闘技場で二人は出会った。
その二人の戦いはすぐに終わった。
いくら弱いと言っても片方はエルフだ。
それだけでも力に差が出来る。
それが二人の出会い…
そのときは出会っただけだったはすだったのだが。
「俺の名前はキールって言うんだ」
「私はエル」
だが二人は仲良くなっていた。
才能がない同士だったからかシンパシーを感じたからか。
「お前はエルフだよな?どうしてこんなところにいるんだ?」
「それは…」
「いや、言いたくないなら良い。意味無く聞くもんじゃなかったな…悪い」
「大丈夫、気にしてない」
「そういえば、今年の大会は出たりするのか?闘技場にいたし」
「そうなんだけど…勝てないから、出場権が手に入れられないし何よりパートナーがいないから」
この国では一年に一回大規模な戦いの場が設けられる。
様々な人間と魔物が力が二人一組でぶつかり合いをするのだ。
使える武器は剣と拳。武器を持たずして闘う者はガントレット等を使う
ただし使う武器は指定されていて殺せないようにしてあるものを使う
それでもかなり痛いが…気を失うほど
「それなら…俺と出ないか?」
「えっ?」
「俺さ出場権を持ってるんだがパートナーいないもんでな」
「でも」
「お前に負けといてって話なら俺は関係ないな」
「どういうこと?」
「俺の親がそれの関係者でもあるからな」
「そうなんだ…」
「どうする、勝てる見込みはないが」
「出るなら勝ちたい」
「確かにな」
「やあやあやあ、落ちこぼれのお二人さん」
突然二人の会話に男が割り込む。
「お前は…!」
「力がないもの同士で仲良くなったか」
「誰?」
「去年の大会で優勝した奴」
「奴とは酷いな、雑魚」
「ッ!」
「そこの彼女は俺のことを知らないから教えといてやる。俺の名前はウィルだ。大会に出るなら知っといてもらおうか?」
「何でこんなとこにいる…!」
キールは歯噛みをしていた。
「何も?落ちこぼれを見に来ただけだ」
「テメェ!」
「勝てるのか?俺に」
「チッ」
「今年の大会もお前の負けっぷりを見せて貰おうかな」
ウィルはそのまま去っていった。
「キール…」
「大丈夫だ…」
「大丈夫じゃないよ!」
「どうした?」
「あんなこと言われて悔しくない?」
「悔しいさ、だがずっと落ちこぼれをやって来た俺は慣れちまった…」
「キール勝とう」
「エル?」
「あの男を倒そう、そして落ちこぼれじゃないって証明しよう」
「でも具体的に何をすれば良いんだ?」
「二人でトレーニングを見直そう」
「そんなんでどうにかなるのか…」
「やってみなくちゃわからない」
「どっかで聞いた台詞だ…」
大会はあと一月
「ここまで来たけども強くなったか今一わからん」
「死に物狂いだったからね、時間無くて」
「駄目なとこが浮き彫りになりすぎな気がする」
「私も」
「自分にあった方法で鍛えるといってもなあ」
「自分にあってるかわかってなかったもんね」
「勝てるか…」
「確実に強くなってるから大丈夫」
「やるだけやってみよう」
「そろそろだよ」
「わかった」
このあと二人は自分達の力がどれだけ上がったか知ることになる。
落ちこぼれと言われた二人には余りにも驚く現象が起きた。
「はい?」
目の前にいる男は倒れている。
気を失っているようだ。
だがそこまで行く道のりが早かった。
キールが剣を振る。相手が受け止める。
そのままの勢いで叩き伏せた。
「勝った?」
もう一方のパートナーも驚きエルも驚いていた。
何よりキールが驚いていた。
剣を受け止められて怯ませるつもりで力を入れたのだから
それだけで倒せると思っていなかったのである。
「待った!俺達の負けだ!」
どうやら相手側は勝てないと見込んだようだった。
次の闘いではエルが大健闘した。
相手に攻撃してよろめきそこに攻撃を打ち込む。
素早い剣だった。
相手は避けきれずに敗北した。
なぜこんなにも二人は強くなれたのか?
それは単純に二人に実力があったからではないのか?
最初に二人は言っていた。
駄目なところが浮き彫りになりすぎな気がする、と。
その間違った努力が二人の才能を殺していた。
そうは考えられないか?
才能がありながらそれを開花させることが出来るのはほんの一握りだ。
その才能を開花させるための何かを二人は持っていなかった。
キールにとってはエルであり。エルにとってはキールであった。
その鍵となる二人が巡り会えば才能が開花するのは必然だ。
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