私は一人の男に惚れた。
でもその男は他の女が好きだった。
そしてその女の子もその男が好きだった。
だから私は応援することにした。
でもそれはとても辛い。
私が知識を宿さないままだったらどれ程よかっだろう。
狐火として本能だけだったら悩むことなどなかったのに……
私は怖かった。
私には好きな人がいる。
それで私を好きでいてくれた。
でも怖かった。
恋人になったとしてもし、それが壊れてしまったらと思うと。
自分に自信を持てないことが堪らなく嫌だった。
なにも悩まずに彼の告白に答えられたらよかった。
こんなに苦しいならこんな心……思い……いらなかった……
「はぁ……」
俺はため息をついていた。
俺の名前は智哉。
そんな俺は少しばかし頭を悩ませている。
何を悩んでるかと言ったら先、好きだった女の子に告白してきたんだ。
だが答えが……
「少し考えさせて……」
これは不味いかなぁ……
こういう答えはアウトって聞いたことあるんだけど……
いや、勘違い?
知らんがな。
はぁ……あの娘にも応援して貰って……この様かぁ……
「どうしたの?」
「心結か……」
俺の目の前には人成らざる者がいた。
だが驚かない。
これはこの世界にやって来た魔物娘と呼ばれるものだと知ってるからだ。
三十年くらい前にやって来たらしい。
そして目の前にいるのは狐火。
近くに稲荷の神社があるからそこから産まれたらしい。
詳しいことは俺も知らない。
ただ前から仲良くしている。
「いやさ……答え先延ばしにされた……」
「何でまた」
「さあ?それにしてはお前からアドバイスやら頂いたのにダメかも知れねぇ……」
「……」
「どうした?」
「何でもない。諦めちゃダメだよ?」
「おう、悪いが帰るわ。またな」
「うん」
「……断る気なの、憐?……自信が持てないの?……そんな不安は意味ないのに。彼はあなたが好き。あなたは彼が好き、なにも問題ないのに。私はチャンスすらないんだから。答えてあげて」
「憐、俺と……付き合って欲しい」
彼に告白された。
とても嬉しかった。
でも怖い。
自分に自信を持てない。
だから……
「少し考えさせて……」
答えを先延ばしにしてしまった。
智哉くんを不安にさせてしまうとわかってたのに。
ねぇ……狐火のあなたなら悩まないのかな?
私は……無理かな。
このぬるま湯の関係のままでよかったのに。
ずっとそのままでいられないことくらい分かってる。
でも、怖いよ……
いっそのこと好きにならなかったら。
魔物娘に産まれていたのなら……なれたのなら。
「久しぶり」
「憐……」
「その顔、知ってるんだ」
「答えを先延ばしにしたんでしょ?」
「うん……」
何で答えを延ばしたかわかるつもり。
私は魔物娘だからずっと好きでいられる。
そして好きでいさせる。
一緒にいてそばにいさせる。
でも人間は違う。
時に悩んで時に目移りして、時に離れる。
それが怖いんでしょ?
しかも憐は我が儘でいられないもんね。
「どうすればいいのかな……私……怖い……!」
本気で好きだから悩んでしまう。
人間だけの恋の特徴。
少し羨ましい。
魔物娘は盲目だから。
でも私だって智哉が好き何だよ?
応援してるけど、良いな。
「心結ちゃんは……」
「なに?」
「智哉くんのこと好き?」
「……ッ!な……何で……そう思ったの」
「ずっと知ってたよ、前見たときだって今とは違う顔だったもん。あれは恋した女の子の顔」
見られてたんだ……
「私はいいよ、両思いなら応援する」
「……あなたのことでも悩んでたんだよ?」
「ずるいとは言わない」
「分かってる、でも同じ人を好きになったのに……」
「……そう、だね……」
私に恋心を抱かれてはいない。
だから彼女なら大丈夫だろう。
私は申し訳なかった。
智哉と仲良くしてるこの魔物娘、心結に出会った時。
羨ましいと思った。
そして話したら彼女は、
「彼、あなたのこと好きなんだって」
聞かされたときに胸が痛かった。
悲しそうな顔でいっていたから。
二人の恋が実ることなんてあるのかな。
本気で好きだから彼女の気持ちがわかった。
……私には自信がない。
でも彼女と“なら”大丈夫だろう。
ずっと悩んでその答え。
私は二人の恋が実る奇跡を求めた。
「ねぇ……」
「?」
「何だろう、憐。答えかな?でも早すぎないか?」
俺は憐に呼ばれたところに向かっていた。
その場所につき憐が目に写ったとき違和感を覚えた。
「憐?……なんだ……それ」
彼女の周りに何か纏っていた。
「智哉くん」
「おう……」
「私ね、魔物娘になっちゃった」
「……
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