「・・お待たせ、少し手間取った」
サイクロプスのヘレネが店にやって来たのは、
日も大分傾いた頃だった。
人間大の大きな包みを広げると、そこには衣服を纏った首無し木偶人形。
「所々金属で強化してあるから、多少の無茶は出来るはずだけど・・」
ヘレネはリンに向き直り、付け足す。
「私、本職は鍛冶なんだけど・・こんな依頼を受けたのは初めてよ?」
「あぁ、俺も初めてだ。
だけどな、ヘレネ以外にこんな奇妙で難しい注文をこなせる奴は
少なくとも俺の知っている中にはいねぇんだよ・・」
ちょっとしたプライドをくすぐられて、まんざらでもないヘレネ。
なんだ、私結構器用じゃないのとまで思うようになってしまった。
「よし・・シンディ、入ってみてくれ」
シンディと呼ばれた先ほどのスライム娘は
ズルリと木偶人形の中に入り込み、
その中にすっぽりと収まる。
「うん、ちょっときついかな?でも大丈夫」
木偶人形の手をひらひらとさせながら返すシンディ。
人形を骨格に、シンディが筋肉に。
さながらそれは普通の人体と変わらないように見える。
「うーん、もう少し胴回りを細くした方がいいのかなぁ・・?」
ヘレネはヘレネで納得のいかない部分があるようだ。
「慣れない木工なんかやって貰ったからな、
どうしたってそんなもんだろうよ」
リンとしては上出来らしく、次の手順に進もうとしている。
「リン、私はもう少し外装を詰めたいのだけど?」
ヘレネの申し出にリンは意外そうな顔を返しながら
「こいつは試作だぞ?動ければいいレベルだぜ?」
「私はそうは思わない。どうしても納得できない所があるから・・」
リンに商人としての意地があるように、
ヘレネにも職人としての意地がある。
それは傷つけてはならない聖域と言ってもいい。
「・・わかった、だけど時間はそんなに回せない。
──今夜中にできるか?」
「問題無い」
今夜中にこの木偶人形を完璧なものにしてみせる。
ヘレネの大きな一つ目に火がついたのが見てわかる。
「裏の倉庫を少し片付けるから、そこでやってくれるか?」
リンが店の看板を下げて店じまいを始めると、
シンディとヘレネも店の奥へと続く。
「──まったく、よくやるよ」
リンがサラダを食べている向かいで、シンディが水を飲む。
スライムゆえに食物よりも水分が命だ。
予備の木偶人形に収まっていても相当リアルな人型体型ではあるが、
間接の隙間やシンディ本人の頭を見ると、やはりスライムだ。
「ねぇねぇ、リン?」
「何だ」
シンディが何か思いついたらしく、リンの注意をこちらに向け──
「ロケットパーンチ!」
ぶしゃっ!メコリ!
水鉄砲の要領で右腕を勢い良く射出し、
回転の効いたいいパンチがリンの顔面に直撃する。
「ふぐむッ!?」
椅子ごと後ろに倒れるリン、はしゃぐシンディ。
「さっきの「体」は間接が繋がっていたけど、
こっちはこんな事もできるよ!・・あれ?」
床にはリンが鼻血を出し、白目をむいて気を失って転がっていた。
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