「・・あんたに売れるモノはここには無ぇから、とっとと帰んな」
罵詈雑言を浴びせながら店を出てゆく冒険者を見もせず、
カウンターで一心不乱に伝票整理をする男がいた。
今はリンと名乗っている。
元々は別の名前があったとかいう噂もあるが、
客の多くはそこまで詮索しない。
それが一つのルール・・マナーのようなものになっていた。
静かな店内。
「おぅ、ここで狂ったか」
些細な計算ミスが今月の帳尻を合わなくさせていた。
原因を突き止めて満足したリンが、ふと入り口の気配を感じ取る。
「──どうしたロリババァ」
「ロリはともかく、ババァは余計じゃ」
ドアの所にはいつの間にか、バフォメットがいた。
「いつものお使い魔女っ娘はどうしたよ?
自らお使いなんて珍しいじゃねぇか」
リンが悪態をついていると、バフォメットは少し深刻な顔をする。
「実はの、お主に折り入って頼みたいことがあるのじゃ」
「魔界無双たるバフォメット種族のユーリア様ともあろうお方が、
このような店に何の御用でしょうか?」
「やめいやめい、気持ち悪い」
慇懃無礼な態度でバフォメット──ユーリアをいじるリン。
客いじりはこの男の趣味なのかもしれない。
「用件は?」
単刀直入に尋ねるリン。
「儂の魔具の一つをな、買い取って欲しいのじゃ」
バフォメットの魔具──
物によってはそれ一つで一国と対等な戦争が出来る物もある。
それを追い求めて討伐に赴く軍隊もいるという程の代物だ。
「理由を聞くのは有りか?無しか?」
いくらなんでも物騒すぎる物を扱う以上、リンも身構える。
うっかりそれが誰かに知られようものなら、
あっという間に野党が押し寄せてくるに違いない。
「どこぞの同族が安易に魔具を売ったらしくての。
それを使って親魔物派の領地が脅されているようなのじゃ。
・・こんな事をあのおしゃべり魔女達に使い走らせられるか?」
成程、その出所不明の魔具を相殺するのに
自分の所の魔具をぶつける寸法か。
まるで「あちら」の世界の大量破壊兵器じゃあないかと思いながら、
「そういう事ならこの買取額だ。
どっかのキチガイじみた錬金術師が物騒なモン売りに来た。
・・そういう事でいいな?」
明らかに高相場な買取額にユーリアも驚く。
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