「なあアレク、お前さんは誰かを陥れようと思った事はあるか?」
茶のおかわりを注ぎながらリンは問いかける。
「いわゆる魔物や魔族と括られている連中はな、
人間て奴よりもよっぽど真っ直ぐで純粋な連中なんだ。
そんな連中をあの手この手でいいようにしているのが、俺達人間だ。
じゃあ、その人間同士が駆引きなんかしてみろ。
──どす黒い陰謀が一つや二つはできるんだぜ?」
ローファーが黙って聞いている。
アレクも黙ってしまう。
「そこにいる悪徳官僚はその最たるモンだ。
で・・ここにいる腹黒商人も、その最たる例だ。
人間同士の化かし合い、騙し合い。
お前さんにその汚さが理解できるか?」
リンの目はまっすぐアレクを見る。
アレクはそれに応えようと目を見るが、どうしても直視できない。
「アレクちゃん、リンにはリンの考えがある。
その表面は読めても、奥底まではわからない。
奥底までみえちゃったら、
それはもう人間同士の駆引きじゃあなくなっちゃうからね」
ローファーがアレクに向き直る。
「私の考えならわかるのか?」
アレクの問いに軽く頷くローファー。
「リザードマンという種族の考え方や話の流れからして、
十中八九は言い当てられると断言するよ。
・・そうだね、
『リンはそんな人じゃあない、お前みたいな下種じゃあない』とか
『他にもっと分かり合える方法があるはずだ』・・とかね?」
「そんな曖昧な・・!」
間髪入れずに言い返そうとするアレク。
「『このデブを斬ってやる』・・か?」
アレクの本心が意外にもリンの口から出た。
「だから今、ローファーが言っただろ。大体は読めるって」
相変わらず嫌な笑みを浮かべるローファー。
もう何杯目か判らない位におかわりをするリン。
抜けないとわかっていても、抜剣しようとしたアレク。
ことん、とティーカップをテーブルに置いたリンが立ち上がり
「ちょっと便所」と言い部屋から出て行く。
何ともいえない嫌な空気の部屋に残されたローファーとアレク。
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