人間と魔物

「リンは商売が下手だからね」
ローファーがアレクに言う。
「私がリンの店を預かったら、一週間で大きくしてみせる自身がある。
リンだって横の広がりが相当あるんだぜ、知っていたかい?」

例えばヴァンパイアのドロシー。例えばサイクロプスのヘレネ。
例えばバフォメットのユーリア。
普通だったら顔を合わせる事も無いような種族達と
当たり前のように接している。
リザードマンのアレクから見れば、それがどれだけの事か
判っているつもりだった。

「話を戻していいか?」
リンの発言に、ああそうだねと返すローファー。
「付近の集落や捕獲している魔物娘達を全員労働力として提供、
報酬は復興次第の査定、間違いないな?」
「リン、君こそ政治家をやるべきだと思うけどね?」
やかましい、とリン。
わけが解らないといった顔のアレクに、ローファーが解説をする。

「アレクちゃん、この腹黒商人はね。
この街と国境付近の魔物娘全員を避難させる為に、
わざわざ水害を起こして街も人も濁流の中に飲み込ませたんだよ」
「人聞きの悪いことを言うな」
どういうこと?とアレクが尋ねるが、ローファーによってそれは遮られた。

「リンは私達人間が嫌いなんだ。だから魔物娘を贔屓するのさ」
「・・否定はしない」
リンが茶をすすりながら肯定する。

ドロシーは土砂を欲していたから、採掘場で土砂を切り出した。
天候不順で地盤の緩んでいた採掘場付近の川が偶然氾濫し、
偶然水路となった街道沿いにある反魔物勢力の街を濁流が飲んだ。
その復興に人手がいる。
だけど、そんな危険な所に貴重な人員を回せない。
だったら、魔物娘を使えばいい──

リンの計画はほぼ達成された。
予想以上の街を潰してしまったのが、計算違いではあるが。
「──ひどい」
アレクが怒る。
「いくら反魔物の人達だからって、そこまでしなくても!」
「甘めぇよ、アレク」
アレクをじっと見るリンの目は、とても冷たかった。
10/08/02 01:11更新 / 市川 真夜

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